犬がよだれを垂らす光景を目にすることがあっても、猫がよだれを垂らすことはめったにありません。そのため、猫がよだれを垂らしていたら飼い主さんは注意が必要です。
今回は、猫のよだれから分かる病気の原因をご紹介します。
※ 記事には患部の写真を含むため
■猫のよだれってどんなもの?
食べ物を消化したり、口の中を清潔に保ったりするために、口腔内には常に唾液が分泌されています。唾液が口から垂れ出たものを、よだれといいます。
猫は、犬と比較して、日常よだれを見ることは少ないです(触ると湿っていることはありますが)。そのため、猫のよだれが見られたときは、下記の1~7などの病気や異常が出ているサインです。病気が疑われるときには病院で診察を受けることをおすすめします。
ちなみに、有名なパブロフの犬の実験は唾液を指標にしており、よだれを観察したものではありません。
■原因1:口内炎、慢性歯肉炎
カリシウイルス(FCV)、白血病ウイルス(FeLV)、エイズウイルス(FIV)は、口内炎、慢性歯肉炎を引き起こします。これらに罹患した猫の47.1%でよだれが認められると報告されています(※1)。症状が進むと、血に混ざったよだれや痛みを伴うケースが多いです。
■原因2:異物
キャットフードが一般的ではなかったころは、魚の骨が刺さって、よだれが出ている症例にしばしば出会いました。外飼いの猫では、草やビニール等が歯に挟まり、よだれが出ている症例にいまだに出会います。
■原因3:口腔内腫瘍
猫の口腔内腫瘍は、犬と比較すると少ないですが、まれに、舌や上顎の歯肉などから腫瘍が発生します(※2)。口内炎・慢性歯肉炎と同様、痛みを伴うケースが多いです。
缶詰フード、特にツナ缶は、猫の口腔内腫瘍のリスクを4.7倍、煙草は2倍、それぞれ上昇させると言われています(※2・3)。
■原因4:化学物質の誤飲
特に有機リン系の農薬を舐めた猫は、多量のよだれを垂らします。痙攣を伴うこともあります。
■原因5:刺激物の摂取
猫に薬を与えようとして、ブクブクよだれが出て驚かれた経験がある方がいらっしゃるかもしれません。
猫は、苦いものが非常に苦手です。特に、苦い薬の代表である抗生剤の投薬は、口の中に残らないよう一気に飲ませましょう。ブクブクさせると、しっかりと飲めていないケースもあります。
■原因6:恐怖・不安
恐怖、不安を強く感じるネコは、例えば、ペットホテルなどで知らない場所に行くと、よだれを垂らすことがあります。
■原因7:車酔い
吐き気に先行して、よだれが出ることがあります。
めったに見ない猫のよだれは、病気の可能性をはらんでいますので、飼い主さんは注意してあげてください。
また、人や犬と違い、猫は唾液で毛を濡らし(グルーミング)、気化熱を利用して体温を下げます。口腔内疾患や、腎臓病では、唾液の臭いが強くなります。猫のにおい(つまり体表の唾液の臭い)が、いつもより違うと感じた場合は、病気が隠れているかもしれません。よだれと共に、注意して下さいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※2 Ozgur,Bilgic et al., Feline Oral Squamous Cell Carcinoma: Clinical Manifestations and Literature Review., J. Vet. Dent., 32, 30-40(2015)
【画像】
※ 北森ペット病院
※ FLUKY FLUKY,Ling_Chen / Shutterstock
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