※2024年3月30日情報更新
目やには、どんな犬でも少なからず見られるものですが、中には病的なものもあるといいます。でも飼い主さんにとってその見極めって難しいですよね。実際に動物病院の診察でも目やにの質問をよく受けます。
今回は、獣医師である筆者が犬の目やにについて解説いたします。
目次
■犬の目やにの原因とは。どんな時にできるの?
目は、皮膚と同じように常に新しい細胞に入れ替わるため、古くなった細胞や分泌物が、目やにとして排出されています。また、目やにには目に付いたゴミを絡め取る役割もあります。
代謝による目やには、病気のない健康な犬で見られる正常なものです。色は白っぽいものや茶色がかったものがほとんどで、量はそんなに多くありません。ただし、逆さまつげや目に入るゴミなどの影響で、涙と一緒に目やにの量も増えることがあります。
一方で、結膜炎や角膜炎など、目に起きた炎症反応によって目やにが作られることもあります。その目やにには、白血球などの炎症に関係する細胞が含まれます。
炎症は、
・細菌やウイルスなどの感染症による炎症
・ぶつかったり擦ったりして目を傷つけてしまうことによる炎症
・花粉症やハウスダスト、食べ物などアレルギーによる炎症
・ぶどう膜炎や緑内障など、目自体の病気による炎症
など、さまざまな原因があります。もちろん、炎症による目やには進行すると様々な合併症を引き起こすことがあるため、動物病院を受診して治療を行う必要があります。炎症による目やには、ほとんどが黄色もしくは緑色のいわゆる「膿(うみ)」のような色合いをしています。
■犬の目やに、こんな時は要注意!
目やには健康な犬でも見られるもので、ほとんどは朝と夕方の2回、軽く拭いてあげる程度で十分なケアができます。しかし、普段よりも目やにの量が増えた、あるいは色が変わった、犬が気にし出した、というように他の症状も見られるようになったときは、病的な目やにの可能性が高いため注意が必要です。
また、たいていの場合、目やにが増えるときは涙の量も増えることが多いのですが、なかにはドライアイ(涙の量が少ない)でも目やにが増えることがあります。これは見た目には分かりづらいのですが、ドライアイの場合は角膜(瞳の表面の膜)が傷ついていることがあり、早急な治療が必要な場合があります。
したがって、普段の目やにと比べて違いを感じた場合は、速やかに動物病院を受診するようにしてください。
■犬の目やには、目の病気以外でも見られることがある!
これは筆者の個人的な経験ですが、犬の体調が悪いときには、目やにの量が増える傾向があるようです。例えば熱が出ていたり、脱水して元気がなくなっていたり、あるいは何らかの原因で食欲も元気もない状態では、そういった全身症状に加えて、目やにが出ていることが多いように思います。
■病気以外の犬の目やにのお手入れ方法
犬の目やには、炎症など病的なものは前述の通り動物病院での治療が必要になります。その一方で、健康な犬でも見られる代謝による目やには、普段のお手入れでケアするようにしましょう。
目やにのケアは、たいていは朝と夕の軽い拭き取りで十分です。逆に強く拭きすぎたりすると、まぶたや目を傷つけたりすることがありますので注意してください。
また、他の犬に比べて目やにの量が多い犬は、食事やサプリメントを見直しても良いかもしれません。代謝による目やにには、目の古い細胞だけでなく、様々な分泌物も混ざっています。それら分泌物の量や質は、筆者の経験上、食事やサプリメントによって変化しますので、その犬に合う食事やサプリメントを探してあげることで、目やにの量が減ってもおかしくありません。
さらには、温かいタオルなどを目にあて、軽くマッサージしてあげることで、目やにの量が減ることがあります。これは、まぶたにある「マイボーム腺」という分泌腺が温められることで、分泌物の流れが改善し、目やにが正常な量に戻ると考えられています。具体的な方法は、特に決まったものはありませんが、筆者の動物病院では、朝晩、各1分ほどマッサージを行うようにしてもらっています。早ければ2週間ほどで効果が見られるようになります。
■いつもと違う、と感じたら病院へ!
繰り返しになりますが、犬の目やには、健康な犬でも多少は認められますが、中には炎症による目やになど病的なものもあるため、色や量など普段と異なる目やにが見られたときは、速やかに動物病院を受診するようにして下さい。
また、目やにのお手入れは、日々の拭き取りに加えて、目を温めたりマッサージすることで、目やにの量が変化することがあります。食事やサプリメントも種類によっては目やにに影響を与えますので、あなたの愛犬にあったものを選んであげるようにして下さい。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※ 'Obesity and Associated Comorbidities in People and Companion Animals A One Health
【画像】
※ lienjp,Jobrestful,cytosine,アオサン,coffeekai / PIXTA(ピクスタ)
※ Javier Brosch / Shutterstock
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