昨年は、日本列島に多くの自然災害が発生しました。その度に、飼い主さんたちは大切なわんちゃん・ねこちゃんとの防災について考えていることと思います。今回、『わんにゃ365』では、ドッグトレーナー・獣医師・行政の方々より、ペットの防災対策についてお話を伺いました。本記事では、ドッグトレーナーさんへ2回に分けて防災へのアドバイスを伺います。
後編では、避難の際に役立つトレーニング「おすわり」「マテ」「おいで」「つけ」「ハウス(クレート)」をご紹介します。避難時に危険から愛犬を守るためにも、この5つのトレーニングを身につけさせておきましょう。"避難所で落ち着いて過ごすためには……? 今日からはじめる! ペットの防災対策〜ドッグトレーナー編・前編~"も合わせてお読みください。
目次
■1:興奮を抑えて落ち着かせる「おすわり」
「おすわり」は、飛びつき癖や追いかけ癖のあるわんちゃんには特に有効です。また、「おすわり」はわんちゃんを落ち着かせる意味もあります。災害などが起こるとわんちゃんも興奮状態になるので、「おすわり」させて落ち着かせましょう。
・トレーニング方法
(1)まず、飼い主さんがわんちゃんの正面に立ちます。片手にリード、もう一方の手におやつなどのごほうびを持ち、その手をわんちゃんの鼻先に持っていきます。わんちゃんがごほうびに興味を持ったら、鼻先からゆっくりと頭の上の方に向けて手を移動していきます。
(2)すると、鼻先が上がり、お尻が下がっていきます。そのタイミングで「おすわり」の指示を出します。
(3)わんちゃんが「おすわり」出来たらごほうび(わんちゃんが喜ぶこと)を与えましょう。
・ポイント
ごほうびを持つ手の位置が高いとわんちゃんがごほうびに飛びついてしまうので、わんちゃんの鼻先の位置に持ちましょう。
また、わんちゃんを座らせるときに、手でお尻を押さえることもあるかもしれません。お尻を軽く押さえるのは良いですが、無理に押さえるとわんちゃんが不快に感じるので要注意です。
慣れると、指示だけで「おすわり」できるようになりますよ!
■2:危険回避や勝手な行動を防ぐ「マテ」
「マテ」には、わんちゃんの行動を制止する役割があります。また、興味のあるものを追いかけてしまうわんちゃんには、特に効果的です。災害が起き、危険な場所に近付かせないためにも、「マテ」を身につけさせましょう。
・トレーニング方法
(1)「マテ」には、「おすわり」からの「マテ」と、立っている状態からの「マテ」の2種類があります。どちらの「マテ」をトレーニングするときも、まずは飼い主さんがわんちゃんの正面に立ちます。飼い主さんは片方の手のひらをわんちゃんに見せて動きを制止し、「マテ」と指示を出してから1歩下がります。
(2)1歩下がっての「マテ」が出来るようになったら、2歩、3歩と下がってみましょう。その場合、少し長めのリードを利用するのが良いです。リードは絶対に放さないでください。
どちらの「マテ」も、指示を出してわんちゃんが動きを止めることが出来たら、ごほうび(わんちゃんが喜ぶこと)を与えて褒めてあげましょう。
・ポイント
「マテ」の指示を出したのにも関わらず、わんちゃんがその場から動いてしまったときには、わんちゃんに間違いを知らせるために動きを止めます。少し間を置いてから、再度やってみましょう。
練習し始めは、「マテ」の指示を出してもわんちゃんが動いてしまいやすいので、わんちゃんとの距離を長く取り過ぎないように注意しましょう。
■3:飼い主の元に呼び寄せる「おいで」
災害が起きて避難をしているときは、混乱が予想されます。万が一飼い主さんから離れてしまっても、「おいで」ができれば、飼い主さんの元に帰ることができます。
・トレーニング方法
(1) 「おすわり」からの「おいで」、立った状態からの「おいで」のどちらの場合も、飼い主さんがわんちゃんの前方に位置して、「おいで」の指示を出します。
(2)わんちゃんが指示通りに飼い主さんの所まで来ることができたら、ごほうび(わんちゃんが喜ぶこと)を与えます。すると、「おいで」が強化されます。
・ポイント
止まった状態で「おいで」ができないときは、後ろに下がりながら「おいで」と指示を出すと誘い込みやすいです。
ただし、叱るときや何かを止めさせたいとき、またはハウスに閉じ込めるために「おいで」を使っている場合、わんちゃんは「おいで」に対する反応が悪くなってしまいます。わんちゃんを呼ぶときは、愛犬にとって喜ぶことをしてあげるのが基本。「おいで」と呼んで飼い主さんのところまできたら、褒めてあげましょう。
■4:飛び出しを防ぐ「つけ」
「つけ」は、わんちゃんが飼い主さんの左右どちらかについた状態で歩かせることです。避難の際は、迅速な行動が求められます。1分1秒が生死を分けることもあるので、飼い主さんの側から離れずに行動できるように「つけ」を身につけさせておきましょう。
・トレーニング方法
(1)わんちゃんに「つけ」と指示を出しながら、歩きます。「つけ」の指示に真っ直ぐ歩けず蛇行してしまうときは、わんちゃんを壁側に歩かせます。「つけ」の指示を出しながら繰り返し壁側を歩かせると、真っ直ぐに歩けるようになります。
(2)飼い主さんの横について歩くことができたら、ごほうび(わんちゃんが喜ぶこと)を与えましょう。
・ポイント
わんちゃんによっては周囲の音に気が散ってしまい集中できないことがあるので、できるだけ誘惑の少ない場所で練習するのがよいでしょう。「つけ」ができるようになってきたら、誘惑がある場所でも飼い主さんについて歩けるように練習しましょう。
■5:ハウスを安心で楽しい空間にする「ハウス」
避難所ではわんちゃんや猫を放しておけないので、ハウス(クレート)に入れておくケースが多いです。ハウスが落ち着く場所にしておけば、避難所でもストレスが少なく、安心して過ごすことができます。
・トレーニング方法
わんちゃんをハウス(クレート)に慣らすには、ハウス内で食事やおやつを与えます。そうすることで、わんちゃんは“ハウス(クレート)=楽しい場所”と思うようになります。
上記の方法を繰り返すうちにわんちゃんがハウス(クレート)に抵抗なく出入りできるようになったら、扉の開閉を練習します。
・ポイント
まずは、1分間扉を閉めるところからスタート。慣れてきたら、2分、3分……と、徐々に扉を閉める時間を延ばしていきます。ハウス(クレート)が“不安な場所”や“嫌な場所”にならないように、時間を掛けて慣らしていきましょう。
<取材協力>
遠藤ゆかり(えんどうゆかり)
戸田市を中心に犬のしつけレッスンをしている、『PLUS WAN』のドッグトレーナー。わんちゃんと飼い主さんの楽しい生活に欠かせない“絆”を育むお手伝いをしている。HP:https://plus-wan.jimdo.com
<撮影協力>
アイトールカフェ
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※ L Mirror / Shutterstock
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