痛み、痒み、違和感、視力低下、視野狭窄など、私たち人間は、自覚症状で眼科に行きます。しかし犬猫は、症状を訴えることができません。愛犬・愛猫の目が赤くなった……という飼い主さんの相談は、眼科の診察の中で最も多いものですが、犬猫にとって自覚症状はすでに以前からあり、病態としてはかなり進行している可能性があります。
今回は、犬の症例を中心に「目が赤くなる」症状が出る病気をご紹介します。
※ 記事には患部の写真を含むため
目次
■正常時の犬の目を観察しよう
犬・猫は白目部分が隠れているので、動物病院では写真のように観察します。

こちらは正常な犬の瞳孔(黒)と虹彩(茶色)です。いわゆる「黒目」です。

正常な犬の「黒目」と「白目」です。
正常な犬の「白目」です。
■黒目の「中」が赤い場合
黒目が赤い場合、目の中で出血が起こっています。網膜はく離、眼内腫瘍、ぶどう膜炎、血液凝固障害など緊急の重篤な疾患が考えられます。猫の場合は、慢性腎臓病に伴う高血圧性の網膜はく離のケースが散見されます。
■黒目の「表面」が赤い場合

黒目は、角膜という透明の膜で覆われていますが、そこに血管が入り込むと一部が赤く見えます。外傷、乾燥性角膜炎など角膜障害のケースが考えられます。
■白目が「均一に」赤い場合
外傷による出血などで、しばしば見られます。
■白目に「血管」がたくさん見える場合
いわゆる、充血です。表面の充血(結膜炎)、深層部の充血、もしくは両方が考えられます。
白目の充血は、さまざまな目の疾患に付随します。単なる軽い結膜炎だと放置していたら、実は緑内障の初期で、気がついたら視力を失ったというケースもあり得ますので、安易な自己判断は絶対に避けましょう。白内障を放置して、緑内障に移行し、目を摘出しなくてはいけなくなったケースもしばしばあります。
充血が伴う目の病気を、下記より症例写真とともにご紹介します。
・緑内障

・角膜の外傷
丸で囲った部分が外傷部です。緑色の液体は、傷を染める特殊な色素になります。
・白内障からぶどう膜炎、緑内障へと進行
・乾燥性角膜炎
・角膜の障害、緑内障、水晶体脱臼など
■目頭から「赤いもの」が出てきた場合
・第三眼瞼の腫れ
犬猫には、目頭に、第三眼瞼(瞬膜)という膜があります。通常は隠れていますが、体調が悪い時に出っぱなしになることがあります。
こちらの症例は、犬同士の喧嘩で目を打ったため第三眼瞼が腫れてしまいました。
・チェリーアイ
第三眼瞼には、瞬膜腺という分泌腺があり、それが突出したものをチェリーアイといいます。チェリーアイは、犬の場合だと通常2歳以下でよく見られ、手術で戻すことができます。しかし高齢の場合、腫瘍の可能性もあるので注意が必要です。
■番外編:白目が「黄色い」場合

白目が黄色の場合は、いわゆる黄疸が考えられます。肝臓・胆嚢疾患を疑います。
目の異常は、真っ先に飼い主さんが気がつくことができます。自己判断はせず、違和感を感じたら獣医師にすぐにご相談ください。早期発見、早期治療を心がけることが大事です。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※ 佐々木 文彦(2018)『楽しい解剖学 ぼくとチョビの体のちがい 第2版』学窓社
【画像】
※ 北森ペット病院
※ SasaStock,Kzenon / Shutterstock
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