動物病院と聞くと、「うちの子は大好き!」とすぐに答えられる飼い主さんは、残念ながらまだ多くはないと思います。さまざまな調査がありますが、約80%のねこちゃんは動物病院が苦手というデータもあるようです(※1)。これらの調査から推測するには、「愛する動物が嫌がらずに安心して治療を受けたい」というご家族の気持ち(※2)はあるものの、我が子のストレスを考えると……と躊躇されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、どんな病気もそうですが、早期発見、早期治療はとても重要です。さらに、ストレスを軽減させながら通院する方法もあります。それには、動物病院スタッフ、飼い主さん双方の協力と努力も必要になります。
今回は、ご家族がご自宅で準備することができる、筆者がおすすめするわんちゃん、ねこちゃんのストレス軽減ができるポイントについて3つお伝えいたします。
■1:移動手段の準備をする
アニコム損害保険の調査によると、ねこちゃんの通院で大変なこととして、「移動中に鳴く」「キャリーバッグに入りたがらない」「キャリーバッグを見ると逃げ出す・隠れる」といった点が飼い主さんからのアンケートでトップに入り、ねこちゃんにとって移動時のストレスが多いことが分かります(※3)。
わんちゃんも、クレートに入れようとすると逃げる、車に乗りたがらないなどの行動もよく耳にします。動物病院に行く前の心の準備練習は必要です。
ねこちゃんや小型犬はクレートに入って移動することも多いかと思います。日ごろからクレートに入る練習をしておくことは重要だと考えます。
クレートについての説明を当院のブログでも紹介していますので、参考になさってください。
■2:動物病院に行く機会を増やす
新潟での調査で、「動物病院大好きキャンペーン」(上図)を実施したことがありました。健康なときに動物病院に立ち寄って、楽しく遊んで帰るだけの企画です(※4)。
小規模調査でしたが、回数を重ねることで動物病院に対するイメージが変化したわんちゃんも報告されました。知り合いの動物病院では、散歩の途中に立ち寄ってもらい、オヤツを食べて帰るだけを繰り返して、動物病院を好きになったわんちゃんやねこちゃんもいたそうです。当院で治療中のわんちゃんも、動物病院をお散歩コースにすることで、動物病院嫌いを克服したケースもあります。
■3:みんなで仲良くは効果的!?
ある研究では、飼い主さんに対して友好的な人とそうでない人を犬は見分ける能力があるのではないかと報告されています(※5)。昨今の研究結果からの示唆として、お互いの緊張感は、わんちゃんやねこちゃんに伝わるのではないか、という仮説が科学的にも実証され始めているように思います。
動物たちにとっては、人と人のつながりも重要だと感じています。リラックスして会話できる環境を、動物病院スタッフと飼い主さんがお互いに作っていきたいですね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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※1 白井春佳(2018)『動物行動学、臨床行動学から 猫と飼い主とのファーストコンタクトを成功させる Felis Vol.13,』アニマル・メディカル社
※2 動物病院に来院するペット飼い主の意識調査『ベッツワンプレス 2015秋号(Vol.44)』掲載分
※3 アニコム損害保険(2013)『2/22は「猫の日」 猫の通院に関する調査』
※4 白井春佳「動物病院大好きキャンペーン」新潟での実施調査,第38回動物臨床医学会年次大会,2017
※5 Scientists Confirm Dogs Can Recognize a Bad Person
※6 ペットフード協会(2016)『平成28年全国犬猫飼育実態調査』
【画像】
※ FamVeld,Africa Studio,Sigma_S / Shutterstock
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