「最近ちょっと太ってきたかも……」愛猫に対してそんな悩みをもっている飼い主さんもいるのではないでしょうか。多少太っている方が愛らしく見えるかもしれませんが、人と同様に肥満は万病の原因となることが多いです。
愛猫が健康に過ごすためにも、飼い主さんとして知っていてほしい猫の肥満について、獣医師の筆者がご紹介します。
■現代の猫は太りやすい?
猫はライオンやトラと同じネコ科の動物で元々は獲物を狙うハンターです。狩りをする動物は獲物を狙う時のために、普段は余計な体力を使わないよう寝ていることがほとんど。動物園に行っても、ライオンやトラが寝ている姿ばかり見るのはこのためです。
同様に猫も1日の大半は寝ています。狩りをすることなく、ご飯を食べて寝るという生活を繰り返していれば、太っていくことが想像できます。室内飼育であれば、運動量も少ないのでさらに肥満になりやすいのです。
また、去勢手術や避妊手術後は基礎代謝が下がるので、太りやすくなります。
■肥満による5大リスクとは
肥満は様々な病気に深く関係します。どのような病気があるか見ていきましょう。
・関節などの運動器疾患
体重が多ければ関節や骨にかかる負担は大きなものになってきます。この負担が蓄積されると、関節炎や椎間板ヘルニアといった痛みを伴う病気に発展することも……。若い時は筋力もしっかりしているので重い体重を支えることもできますが、高齢になると筋力も衰えて歩くことが困難になってしまうケースもあるので注意が必要です。
・心臓や呼吸器疾患
肥満は人と同様に高血圧症を引き起こすと言われています。高血圧症は心臓への負担になり、心筋症に発展してしまうケースもあります。重度な心筋症は呼吸困難や血栓症による後肢の麻痺など、最悪の場合は死に至ってしまう場合もあります。
また脂肪は首まわりに付着しやすく、気道を圧迫することもあるので注意が必要です。
・糖尿病(※1)
肥満になると血糖値を調節するインスリンの効きが低下すると言われています。インスリンが効かないと高血糖状態が続いてしまい、尿の中に糖分が出てしまいます。いわゆる糖尿病という病気です。糖尿病になると多飲多尿といった症状が観察され、進行すると腎臓病や白内障などの合併症を引き起こすこともあります。
・皮膚病
毛繕いはねこちゃんの皮膚を健康に保つ上では大事な行動と言われています。肥満が原因で、自分で上手に毛繕いができないと毛玉症やフケ症になり、痒みが引き起こされるケースもあります。
・脂肪肝(肝リピドーシス)
肥満のねこちゃんが何かをきっかけに食欲がなくなってしまうと、脂肪が肝臓に蓄積され肝障害を引き起こします。脂肪肝は命を脅かすこともある病気で食欲低下や体重減少、嘔吐などが症状にある場合はまず獣医師に相談しましょう。
その他、膀胱炎や尿路結石などの泌尿器疾患、便秘症、腫瘍などさまざまな病気のリスクに繋がることが多いのです。飼い主さんが注意してあげることで愛猫がより健康に暮らすことができるでしょう。
■正しいダイエット法とは
肥満になってしまった場合も正しく健康的に痩せることが重要になります。そこで2つの方法を説明します。
・運動で痩せる
室内飼育の猫は運動不足になることも多いので、痩せることはなかなか難しいでしょう。しかし、おもちゃを使った遊びで体を動かせば、脂肪の燃焼には役立ちますので、1日1回10分程度でも良いのでぜひ遊んであげることをオススメします。多頭飼育であれば猫同士で遊ばせてあげるのも良いかもしれません。
・食事で痩せる
ダイエットは運動とともに、食事で管理していくことが大事。まずは目標体重を設定し、適切なカロリーを与えることが重要です。適切なカロリーの簡単な計算方法は、(目標体重×目標体重×目標体重)を2回√√(ルート)×70すると計算できます(※2)。
例えば、目標体重を5kgに設定した場合は、5×5×5=125に√√すると3.34になり、最後に3.34×70=234kcalが適正カロリー量となります。一見難しそうですが、電卓を用いれば簡単に計算できますので、ぜひやってみましょう。
なお、目標体重は環境省が発表しているボディコンディションスコア(BCS)を参考にしましょう。
筆者は、BCS4であれば現体重の10%減、BCS5であれば20%減を目標体重としてオススメしています。ただ目標体重を設定する際に注意が必要なこととして、最初から無理な目標体重に設定しないこと。何段階かに分けて徐々に減らしていくことがポイントです。
猫が肥満になるのを防ぐには、飼い主さんの努力が必要不可欠です。健やかに長く一緒に過ごすためにも愛猫と飼い主さんで一緒に頑張っていきましょう!
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考・画像】
※1 猫の肥満を考える ~健康に過ごすために~ | 日本動物医療センター
※1 森伸子.猫の肥満と糖尿病.Companion Animal Practice,2014;305:15-18
※2 環境省 飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~
※ koikoi, sido, Tanasuke / pixta
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