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予防よりも早期発見が大切!犬の「がん」に対して飼い主ができること~第2弾~

獣医師
吉本翔

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予防よりも早期発見が大切!犬の「がん」に対して飼い主ができること~第2弾~

前回の記事“予防よりも早期発見が大切!犬の「がん」に対して飼い主ができること~第1弾~”では、がんの定義、犬のがんの特徴、がんの種類など、がんに関する基本的な事項についてご紹介しました。

第2弾である今回は、がんの診断法や治療法、飼い主が愛犬のためにできることについて、獣医師の吉本翔先生に解説いただきました!

■がんの診断法について

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みなさんがイメージするがんといえば、“しこり”を形成するものだと思います。しかし、しこりは必ずしもがんであるとは限りません。単なる炎症によって腫れているだけの場合や、良性腫瘍である可能性があります。

そのため、しこりを発見した場合には、それががん(=悪性腫瘍)であるのかどうかを判断する必要があります。また、血液系のがんのように、しこりを形成しないタイプのがんもあります。

がんであるかどうかについては、犬種、年齢、臨床徴候、触診、血液検査、画像検査及び細胞学的・病理学的検査等から総合的に判断します。

多くの場合、確定診断は細胞を採取して顕微鏡下で細胞を観察する“細胞学的検査”、もしくは手術などによってしこりを摘出し、顕微鏡下で組織を観察する“組織学的検査”によって行います。

■がんの三大治療法とは?(※1)

予防よりも早期発見が大切!犬の「がん」に対して飼い主ができること
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がんが死因の第1位である主たる要因は、がんを根治することは難しいからです。それではがんに対して、私たち獣医師はどのように治療をしていくのでしょうか? 人でも同様ですが、従来がんの三大治療法は、外科療法、化学療法、放射線療法と言われています。

(1)外科療法

現状の獣医療で、がんを根治し得る治療法は、基本的に外科療法(手術)のみです。しかし、外科療法で根治が可能となるのは、初期のがんに対して、確実にすべてのがん細胞をとり切ったときです。

犬のがんは進行して見つかることが多いため、外科療法以外の治療法を選択したり、併用したりすることがあります。

(2)化学療法(抗がん剤)

化学療法(抗がん剤)は、薬によってがん細胞を退治する治療法です。抗がん剤は、血流によって全身に移行するため、転移したがん細胞にも作用することができます。しかし、正常な細胞にも作用するため副作用が出てしまうことや、がんの種類によっては十分な効果が得られないことがあります。

(3)放射線治療

放射線治療は、放射線を当ててがん細胞を退治する治療法です。手術が難しい部位(脳など)に発生したがんに対して、しばしば用いられます。

しかし、何回も放射線をあてる必要があり、通院や入院が必要である点、放射線治療ができる病院が限られている点、高額になることが多いといったデメリットがあります。

予防よりも早期発見が大切!犬の「がん」に対して飼い主ができること
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化学療法や放射線療法が根治に近い効果を発揮することもありますが、基本的には根治を狙えるのは、早期がんに対する外科療法のみと考える事が一般的ではないでしょうか。進行してしまったがんに対しては、手術で取り切ることが難しく、延命を目的とした治療となることが経験上多いです。

しかし、近年は獣医療の発展により、根治はできなくても、QOL(quality of life)を保ちながら延命できるケースもあるのではないでしょうか。

■早期発見が大切!

予防よりも早期発見が大切!犬の「がん」に対して飼い主ができること
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質の高いフード選びやサプリの使用など、健康管理を大切にして様々な病気の予防に力を入れている飼い主さんも多いと思います。もちろん、その取り組みはとても重要ですし、これからも継続していくべきでしょう。

しかし、注意してほしい点としては、どれだけ予防したとしてもがんの発生を抑えることはできないという現状です。

例えば、人医学で紫外線は皮膚がんのリスクを上げると言われていますが、日焼け止め等で紫外線を防いだといって、皮膚がんの発生を完全に防ぐことはできません(※2)。

また、皮膚がん以外の種類のがんに対しては、紫外線を防いだとしても基本的に効果はありません。タバコを吸わなくても肺がんになる可能性はありますし、タバコを止めたからといって、他のがんのリスクを下げることはできません(※3)。

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このようにどれだけ予防をしても、がんの発生自体を完全になくすことはできないのです。そのため、予防以上に早期発見を意識するよう、飼い主さんに説明しています。

早期発見に成功した初期のがんに対しては、手術等により根治できる可能性があるからです。

基本的にがんは時間経過とともにどんどん悪くなっていきます。そのため、いかに早く見つけ、治療を開始するかが肝となります。

予防も大切ですが、どれだけ予防しても発生を完全になくすことはできません。日ごろから愛犬の様子が変ではないかをチェックし、定期的に健康診断をすることがとても重要と言えるでしょう。

今回は、がんに関する基礎的事項から、飼い主さんが心がけるべきことなど、たくさんの内容をご紹介しました。がんは、犬でも人でもまだまだ克服できていない恐ろしい病気です。

がんと戦っていくためには、予防・早期発見・治療のいずれもが重要で、そのためには愛犬・飼い主・獣医師が協力していかなければいけません。

がんの早期発見のためにも、日ごろから愛犬の様子をよく観察してあげてくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 Stephen Withrow, et al. (2012). Withrow and Mac Ewen’s, Small animal clinical oncology 5th edition. Saunders.

※2 Narayanan DL, et al. (2010). Ultraviolet radiation and skin cancer. PubMed.

※3 Schwartz AG, et al. (2016). Epidemiology of Lung Cancer. PMC.

【画像】

※ Sopon charoensuk, Milka_Z / Shutterstock

※ serkucher, A_Team, naka, momo / PIXTA(ピクスタ)

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