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忘れちゃダメ!「ワクチン」の必要性と混合ワクチンについて

吉本翔

獣医師
吉本翔

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忘れちゃダメ!「ワクチン」の必要性と混合ワクチンについて

2019年度が始まり、新しい環境での生活に飼い主さんは少しずつ慣れてきた頃でしょうか。いろいろなイベントがある4月ですが、これは人間だけでなく愛犬にとっても同様です。

犬にとって春と言えば、“ワクチン”が始まる季節ですよね。毎年欠かさず愛犬のワクチン接種をしている飼い主さんも多いと思います。

しかし、ワクチンの必要性やワクチン接種で注意すべきことについて、しっかりと理解していますか? 今回はワクチンに関する基本的な事項や注意すべき点などについて、獣医師の吉本翔先生に解説いただきました。

■免疫とは?ワクチンの必要性

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出典:https://www.shutterstock.com/

免疫という言葉に馴染みのある方は多いと思います。免疫は、体内に侵入した異物を排除する身体の防御反応のことです。異物の代表例には、環境中に存在する無数の微生物(細菌やウイルス)が挙げられますが、多くの場合微生物が侵入したとしても免疫が働くことにより微生物は身体から排除されます。

しかし、病原性の高い微生物が侵入した場合、本来生体が持つ免疫だけでは対処しきれず、重篤な徴候を引き起こすことがあります。

ワクチンは、主に感染症の予防を目的として、ある疾病に特異的な免疫を賦与する薬剤のことを言います(※1)。ワクチンを接種された動物は、その疾病に対してより強い免疫機能を誘導することができるため、病原性の高い微生物が侵入したとしても重篤な徴候を示すことなく、微生物をやっつけることが可能となります。

ワクチンを接種することで命を脅かす感染症を予防することができるため、ワクチンの意義は高いと言えます。

■コアワクチンとノンコアワクチン(※1・2)

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動物用のワクチンには、コアワクチンとノンコアワクチンの2種類に分けられます。コアワクチンとは、すべての犬や猫に接種するように勧告されているワクチンのことです。

コアワクチンの対象となる感染症の判断基準は、(1)重篤な徴候を示す、(2)人にも感染し得る、(3)感染力が高い等です。対象となる感染症には、狂犬病、犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎が挙げられます。犬パラインフルエンザウイルス感染症もコアワクチンに含めた方がよいとも考えられているようです。

一方、ノンコアワクチンは必ずしも接種が必須なものではなく、個々の動物の住環境や性質に応じて接種を検討すべきものとされています。対象となる感染症は様々ですが、犬伝染性喉頭気管炎、レプトスピラ症及び犬呼吸器コロナウイルス感染症などが挙げられます。

■ワクチンの接種プログラムと混合ワクチンについて(※1)

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ワクチンによる感染症の予防効果を得るためには、1回のワクチン接種のみでは足りません。1歳までの3回接種が推奨され、1歳齢以降にも定期的なワクチン接種を行った方がよいとされています(感染症の種類により推奨される頻度は異なります)。

複数回にわたりワクチン接種をするため、それぞれの感染症に対して1本ずつ注射を行っていたのでは、とても手間がかかります。そのため、複数のワクチンを組み合わせた混合ワクチンというものが汎用されています。

混合ワクチンには、4種、5種、6種、8種、11種混合ワクチン等があります。いずれも犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、犬伝染性喉頭気管炎が共通しており、数が大きくなるにつれて対象となる感染症が追加されています。

住んでいる地域によって流行っている感染症などもあるので、どのワクチンを接種した方が良いかは近所の動物病院に相談してみるとよいでしょう。

■ワクチンによる副作用はあるの?(※1)

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犬に対するワクチン接種は、恐ろしい感染症を予防するためにとても重要です。しかし、ワクチンの接種は必ずしも安全なものではなく、副作用が生じてしまう可能性もあります。

ワクチンは、それ自体が生体にとっては異物であり、ワクチン接種後に身体が過剰な反応を起こしてしまうアナフィラキシーが生じることがあります。アナフィラキシーによる死亡例もあるため、ワクチン接種後はしばらくの間、副作用が生じないかどうか経過観察をする必要があります。

■ワクチン接種頻度を下げる方法とは?(※3・4)

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アナフィラキシーなどの怖い副作用があるものの、その発生率が低いことやワクチン接種による利点が大きいため、基本的にワクチン接種はした方が良いと言えます。ただし、1歳齢以降のワクチン接種の頻度を減らすことができる場合があります。

ワクチンを接種すると、身体は抗体というものをつくり、この抗体が病原体をやっつけるのに役立ちます。もし、この抗体が体内に十分に存在しているのであれば、ワクチン接種は必ずしもする必要はありません。

抗体価検査は、血中の抗体濃度を測定する検査で、少量の血液で測定することができます。採血のみで測定できる検査ですので、犬にとっての負担も最小限に抑えることができます。

もし抗体価検査によって、血中に十分に抗体があると判断されれば、ワクチン接種を延期することができます。ワクチン接種回数を減らすことは、副作用の発生を減らすことにつながりますので、筆者は抗体価検査を受けることを検討してみてもよいと思っています。

今回の記事では免疫の基本的な内容から始まり、ワクチンの必要性やワクチンの種類、ワクチンの副作用や対策法などについて解説しました。愛犬へのワクチン接種は非常に重要ですが、ただ闇雲に接種してはいけません。

どの種類のワクチンが必要なのかを把握すること、またワクチン接種回数を減らすために抗体価検査という手段もあることを理解するとよいでしょう。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 日本獣医内科学アカデミー編(2014)『獣医内科学 第2版』文永堂出版.

※2 AAHA releases new guidelines on canine vaccination

※3 犬のワクチン抗体価検査について

※4 犬のワクチン抗体価検査について知ろう

【画像】

※ otsphoto, Africa Studio, Kwiatek7, PRESSLAB, Immagy, HTeam / Shutterstock

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