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正しい知識を身に着けよう!「犬ジステンパー」について飼い主が注意すること

吉本翔

獣医師
吉本翔

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正しい知識を身に着けよう!「犬ジステンパー」について飼い主が注意すること

愛犬の健康のために、有名な病気について知識をつけておくことは大切ですね。今回ご紹介する“犬ジステンパー”についても、名前を聞いたことのある飼い主さんもいるのではないでしょうか?

そこで今回は、犬ジステンパーの概要と飼い主が注意することについて、獣医師の吉本翔先生に解説いただきました!

■犬ジステンパーとは

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出典:https://www.shutterstock.com/

現在、犬の死因の第一位は、がんであると言われています。しかし、ひと昔前は、がんよりも感染症の方が命を脅かす病気とされ、恐れられてきました。

命を脅かす感染症のひとつに、犬ジステンパーがあります。ひと昔前と比べ、犬ジステンパーはあまりみられない病気になってきたものの、未だに発生は散見されます。

犬ジステンパーは、犬ジステンパーウイルスというウイルスによって引き起こされます。致死率がとても高く、伝染しやすいため、犬にとって恐ろしい病気です。また、犬以外の動物(タヌキ、ライオンなど)でも流行することがあるそうです。

■犬ジステンパーウイルスの感染経路

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犬ジステンパーウイルスは、感染した動物の鼻水、唾液、血液、尿などに含まれており、非感染動物はこれらの分泌物や排泄物を介して感染するとされています。万が一動物が感染してしまった場合には、他の動物への感染を防ぐために、感染動物を隔離しなければなりません。

■犬ジステンパーの臨床徴候

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犬ジステンパーウイルスが感染してから臨床徴候が見られるまでに、一定期間(数日~数か月)かかります(これを潜伏期と呼びます)。潜伏期を過ぎると、鼻水、くしゃみ、結膜炎、食欲の低下、発疹、白血球の減少などの徴候が見られます。

やがて、血様の下痢、嘔吐、体重減少(削痩)、肺炎に関連する徴候が見られるようになります。また、ウイルスが脳内に侵入することによって脳炎を発症することもあり、この場合には痙攣や麻痺などの徴候が見られます。

■犬ジステンパーの診断方法

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臨床徴候、臨床病理学検査(血液検査など)、レントゲン検査などによって犬ジステンパーの可能性を疑うことができます。しかし、最終的に犬ジステンパーであると確定するためには、ウイルスを検出する検査を行います。

■犬ジステンパーの治療法と予後

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犬ジステンパーウイルスを直接排除することができる薬はなく、治療は二次感染を防ぐことと対症療法が中心になります。犬ジステンパーにより、白血球という免疫に関わる細胞が減少すると、細菌などの二次感染が起こりやすくなります。そのため、二次感染を防ぐことを目的として、抗生剤を投与します。

それぞれの徴候に対しては、対症療法を行います。下痢や嘔吐がみられる場合には、徴候を緩和する薬剤(制吐剤や止瀉剤)を投与し、水分喪失に対して輸液を行います。肺炎の徴候がある場合には、痰を除く薬剤や気道を拡張する薬剤を投与します。

犬ジステンパーを治療するためには、何よりも十分な水分補給、栄養管理が重要です。ビタミンEやビタミンCなどが有効なこともあるとの報告があります。

犬ジステンパーは、致死率が高い感染症であり、発症してしまった犬の多くは助からないとされています。また、一見回復したように見えた場合でも、後から脳炎の徴候を示して命を落としてしまうこともあります。

■飼い主さんができること

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犬ジステンパーの予防で最も重要なのは、ワクチン接種です。犬ジステンパーのワクチンは、犬に接種すべきコアワクチンのひとつと言われています。コアワクチンの対象には、狂犬病や犬パルボウイルス感染症などの致死率が高い感染症が含まれており、犬ジステンパーもそれらと肩を並べて恐ろしい感染症といえます。幸い、国内ではワクチン接種の普及により、飼い犬で犬ジステンパーが問題となるケースは比較的稀となっています。

現在の所、ワクチンこそが犬ジステンパーに対して最も有効な対策法ですので、ワクチン接種を強く推奨します。ワクチンについて十分に知らない方、多少の不安を感じる方は“忘れちゃダメ!「ワクチン」の必要性と混合ワクチンについて”にてワクチンについてご紹介していますので、ぜひご覧ください。

今回は、犬ジステンパーについて解説しました。犬ジステンパーは、発症すると極めて恐ろしい病気です。一昔と比べると国内で問題となるケースは大分減りましたが、それはワクチン接種が普及したからです。

愛犬をこの恐ろしい病気から守るためにも、幼少期及びその後の定期的なワクチン接種(特にコアワクチン)をするようにしてくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※ 日本獣医内科学アカデミー編集『獣医内科学 第2版』文永堂出版.

【画像】

※ Lunja, Neil Lockhart, didesign021, O_Lypa, Africa Studio, Syda Productions / Shutterstock

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