※2020年5月28日情報更新
しつけが上手な飼い主さんは、愛犬に分かりやすい"褒め方”と"叱り方”をしている方が多いと、獣医師の仕事を介して感じることがあります。特に、叱ることは褒めることよりも難しいもの。なぜならば、叱り方はわんちゃんの性格や、叱らなければいけないシーンでさまざまなやり方があるからです。
今回は筆者が考える、わんちゃんに伝わりやすい上手な叱り方をご紹介したいと思います。
■叱ることの意味と効果的な叱り方
わんちゃんを迎えたら、人の社会で暮らす上でのマナーを教えていく必要があります。わんちゃんが"人が望む行動”をしたら、褒めてその行動を強化・定着させていきます。"望まない行動”をしてしまったら、「それは違っているよ」ということを、その行動を始めた瞬間にわんちゃんに伝えます。
この行為が叱る行為に当たります。叱った際にわんちゃんが誤って行なった行動を遮断できなければ、叱る意味がありません。効果的な叱り方はさまざまなものがあります。
無視をする
お悩みの問題がまだ浅い、たとえば子犬などの困った行動を辞めさせるために行う方法です。飼い主さんに向かって要求吠えをするわんちゃんがいた場合(例えばケージから出してほしい、抱っこしてほしいなど)、飼い主さんに吠えた際にわんちゃんを見ない・触れない・話しかけないということを1セットにして、わんちゃんが吠えても要求が通らないことを伝えていきます。
言葉で叱る
間違った行動をした瞬間に「ダメ」「NO」など、短い大きな声ではっきりと叱ります。素直なわんちゃんでしたら、この叱りの声に驚いて誤った行動をしなくなります。性格が大胆な子や頑固な子は、言葉で叱っても効果がないことがあります。この場合、罰を使って叱ることが必要な場合もあります。
直接的な方法を使って叱る
飼い主さん自身がわんちゃんに行為を辞めさせる方法です。
たとえば、わんちゃんが飼い主さんに遊び噛みをしてきたとします。言葉で叱っても全く効果がない場合、茶缶などの固い缶にコインを数十枚入れて、噛んできたら缶の音でびっくりさせて遊び噛みを遮断させ、遊び噛みを消去する、などの方法が考えられます。
間接的な方法を使って叱る
飼い主さんが直接行為を辞めさせるのではなく、道具などを活用して行為を辞めさせる方法です。
たとえば、外の物音を敏感に感じて縄張り意識や警戒心からかなりの頻度で吠えてしまうわんちゃんがいたとします。このわんちゃんに、首輪タイプの吠え防止ができる装置をつけます。わんちゃんが吠えると自動的に首輪が作動し、超音波や振動がしたり、においのついたスプレーが噴射されたりして、吠えをタイミングよく制します。
このようなツールを使用する際には、この刺激に対してわんちゃんが極度におびえ過ぎていないか確認をして使ってください。過度におびえてしまう子には使用できません。刺激によってびっくりして吠えをやめる子に適切な道具です。
■やってはいけない叱り方
どのような性格の子でも、またどのようなお悩みの内容でも、以下の叱り方はおすすめできません。このような叱り方をすると、トラウマや恐怖心を植え付けてしまったり、飼い主さんとの信頼関係を壊してしまったりといった副作用が生じる可能性があるからです。
また、叱るときは必ず「なぜうちの子はこのような行動をするのか?」を考えてから叱ってください。特に"不安”という感情が関与しているわんちゃんの行動は、叱ってしまうと悪化してしまうことがあるように感じます。
・たたく、たたくふりをする
・マズルを強く握る
・わんちゃんを仰向けにして押さえつける
・首を掴む
・過度にチョークチェーンやスパイクチェーンを用いて叱る
現在では、「陽性強化」といって褒めてわんちゃんにしつけをいれることが主流になってきています。ただし、褒める行為だけではわんちゃんは何をしたらいけないかを学ぶことはできませんので、叱るという行為も必要と考えます。
叱る行為は、わんちゃんにトラウマや恐怖心を与えない行い方を選びましょう。目標は、わんちゃんを子犬から迎える場合、生後1歳になるまでに家庭や人と暮らす上でのルールやマナーを分かりやすく教えます。そして、1歳を過ぎるころには叱らなくていい状態が作れるようになるとベストだと筆者は感じます。
もし飼い主さんに対して、わんちゃんが本気で攻撃的になってしまう場合、叱ることは逆効果になります。行動治療に長けたトレーナーさんや獣医師にアドバイスをもらい改善させていきましょう。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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