愛犬家にとってわんちゃんは、何にも代えられないほど愛おしい存在です。しかし、大切だからこそ、周囲に配慮した飼育法を取り入れていかなければなりません。
そこで今回は愛玩動物飼養管理士の筆者が、飼い主さんのご近所付き合いで気を付けるべきポイントを解説していきます。
■飼育時に考えられるご近所トラブルとは?
わんちゃんを飼っていると、近所の方から鳴き声に対して苦情を受けることもあります。こうしたトラブルはペット可の集合住宅でも起こりやすく、家同士が密接していると一軒家であっても発生してしまいます。
また、散歩時に排泄物の処理がしっかりとなされていないと、近隣住民の方は糞尿の被害で悩んでしまい、愛犬家を快く思わなくなってしまうでしょう。
さらに、散歩時は飼い主さんが目を離した隙にわんちゃんが他人を噛んでしまう可能性もあります。愛犬の噛みつきトラブルは弁護士が介入し、慰謝料の支払いが命じられるケースも多いので注意が必要です。
■ちょっとしたしつけで回避できる!主なご近所トラブル防止法
わんちゃんを飼うとき、周囲には動物が苦手だったり、嫌いだったりする人もいるということを忘れないようにし、しつけやちょっとした工夫でペットトラブルを防いでいきましょう。
(1)鳴き声対策は子犬のうちから行おう
ご近所トラブルに発展しやすいのが“鳴き声”。しかし、わんちゃんを無駄鳴きさせないことで対処することができます。無駄鳴きをさせないようにするには、飼い主さんがわんちゃんの要求を鵜呑みにしないことが大切です。
例えば、お腹が空いたときやケージから出してほしくてわんちゃんが鳴いたとき、飼い主さんが必要だと思わなければ、要求に従わない・反応しないようにしてみましょう。要求をのんでしまうと、わんちゃんは「鳴けば自分の願いが叶うのだ」と思い、吠え癖がつきます。
一方で、鳴かずに大人しくしているときこそ、おやつをあげたりケージから出してあげたりしましょう。「大人しくしていれば、願いが叶う」とわんちゃんが覚えてくれたら、無駄鳴きの回数も減っていきます。こうしたしつけは受容性が高い子犬の頃から行うのがおすすめです。
なお、飼い主さんの中には無駄鳴き対策として声帯除去手術を考えている方もいるかもしれませんが、声を思ったように出せないと、却ってストレスを感じてしまう可能性が高いので、まずはしつけによる改善を図っていきましょう。
(2)飛びつきなど他人への危険が少ない散歩スタイルを
散歩をするときは必ず首輪やリードを用意しましょう。ノーリードでの散歩は近所トラブルを引き起こす原因になるため、おすすめできません。
リードは手にぐるぐると巻きつけて持つと、わんちゃんに引っ張られたとき、コントロールができなくなってしまうため、親指にかけながら持つようにしましょう。長さに余裕がある場合はリードを手に一巻きだけし、残りは束ねて持つのがポイントです(※)。
歩くときはリードを張らずに、少したるんだ状態を保ちましょう。他のわんちゃんや人とすれ違うときは、リードをあらかじめ短く持ち、行動を制限するように心がけてください。
そして、わんちゃんがリードを引っ張るときはすぐに止まり、前に進ませないようにしましょう。その後、諦めて戻ってきたら大好物のおやつなどを与え、プラスの感情を持たせることで行動を制限するのも効果的です。
また、わんちゃんが人に飛びついてしまう癖を持っているときは、リードを踏み、目の前の人に飛びかからないように配慮していきましょう。
(3)苦情の原因となる「排泄」は散歩中にさせない工夫も効果的
散歩中の排泄物は、近隣住民からの苦情に繋がりやすいものです。だからこそ、飼い主さんはみんなが気持ちよく過ごせるよう、しっかりと糞尿の処理を行いましょう。散歩に出かけるときはうんちを入れる袋だけでなく、おしっこを洗い流せるように水も準備しておくのがポイントです。
また、わんちゃんの中には散歩を覚えると、外でのみ排泄をするようになってしまう子も少なくありません。しかし、ご近所トラブルを避けたり、散歩に行けなかったりするときでも快適にトイレをさせてあげるには、室内で排泄させることを習慣づけていきましょう。
例えば、室内で排泄をさせてから散歩に出かけることを愛犬とのルールにするのもおすすめです。その際は、室内で排泄ができたら、ごほうびとして散歩に連れて行くというようなしつけ法をとっていきましょう。
なお、散歩中のおしっこはマーキングであることも多いので、愛犬がにおいを嗅いで興味を示しそうな場所は、リードを短く持ちながら足早に通り過ぎ、マーキングさせないようにしていくのも効果的です(※)。
■迷惑が掛からない遊び場へ連れて行けば安心
近隣住民の方とうまく付き合っていくには、わんちゃんを遊ばせる場所にも配慮していきましょう。公園やドッグラン、ドッグカフェなら他のわんちゃんとも交流しながら伸び伸びと遊べるので、よい刺激も受けられます。
愛犬が車酔いしない場合はドライブをしながら、一緒に旅行を楽しんでみるのもおすすめです。近年ではペットと泊まれる宿も増えてきているので、水遊びやカヌーなどのアクティブなスポーツを一緒に楽しめる施設を探してみるのもよいかもしれません。
ただし、こうした場所へ連れて行くには、事前に「待て」や「おすわり」を習得させたり、人やほかのわんちゃんに慣れさせたりしておきましょう。
近所の方が迷惑に感じないような飼育法をしていくことは、わんちゃん好きを増やすことにも繋がっていきます。周囲が持つ動物への印象は飼い主さんの態度によっても変わっていくものなので、マナーやエチケットをしっかりと守り、わんちゃんの可愛さを正しく広めていける愛犬家になっていきましょう。
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【参考】
※ 『室内飼いの飼い方・しつけ方』(矢崎潤/西東社)
【画像】
※ MitchyPQ, l i g h t p o e t/Shutterstock
※ Kazuhiro Konta/PIXTA
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