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【獣医師執筆】犬にも老眼はあるの?加齢が目に与える影響を解説!

北森隆士

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北森隆士

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【獣医師執筆】犬にも老眼はあるの?加齢が目に与える影響を解説!

2023年7月13日情報更新

シニア期に入った大切な愛犬に、今まで見られなかった変化が現れると心配ですよね。人よりも早いスピードで年を重ねる犬の加齢には、飼い主さんの正しい理解が必要不可欠です。今回は、加齢が特に目に与える影響についてお話しします。

※ 記事には患部の写真を含むため、抵抗がある方はご注意ください。

■犬に老眼はある?

犬にも老眼はあるの?加齢が眼に与える影響を獣医師が解説!
出典:https://www.shutterstock.com/

人は、加齢により目のピント調節機能が衰え、近くにあるものが見えにくくなる、いわゆる老眼になります(※1)。しかし、犬は生まれつき近くのものがはっきり見えません。老化が犬の目に与える症状としては、視力(視覚)低下よりも、構造的なものや、痛みを伴う目の疾患が懸念されます。

■加齢に関係する目の疾患の例

核硬化症、白内障、角膜変性症、自発性慢性角膜上皮欠損症、網膜色素変性症などが報告されています(※2・3)。また、高齢犬の目の健康を保つために、眼圧の検査(緑内障の予防)、涙液量の検査(乾燥性角膜炎の予防)などが推奨されています(※3)。

今回は、核硬化症、白内障、緑内障、乾燥性角膜炎、角膜変性症、自発性角膜上皮欠損症についてお話します。

核硬化症

犬にも老眼はあるの?加齢が眼に与える影響を獣医師が解説!
出典:北森ペット病院

黒目全体が、均一に青白くなります。白内障と誤解されることが多いのですが、白内障は目が見えなくなっていく一方で、核硬化症は視覚に影響を与えません。6歳以上の多くの犬で見られ、加齢とともに進行します。治療の必要はありません。

白内障

犬にも老眼はあるの?加齢が眼に与える影響を獣医師が解説!
出典:北森ペット病院

トイプードルのように若くしてなる白内障もありますが、一般的には、加齢がリスクです。

写真は、進行した成熟白内障ですが、初期は黒目に局所的な白い濁りが見えます。6.7~8.3歳が発症の平均的な年齢です(※3)。

緑内障

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出典:https://www.shutterstock.com/

眼圧が上昇し、失明する疾患です。目の充血(白目が赤くなる)や、目の痛みで、飼い主さんが気がつくことが多いです。写真のような、眼圧計で検査を行います。

乾燥性角膜炎

犬にも老眼はあるの?加齢が眼に与える影響を獣医師が解説!
出典:北森ペット病院

犬にも老眼はあるの?加齢が眼に与える影響を獣医師が解説!
出典:北森ペット病院

涙は角膜を保護する作用がありますが、乾燥性角膜炎は涙の量が減り、角膜が乾燥して障がいを受ける疾患です。筆者の患者さんのなかで、最もよく見る目の疾患です。症状としては、目の表面が白くなったり、血管が出てきたり、黒い色素が広がったりします。放置すると、角膜に穴があいたり視覚が低下したりします。重度の場合は、ほとんど涙が出ていないケースもあります。ちなみに、獣医領域ではドライアイとは一般的には言いません(※4)。

角膜変性症

犬にも老眼はあるの?加齢が目に与える影響を獣医師が解説!
出典:北森ペット病院

写真の白い小さい点状のもののような、角膜に変性がおこる疾患です。カルシウムや脂肪の代謝異常で起こります(※3)。痛みが強く出るケースもあります。

自発性角膜上皮欠損症および難治性角膜上皮潰瘍

自発性角膜上皮欠損症(SCCEDs、スケッズ)

8~9歳で発症することがあります(※3)。角膜が剥げ落ちていく、難治性の疾患です。専門医の受診が必要かもしれません。珍しい疾患です。

・難治性の角膜上皮潰瘍

犬にも老眼はあるの?加齢が目に与える影響を獣医師が解説!
出典:北森ペット病院

高齢犬では、慢性疾患に併発して難治性の角膜上皮潰瘍が発生することがあります(※5)。同症例は、甲状腺機能低下症を併発していました。

■目に症状が及ぶ疾患の例

・突発性前庭疾患

高齢犬で頻発するこの疾患では、首が傾いて、運動失調となりますが、しばしば眼球しんとうが発生します。直接目に原因があるわけではないですが、目に症状として現れます。

 

加齢と目の疾患についてお話しました。本疾患以外にも、純血種は、犬種ごとの遺伝性眼疾患が非常に多いとされます。遺伝性疾患は、歳を重ねると発症率が上がります。飼い主さんは、自身のペットの遺伝性眼疾患はできる限り把握しておきましょう。

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※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※ 1 日本眼科学会

※ 2 Jan Bellows et al., Common physical and functional changes associated wuth aging in dogs. JAVMA, 246, 67-75(2015).

※ 3 Jan Bellows et al., Defining healthy aging in older dogs and differentiating healthy aging from disease. JAVMA, 246, 77-89(2015)

※ 4 梅田裕祥、眼疾患を知る(8) 、Vet I, 15, 43-47(2016)

※ 5 山下真、SCCEDsと鑑別が必要な疾患、CAP、329、14-21(2016)

※ 6 Spontaneous Chronic Corneal Epithelial Defects (SCCEDs)

【画像】

※ Jwavebreakmedia,Volodymyr Baleha,Kukota / Shutterstock

   

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