【獣医師執筆】うちの子、水飲みすぎ？犬猫が1日に必要な飲水量と脱水症について

「最近、よく水を飲みませんか？」動物病院で、こんな質問をされたことはありませんか？　私達獣医師が犬や猫を診察するときに、飲水量は重要な情報のひとつになります。今回は犬猫の1日の飲水量や、病気との関連について解説します。

■犬猫は、1日にどれくらい水を飲むの？

犬も猫も1日当たりの水分要求量（ml／日）は、1日当たりのエネルギー要求量（kcal／日）とほぼ同じといわれています。与えているフードのパッケージにはたいてい給与量のカロリー数が記載されていますので、確認してみましょう。

この数字は食事に含まれる水分（ドライフードは10%程度、ウェットフードは80%程度）も合計しての水分要求量です。実際の飲水量は年齢、運動量、気候、フードの種類などの影響も受けますので、十分に飲水しているかどうか分かりにくいと思います。猫の場合、洗面所や浴室の水が好きであったり、花瓶の水を飲むこともあり、飲水量の把握はし難いですよね。

■犬猫の飲水量を計るには

犬猫の水容器に水を入れるときに計量してみましょう。飲み残した水の量を引き算すれば、1日の飲水量が分かりますね。数回計ると、平常時の飲水量が大体分かるでしょう。容器に目盛りをつけてもいいですね。増減が疑われるときに計量してみれば、その変化がはっきりします。つまり飲水量の変化がとても重要な情報となります。

■飲水量が多い場合

糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎不全、尿崩症、雌の子宮蓄膿症などの病気が考えられます。ストレスが原因のこともあります。また、味付けの濃いものを食べると、のどが渇いて飲水量も増えます。

犬も猫も飲水量が100ml／kgを超えるほどであれば、かなりの多飲と言えるでしょう。

■飲水量が少ない場合

飲水量が少ないと、膀胱炎や尿路結石症、便秘などを起こしやすくなります。猫の場合は祖先が砂漠で生活しているリビヤヤマネコと言われており、水分摂取量が比較的少なくても生きていくことができます。そのために水をあまり欲しがらず、下部尿路疾患にかかりやすいと考えられています。

体内の水分が足りないことで起こる脱水症は、下痢・嘔吐、糖尿病、腎不全、子宮蓄膿症、熱中症、高齢化などさまざまな病気に伴う症状です。重度の脱水症は命に関わります。水を飲ませることだけではなかなか改善できませんので、輸液などの治療が必要となります。

■家庭でできる脱水症のチェック

筆者が実施している、簡易的な脱水症のチェックポイントをご紹介します。

・犬猫ともに、首の後ろの皮膚をつまみ持ち上げて皮膚から指を離したとき、皮膚が直ぐに元の状態に戻らない。

・短毛の猫でよく見られるが、背中から首にかけて毛の流れに逆らって撫でると、毛が立ったままでなかなか戻らない。

・被毛に艶がなくなり、何となくぱさつく。

・眼球が落ちくぼんでいる。

・排尿回数が少ない。

以上のような症状が確認できれば、脱水症が疑われますので、早急に動物病院を受診しましょう。

■犬猫に適切な飲水をさせるには

愛犬・愛猫の飼い主さんは下記の点に気をつけると良いでしょう。

・いつでも清潔な水を飲めるように、常に容器に水を用意しましょう。

・水を入れる容器の形や材質は、犬猫の好みのものを選びましょう。

・ぬるま湯にすると飲水量が増えることもあります。

・特に猫の場合は、水を1ヶ所だけではなく数カ所に置くとよいでしょう。

・ドライフードをウェットフードに切り替えると、確実に水分摂取量は増加します。

飲水量は重要な健康のバロメーターです。意識して確認しないと分かりにくい項目でもありますので、平常時に何度か計っておくと、犬猫の健康管理に役立つでしょう。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 徳本一義（2013）「猫における水分摂取の重要性」ペット栄養学会誌 16(2)

※2 坂根弘（2018）「ドライとウェット：猫はどっち派？」ペット栄養学会誌 21(3)

※3 其田三夫監修（1983）「主要症状を基礎にした犬の臨床」デーリィマン社【画像】

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