みなさんは、ふと愛猫の口臭が気になったことはありませんか? もしくは「最近よだれが多いような気がする」、「口をくちゃくちゃ動かすことが多い」、「食べ物の好みが変わった」などといったことはありませんか? もしも当てはまる場合、それは口内炎のサインかもしれません。
今回は、猫の口内炎に早めに気づくためのポイントを解説いたします。
■口内炎ってどんな状態のこと?
口内炎というのは口の中や粘膜に起こる炎症のことを指しますが、その中でも猫に多いのは歯ぐきに炎症を起こす歯肉炎(しにくえん)で、その他に歯周病も非常に多いことが知られています。
特に猫の歯周病の割合は、1歳8ヶ月~2歳3ヶ月以上で70%、5歳以上になると85%を占めるという報告もあります(※1・2)。このデータに基づくと、たとえば5歳以上の猫が10頭いたらうちの8~9頭は歯周病にかかっているということになります。これほど多い口の病気ですが、病気が初期だと飼い主さんもほとんど気づいていないといわれています。
歯ぐきの炎症は放置すると歯周病に発展していき、進行すると治療しても元に戻らない段階に入っていきます。歯周病のリスクは年齢が上がるごとにさらに増えていきますので、定期的に獣医さんに診てもらうようにしましょう。
■こんなサインがあったら痛みの可能性!
口内炎の痛みを経験したことのある飼い主さんは、ぜひ想像してみてください。口内炎で痛みがあったとき、泣き叫ぶほどの痛みを感じたことはありますか? ほとんどないと思います。通常、痛くても泣いたり声を出したりするほどではありません。
ただし、水を飲むと粘膜にしみるため、飲み方がゆっくりになったり、痛い方の粘膜になるべく触れないように片側で食べるようになったりするのではないでしょうか。猫でも同じような行動が見られるようになります。
かなり進行すれば、食べているときやあくびの際に「ぎゃー」と叫び声を上げるようになることもありますが、初期の段階ではそういった症状は出ないため、猫は静かにひたすら痛みに耐えていることがほとんどです。
痛みに耐えているうちに炎症が進行して、ひどくなってから気づくというパターンが多いため、早めに気づいてあげられるようによく観察してあげましょう。
以下の症状や行動の変化は、歯周病にかかっている猫によく見られる症状でもあり、要注意です。
・よだれが増える(寝た後、シーツの上によだれが染みついている等)
・大好きなフードやおやつを出してもすぐに食べない(痛いため)
・食べる時にフードをよく落とす
・フードの好みが変わる(ウェットよりもドライ、ドライよりもウェット等)
・いつも右側、もしくは左側だけで食べようとする
・食べるときに口を気にする
・口臭が増える
・食べている最中に鳴く
・歯ぎしりが増える
・グルーミングが減る
・体重が減る(痛くて食べられないため)
■どんな猫種だと口内炎になりやすい?
これは犬でも同じことが当てはまりますが、一般的に短頭種と呼ばれる猫種だと歯のかみ合わせや歯並びが良くないために歯垢がつきやすく、口の中の衛生状態が悪くなって口内炎や歯周病などのトラブルを起こしやすいと言われています(※2)。
・ペルシャ
・チンチラ
・エキゾチック・ショートヘア
・ブリティッシュ・ショートヘア
・シャルトリュー
・雑種(短毛種)
■口内炎になるそのほかの要因は?
猫の口内炎の要因となり得る事項として、以下の項目があげられます。
・年齢が5歳以上
・手作り食(※3)
・猫白血病・猫エイズなどの病気
・自宅でのデンタルケアを行っていない
それから重要なポイントとして、猫カリシウイルスと猫ヘルペスウイルスとの関連があります。
特に、慢性的な粘膜の炎症(特に奥の方)がずっと続く猫歯肉口内炎(FGS)という病気にかかっている場合、そのうち88%でこれらのウイルスに感染していることが報告されています(※4)。
ウイルスの検査は簡単に行えますので、気になる方はぜひかかりつけの先生に相談してみてください。
■家庭でできる口内炎予防
重要なのは、日頃からデンタルケアを行ってお口の中の状態を確認していくことです。そうすると、病気になったときに早めに気づいてあげられるようになります。
歯についた歯垢(しこう/プラーク)を歯みがきで取り除かずにそのままにしておくと、そこから炎症が起こり大体2~3週間で歯ぐきの炎症を起こすことが知られています(※5)。
そのため、日頃からデンタルケアを続けるように心がけていきましょう。
歯ブラシを当てるのが難しい場合、まずは抱っこするところから、もしくは綿棒を歯ぐきに当てるところから慣らしていくことをお勧めします。歯ブラシは歯ぐきにあたると痛いので嫌がることがありますが、綿棒だと比較的受け入れてもらいやすいです。
今回は、簡単に猫の口内炎を早く見つけるためのポイントについてお伝えしました。
デンタルケアは難しいかもしれませんが、少しずつ時間をかければ猫も慣れてくれるようになります。無理やり行うのではなく、おやつなどを使って楽しくトレーニングしていくのも慣れてもらうためのコツです。
ぜひ参考にしてみてくださいね!
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
【関連記事】
※ 若さを保つために!高齢犬の「こころ」と「からだ」を刺激しよう
※ 100均商品で簡単DIY!犬猫「あったかハウス」の作り方
※ 飼い主さんとの楽しい思い出が重要!犬の「記憶力」についてわかってきたこと
【参考】
【画像】
※ KDdesignphoto,BrAt82,De Jongh Photography,ANURAK PONGPATIMET,Africa Studio,Nils Jacobi / Shutterstock
戻る
みんなのコメント