※2024年04月15日情報更新
猫の肉球は、ぷにゅぷにゅした触り心地も、まあるい見た目も良く、猫好きの方にとっては魅力いっぱいですよね。しかし、猫を飼うと困ったことのひとつに、爪とぎ問題があります。今回は、猫の肉球と爪についての役割や、お家でできる手入れや注意することについて、解説いたします。
■猫の「爪」の特徴と日常のケア
(1)猫の爪の特徴
猫の爪はすべてかぎ爪であり、獲物を捕らえるときや、木登りをするときの重要な道具になります。普段は爪を隠すことができ、必要な場合だけ、爪を出して使います。
爪は何層にも積み重なる構造で、一番外側の層が古くなるとはがれ落ちて、新しい層に代わります。
(2)爪とぎの理由
爪とぎは猫の本能ですから、止めさせることはできません。
猫は、古くなった外側の爪を剥がし、新しい鋭い爪を使えるようにするために、爪をとぎます。尖った三角帽子を1枚ずつ脱ぐようなイメージです。
爪とぎの引っ掻いたあとを残すことや、趾間(しかん)にある分泌腺からの分泌物で臭いをつけることは、マーキングのひとつと考えられています。また、猫はストレスを受けると、その解消法として爪とぎをするとも言われています。
(3)家庭でできる日常のケア
・爪切り
定期的に爪切りをしましょう。爪を切るときは、肉球を押すと爪が出ます。道具はハサミタイプ、ニッパータイプ、ギロチンタイプなどがあります。ギロチンタイプはよく切れますが、慣れないと使いにくいかもしれません。人用爪切りもたいていの場合は使えます。猫の爪に合わせて選択すると良いでしょう。
爪を切る位置は、先端から2mmほどがよいでしょう。爪の根元の内側部分には血管や神経があり、外からもピンク色に透けて見えます。黒い猫など爪が黒っぽくて、神経・血管のある部分が分かりにくければ、爪の下から懐中電灯で照らすと確認できるでしょう。
伸びた状態の猫の爪です。青枠内のピンク色の部分は、血管・神経が走行する部分が爪に透けて見える状態です。
伸びた爪の先端を2mmほど切った状態です。
猫は爪を切りすぎて痛い思いをすると、次から爪切りをさせなくなりますので気をつけてください。また、日常的に外出する猫は、尖った爪がないと木や塀によじ登れなくなるかもしれませんので、爪切りをしないほうがいいでしょう。
・爪とぎ
高齢の猫は爪とぎをあまりしなくなり、爪の形が大きく太く変形することがありますので、気をつけてみてあげましょう。
いろいろな爪とぎ用具が市販されていますので、猫が気に入るものを選びましょう。傷んだら消耗品と考え、早めに交換してあげてください。
爪とぎ用具は、猫が通る場所に数ヶ所おいて、マーキングさせてあげましょう。人の目に付く場所にも置くと、爪とぎを人に見せて自己主張をします。
(4)こんな爪のけが・病気に注意!
筆者が一番よく診るのは、伸びすぎた爪が肉球部分に刺さった状態です。化膿することもありますので注意しましょう。爪と、爪の周囲に真菌の感染症を起こすこともあります。
■猫の「肉球」の特徴と日常のケア
(1)猫の肉球の形状
猫には肉球が前肢、後肢で形状や数が異なります。それぞれの肉球について見ていきます。
こちらは前肢(左)です。
(1)~(5)肉球
(6)掌球(中手根部)
(7)手根球
となっています。
こちらは後肢(右)です。
(1)~(4)肉球
(5)足底球(中足骨部)
となっています。
(2)肉球の役割
肉球の厚い表皮の下は、脂肪組織、弾性繊維に富んでいますので、高い位置から降りた着地時のクッションとなります。また、音を立てずに獲物に近づくことができ、狩りをするときに役立ちます。
肉球の内側には多くの神経が分布し、非常に敏感な部位であるため、足場の悪い所でも上手に行動できます。
猫の汗腺(エクリン腺)は肉球にしかありません。緊張して汗をかくと、滑り止めになります。筆者が猫を診察したとき、診察台の上で緊張して肉球に汗をかき、診察が終わると診察台の上に、猫の足跡が残っているのを見ることがあります。
(3)家庭でできる日常のケア
空気が乾燥する時期や、高齢になり脱水気味の猫に、肉球のかさつきがみられることがあります。その場合は、猫用肉球保湿剤を塗ってあげましょう。
(4)こんな肉球のけが・病気に注意!
肉球に傷がつくと、猫は足先を気にして舐めますので、傷がひどくなったり、化膿したりすることもあります。特に、外に出る猫の肉球は、毎日チェックをしましょう。
肉球部分に起こる皮膚病や腫瘍もあります。色、温度、感触の異常や痛みなどに気づいたときは、動物病院を受診しましょう。
猫の性質にもよりますが、肉球も爪も触られると怒ったり、逃げたりすることも多いと思います。爪を切るのは1日に1本でもいいのです。眠っているときもチャンスかもしれません。おやつも利用して徐々に切れる本数が増えていくといいですね。
とにかく猫に、無理強いは禁物です。時間をかけて少しずつ足先を触らせてくれるようになれば、肉球をぷにゅぷにゅさせてくれるかもしれませんね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※1 水越 美奈(2018)「犬と猫の問題行動の予防と対応」緑書房
※2 加藤 由子(2007)「ネコ好きが気になる50の疑問 : 飼い主をどう考えているのか?室内飼いで幸せなのか? 」ソフトバンククリエイティブ
【画像】
※ イソップ動物病院
※ Yimmyphotography,Marie Charouzova,Princess_Anmitsu / Shutterstock
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