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【獣医師執筆】冬場に注意したい静電気!静電気による猫の健康への影響と対策

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【獣医師執筆】冬場に注意したい静電気!静電気による猫の健康への影響と対策

冬場に多く発生する静電気のせいで、長毛のねこちゃんを触ろうとしたときにお互いにビックリしたことはありませんか? 今回は静電気の健康への影響や危険性、ご家庭でできる対策について、獣医師である筆者がお伝えしていきます。

■静電気とはどんなもの?

冬場に注意したい静電気!静電気による猫の健康への影響と対策
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私たちの身の周りにある物体はすべてプラスとマイナスどちらかの電気を持っていて、バランスが保たれています。静止した電気のバランスが崩れて発生するのが静電気です。

私たち人や動物の場合、どちらかというとプラスの電荷を持ちやすいことが知られています(※1)。

たとえば、エレベーターのボタンにマイナスの電気があるときに触ろうとすると、ボタンと指のそれぞれが持っている電気が影響し合い、指の中にマイナスの電気が流れ込んでくるため、そのときに小さな放電が起きます。

他にもプラスチックの下敷きを髪の毛にこすりつけたときや、ねこちゃんの毛を何度も触ったときにも、弱い静電気が発生しますが、これは摩擦によるものです。静電気の発生には、接触・摩擦・剥離・衝突などといったさまざまな現象が関わっています。

たとえば、体に触れようとしたときにバチっと静電気が発生するのは接触によるものになります。

 

■静電気はなぜ冬に多いの?

冬場に注意したい静電気!静電気による猫の健康への影響と対策
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静電気の発生には温度と湿度が関係していて、物の材質によっても変わるのですが、一般的には湿度が下がり気温が高い条件になると静電気が起こりやすくなります。ただし温度よりも湿度のほうに強く影響されるため(※2)、夏よりも湿度が下がりやすい冬場に静電気が起こりやすくなると考えられているのです。

湿度が高いと肌がしっとりとした感じになり、湿度が下がるとカサついた感じがしますが、それは肌についている小さな水の粒子の密度が違うために感じられる変化です。水の粒子は電気を通すので、私たちの体に流れている電気も皮膚についた水の粒子を通して大気に分散していきます。

静電気は体のなかに電気が溜まっているほど起こりやすくなるため、湿度が高いときには発生しにくく、湿度が低いときには電気が大気中に分散しにくくなることで逆に発生しやすくなります。

 

■静電気による猫の健康へ悪影響はある?

冬場に注意したい静電気!静電気による猫の健康への影響と対策
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さまざまな説がありますが、国際的には静電気が直接健康に影響を与えて害を及ぼすということは証明されていないと言われています(※3・4)。ただし、静電気が起こるとチリやホコリのほか、花粉、ハウスダスト、PM2.5などといった身体に影響を与える粒子も寄せつけるようになります。実際に、ミツバチが花粉を身体につけるときにも静電気が役割を果たしていることが分かっています(※5)。

直接的な影響は少なくても、花粉症などといったアレルギーの病気や喘息をかかえているねこちゃんの場合は影響を受ける可能性がありますので、静電気には気をつけてあげましょう。

 

■静電気の対策はどうしたら良い?

冬場に注意したい静電気!静電気による猫の健康への影響と対策
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ガソリンのセルフスタンドなどで「はじめにタッチ!」と記載された、黒くて丸い静電気除去シートを見かけたことはありませんか? このシートは地面に繋がっていて、手を触れると体のなかに溜まっている電気が自動的に抜けて静電気が発生しづらくなるような仕組みになっています。静電気によるガソリンスタンドでの火災が過去に報告されているため(※6)、予防として備えられるようになったのが静電気除去シートで、アースとも呼ばれているものです。

同じような原理を生かした静電気対策グッズもありますので、そういったグッズを利用することでねこちゃんを触るときに発生する静電気を防ぐことができます。

そのほかの対策としては、以下も挙げられます。

・飼い主さん自身の手に(ねこちゃんに害のない)ハンドクリームをこまめに塗ることで乾燥を防ぐ

・部屋に加湿器を置いて湿度を上げる

・服やタオル、ねこちゃんのために利用するブランケットなどの素材に気をつける

ナイロン、ウールやレーヨンはプラスの電位、アクリルやポリエステルはマイナスの電位を持ちやすいと報告されています(※1)。

電位差の大きい素材(たとえばプラスのナイロンとマイナスのアクリルなど)を組み合わせると、静電気が発生しやすくなるので注意しましょう。特に、ウールやポリエステルは、花粉が吸着しやすいことも知られています(※7)。

一般的にはコットンが静電気を発生しにくい素材です。また、洗濯の際に柔軟剤を使うことでも静電気を抑えられると言われています。

 

静電気が不快なのは動物にとっても同じですから、できるだけ生活環境を整えることで快適に過ごせるようにしていけるといいですね。ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 Shuaihang P and Zhinan Z. Fundamental theories and basic principles of triboelectric effect: A review. Friction 2019; 7: 2-17.

※2 Yunpeng Z, Quanzhen L, et al. Influence of relative humidity and temperature on quantity of electric charge of static protective clothing used in petrochemical industry. J Phys Conf Ser 2013; 418: 012025.

※3 Petri AK, Schmiedchen K, Stunder D, et al. Biological effects of exposure to static electric fields in humans and vertebrates: a systematic review. Environ Health 2017; 16(1): 41.

※4 Chapter 9: Health risk assessment. Environmental health criteria monograph No.232. WHO Press.

※5 Clarke D, Morley E, et al. The bee, the flower, and the electric field: electric ecology and aerial electroreception. J Comp Physiol A 2017; 203(9): 737-748.

※6 セルフのガソリンスタンドで給油する際の注意点について - 埼玉県

※7 尾上弘樹、戸部聖一、他、外出時における衣類への花粉対策、アレルギー2005; 54(8-9): 1073.

【画像】

※ Alena Ozerova,Gwoeii,Ksenia Raykova,Pixel-Shot,Stokkete / Shutterstock

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