※2020年9月28日情報更新
公園で遊んでいるさまざまなわんちゃんを見ていると、飼い主さんとわんちゃんの風貌や体格、仕草などが似ているなと感じたことはありませんか?
「子は親の鏡」という言葉があります。神経質な親の元で育てられた子どもは親と同じように神経質になったり、明るい家庭で育てられた子どもは親に似て明るくなったりするなど、子供の性格は親の影響を大きく受けるという意味です。
「犬は飼い主の鏡」ではないですが、この言葉はわんちゃんにも当てはまるのではないかと筆者は思うときがあります。みなさんはどう思いますか?
今回は獣医師である筆者が、わんちゃんの性格形成について、関連する研究や自身の見解を踏まえて解説していきます。
■犬の性格は飼い主に似るの?
わんちゃんの性格は飼い主さんに似るかどうかを検証した論文は、実際に多くあります。
そのひとつ、アメリカのミシガン州立大学にて行われた調査では、1,681頭のわんちゃんの飼い主さんに自身と愛犬の性格について質問票に記入してもらい、その分析が行われました(※1)。その結果、わんちゃんの性格は年齢などの要素が影響するほか、飼い主さんに似ている傾向が強いということが示されました。
たとえば、ネガティブな感情を持つ飼い主さんは怖がりなわんちゃんやトレーニングでもあまり良い反応を示さないわんちゃんを飼っている傾向があり、活動的な飼い主さんの元で飼われているわんちゃんは活発である傾向が見られました。
■犬種や遺伝も性格に関係する?
それぞれのわんちゃんの大まかな性格の違いというのは、大元をたどると犬種を分ける遺伝子によって決まると言う研究者もいます。
人のいうことを聞きやすい従順な性格を決める遺伝子、攻撃的になりやすい遺伝子、怖がりな性格になる遺伝子、他のものを見つけたときに興味をもって追いかける性質をもつ遺伝子などがあり、それらの組み合わせである程度の性格が決まってくるというものです。
ある研究では、平均的にみて犬種独特の性格を決める要素の15%程度がそういった遺伝子によって説明することができると報告されています。わんちゃんそれぞれの特徴は全部で14個に分けられ、興奮のしやすさ、飼い主さんと離れたときの問題の起こしやすさ、他者に対しての恐怖心の持ちやすさ、犬への攻撃性、飼い主さんへの攻撃性、追いかけやすい性質、犬への競争心などが挙げられるそうです(※2)。
みなさんの愛犬も、こういった特徴のなかでどこか当てはまっている部分があるかもしれませんね。
■犬のストレスは飼い主の性格によって変わる?
飼い主さんが不安定になっていると、わんちゃんも不安定になりやすいという話を聞いたことはありますか? この話が本当かどうかを検証した論文があります。
スウェーデンのリンショピン大学にて、25頭のボーダー・コリーと33頭のシェットランド・シープドッグを飼っている女性の飼い主さんから情報を得て分析を行い、2019年6月に公表されたものです(※3)。
飼い主さんの髪の毛とわんちゃんの毛の中に含まれ、過度なストレスを受けると分泌量が増加する「コルチゾール濃度」をそれぞれ測ったところ、わんちゃんと飼い主さんとの間で同調が見られました。つまり、飼い主さんのストレスレベルが高いほど、わんちゃんも同じようにストレスレベルが高くなっていたのです。
さらに、わんちゃんのストレスレベルが性格からも影響を受けているかどうか調べたところ、わんちゃん自身よりも飼い主さんの性格によってわんちゃんのストレスレベルが変わっていることが分かりました。飼い主さんが不安になりやすい性格だと、わんちゃんも同じように不安定になりやすいといえるということです。
■辛いときこそ、飼い主の振る舞い方が大事
これらの研究結果から考えると、たとえばわんちゃんが病気になったときは飼い主さん自身が不安定にならないように、自分自身のココロのケアをしていくことが大切ということなのではないかと筆者は考えます。
飼い主さんが不安になるとわんちゃんも不安になるけれど、逆に飼い主さんの気持ちがしっかりしているとわんちゃんの方も頼れる存在が身近にいると感じられて安心できるようになります。なんだか、お母さんと子どもの関係に似ていますね。
普段から、愛犬はもちろんですが飼い主さん自身のココロにも目を向けてみてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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