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犬が「おしり」を嗅ぐのはなぜ?その理由と嗅覚のおもしろ雑学

獣医師
北森隆士

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犬が「おしり」を嗅ぐのはなぜ?その理由と嗅覚のおもしろ雑学

犬を飼い始めて子どもがまず笑うのが、散歩などで犬同士がおしりを嗅ぎ合う行動ですよね。“なぜ犬がおしりを嗅ぐのか?”その理由から、嗅覚に関する面白いお話をご紹介します。

■おしりを嗅ぐ理由

犬が「おしり」を嗅ぐのはなぜ?その理由と嗅覚のおもしろ雑学
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動物が互いを認識する方法には、主に、視覚、嗅覚、聴覚の3つがあります。人は認識の80%を視覚に頼ると言われていますが、犬は嗅覚を利用します。聴覚を利用する有名な動物は、イルカです(※1)。

犬のおしりには肛門腺があります。そこからの分泌物は、犬によってにおいが違い、健康状態や年齢よっても変わるそうです。つまり犬はおしりを嗅ぐことによって、においで互いを認識し合い、コミュニケーションのベースにします。

■なぜ犬は嗅覚を利用するのか

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犬は人と違い、視覚が発達していないからです(視力が悪く色盲)。ちなみにイルカは、嗅覚がまったくないので、聴覚にたよります(※1)。

■犬は左右の鼻で嗅ぐものが違う?

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左の鼻の穴からのにおい情報は、左脳につながりポジティブな思考を、右は危険回避などをつかさどる右脳につながります。イタリアのグループによって、かかりつけの獣医師の汗やアドレナリン(興奮時のホルモン)は右、ドックフードや雌犬の分泌物は左で嗅ぎ分ける行動が報告されました(※2・3)。左右での嗅ぎ分けは、別の報告もあります。

■犬の嗅覚は人の感情も分かる?

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人に幸せな映画と恐怖映画を鑑賞させて、汗を収集して犬に嗅がせるという実験が行われました。その結果、恐怖映画のサンプルを嗅がせた犬に、心拍数が上がる、鼻を舐める、体を掻くなどのストレス行動がでました。犬は人の感情のホルモンを嗅ぎ分けている可能性があります(※4)。

■犬の嗅覚はどの程度すごいのか?

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嗅覚の能力には、嗅ぎ分けられる物質の種類と感度があります。種類は嗅覚受容体(遺伝子)の数、感度は嗅神径細胞数に依存します。受容体数は人が約400個、犬が約800個です。実際には、ある物質が様々な受容体にくっつく、くっつかないで決まるので、人は2の400乗個の物質の嗅ぎ分けが可能です。

しかし、犬も同様の計算ですから、あまり差はありません。嗅神径細胞数は人が500万個、犬が2億個なので、感度の差はあると思われます。

犬の嗅覚の感度は人の1億倍という報告があります。酪酸を用いた、1953年の有名な実験です。しかし、同様の物資での追試では100倍という報告もあり、実はよくわかっていません(※1)。

実際には物質によって得意、不得意があります。犬は汗や尿の臭いを感知する感度は高く、果物のにおいは苦手です。人はチョコレートのにおいを警察犬のように追えたり、ワインの嗅ぎ分けが得意だったりします。最近では人も訓練次第で、特定の物質に対して犬並みの感度になる、という報告もあります(※1・5)。

■おしりを嗅いで臭くないの?

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「鼻が良い犬は、おしりのにおいを嗅いで臭くないの」という質問をよく受けます。飼い主さんは、ウンチ(が付いている)の臭いのことを言っているのだと思います。

しかし、ウンチのにおいが臭いというのは文化的なものです。2歳前後の人の赤ちゃんは、ウンチの臭いをまったく気にしません。また犬の仲間は、野生下では栄養補給のために動物のウンチを食べます。ウンチの中に未消化の栄養分が豊富であることを知っているのです(※1・6)。

ですから、おそらく犬にとってのウンチのにおいは、食べ物を想起させるにおいと言えます。平安時代の日本ではこの性質を利用して、人糞処理に犬を用いていました(※7)。

ちなみにウンチのにおいを薄めていくと、甘い花のかおりになるそうです(※1)。

犬のおしりを嗅ぐ行動の意味から、嗅覚に関する雑学的なことを紹介しました。そういえば、犬型ロボットとのファーストコンタクトでも、犬はおしりを嗅ぐそうです(※8)。いずれにせよ、The dog nose knows everything(犬の鼻はすべてを知っている)ですね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 新村芳人(2018)『嗅覚はどう進化してきたか』(岩波科学ライブラリー)岩波書店.

※2 Marcello S, et al. (2011). Sniffing with the right nostril:lateralization of response to odour stimuli by dogs. Animal Behaviour, 82, 399-404.

※3 Siniscalchi M, et al. (2016). The dog nose “Knows” fear. Behav Brain Res, 304-341, PMID 26876141.

※4 D’Aniello B, et al. (2018). Interspecies transmission of emotional information iachemosignals: from humans to dogs. Anim Cogn, 21, 67-78, PMID28988316.

※5 McGann JP. (2017). Poor human olfaction is a19th-century myth. Science 356, eaam7263, PMID28495701.

※6 ステーブン・ブディアンスキー(2004)『犬の科学』築地書館.

※7 谷口研語(2000)『犬の日本史』PHP新書.

※8 哺乳類動物学者 今泉忠明先生 監修。世界初、犬型ロボット*と犬の共生の可能性を探る実験

【画像】

※ iofoto, MitchyPQ, PardoY, Malivan_Iuliia, Sundays Photography, Maryna Vechirka, Jakeunsted / Shutterstock

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