わんにゃとの暮らし

【獣医師執筆】ムリは禁物!わんちゃんの「夏の水遊び」で気をつけたいこと

船田治子

獣医師
船田治子

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【獣医師執筆】ムリは禁物!わんちゃんの「夏の水遊び」で気をつけたいこと

夏休みに、わんちゃんと海や川にお出かけする予定はありますか? わんちゃんと一緒に水遊びができたら楽しいですよね。

しかし、もともと水が苦手なわんちゃんもいますし、水辺では危険なこともたくさんあるので、いきなり水遊びをさせるには注意が必要です。

今回は、わんちゃんの水遊びで気をつけるべきことをお伝えします。

 

■泳ぎが得意なわんちゃん、苦手なわんちゃんとは

出典: https://www.shutterstock.com/

ラブラドールなどのレトリーバーや、ポインター、セッター、スパニエル系のわんちゃんたちは、水場の狩猟犬として品種改良されてきたので、泳ぐのが得意です。

小型犬(ポメラニアン、チワワなど)、足が短い体型の犬種(ダックスフンド、コーギーなど)、短頭種(パグ、ブルドッグなど)の多くは泳ぎが苦手です。

もともと水に濡れるのが好きではないので、シャンプーを嫌がるわんちゃんはよくいます。その場合は、初めて水遊びに連れていく前に、おうちで何度か水に慣らしておくと良いでしょう。

 

■わんちゃんを水に慣らす方法

(1)お風呂場か、庭にビニールプールを用意します。

(2)シャンプーの要領でシャワーやホースの水を弱く出し、わんちゃんの体にそっとかけて濡らします。

(3)浴槽やプールに足先がぬれる程度の水を入れて、飼い主さんと一緒に入ります。怖がらなければおもちゃで遊びます。

(4)さらに底に足が届く程度の水位にします。

(5)それ以上の水位にするときは、最初はライフジャケットを装着すると安心です。

水に慣らす段階でわんちゃんが拒否するようなら、無理をするのはやめて、何日もかけてひとつのことができるたびに、ごほうび(おやつ)を与えるのがおすすめです。水に入ると良いことがあると認識させるのです。

くれぐれも怒らず、あせらず、強制しないことです。それでもわんちゃんが水に入るのを嫌がる場合は、涼しい時間帯に川辺や海辺のお散歩をするだけでも楽しいですよ。

 

■水場では「周囲の環境とわんちゃんの体調」に要注意!

出典: https://www.shutterstock.com/

準備ができたらいよいよ水遊びにでかけましょう! 注意するポイントは、以下の通りです。

(1) ペットと遊べる場所かどうか

海水浴場などは、わんちゃん禁止のところもあります。わんちゃんと一緒に遊べるかどうか、必ず確認しておきましょう。

(2)ノミ・ダニに注意

草地の多いところへ連れて行くときは、前もってノミ・ダニの予防処置をしておきましょう。

(3)危険な場所を避ける

わんちゃんが思わぬけがをしないように、海辺や川辺に危険なものが落ちていないかよく見てください。

(4)必要な場合はライフジャケットを

海や川で遊ぶのが初めてのわんちゃんは、ライフジャケットの装着をおすすめします。

(5)十分な休憩を!

長時間遊ぶと、熱中症(注1)、低体温症(注2)、低ナトリウム血症(注3)などを起こすことがあります。十分な休憩を取りながら遊ばせましょう。

休むときはビーチパラソルの日陰では不十分です。大きな木陰や屋根のあるところで休みましょう。そして様子をよく観察してください。

(6)外耳炎のわんちゃんには配慮が必要

健康な耳のわんちゃんならば、耳に多少の水が入っても頭をぷるぷると振れば大丈夫です。
外耳炎のときは耳に水が入らないように、潜ったり足が届かない深さで泳がせたりするのはやめましょう。

(7)最後は体をきれいに

水遊びが終わったら真水で体を洗い、タオルでよく乾かしてください。

なるべく人混みを避け、周りの方々の迷惑にならないようにマナーを守ることが、水遊びには大切です。無理をせずに、わんちゃんとの水遊びを楽しんでくださいね!

【注釈】

(注1)体温が41℃以上になり口を開けて「ハアハア」します。よだれが出て下痢嘔吐、意識を失うなどがみられると危険です。(※1)首、脇の下、内股を保冷剤や氷で冷やしながら、急いで動物病院に連れていきましょう。

(注2)長時間水中にいると、体温が下がり震え始めます。すぐにタオルで体を乾かして、毛布で包むなどして暖めます。体温が上がらず動けなくなったり意識がなくなったりすると危険です。(※2、3)すぐに動物病院へ連れていきましょう。

(注3)川や湖で淡水を多量に飲んでしまうと、血液中のナトリウム濃度が減少します。元気がなくなり、嘔吐、けいれんなどがみられます。意識がなくなると助からないこともあるので、急いで動物病院に連れていきましょう。(※3、4)

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【参考・画像】

※1 長谷川篤彦監修「犬の診療最前線」(Inter Zoo)

※2 加藤元監訳「小動物救急疾患の臨床」(医歯薬出版)

※3 加藤元監訳「小動物臨床の実際 8上巻」(医歯薬出版)

※4 「南山堂医学大辞典」(南山堂)

※ Tropical studio, Chaay_Tee, Darinmarch / Shutterstock

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