犬の性格ってバラエティーに富んでいますよね。元気な子もいれば、落ち着いている子もいます。甘えん坊な子もいれば、臆病な子だっています。
2019年2月、米国ミシガン州立大学の社会心理学者チョピク氏らが、犬の性格に関する研究を発表しました。1,681頭の犬とその飼い主さんを対象に、年齢による犬の性格の違いや、飼い主さんの性格と飼い犬の性格の関連性について調べています。
そこで今回は、獣医師である吉本翔先生に、この研究をもとに犬の性格について解説していただきました。
■人と犬の性格を表す「5つの要素」
みなさんは人の性格をどのように捉えていますか? 明るい性格の人、好奇心が強い人、心配性の人など、いろいろな性格の人がいると思います。
人の性格を特徴づける一つの考え方として、心理学者ルイス・ゴールドバーグ氏が提唱した”ビッグファイブ”という考え方があります。このビッグファイブの考え方によると、人間の性格は、大きく分けると5つの要素(外向性、協調性、誠実性、開放性、ネガティブな感情性)から成り立っているとされている論理です。
一方、行動学者のザジ・トッド氏によると犬の性格についても5つの要素で表すことができるそうです。その要素とは、活動性(興奮性)、訓練への反応性、人への攻撃性、動物への攻撃性、恐怖心の5つ。人のビッグファイブとは異なりますが、外向性と活動性、ネガティブな感情性と恐怖心など、比較的近い意味合いを持つものもあるようです。
■犬は年齢で性格が変わるのはホント?
人は歳を重ねるにつれて、しばしば性格が変わったのではと思われるときがあります。例えば、若い時は活発的で、大人になるにつれ落ち着いてくる、なんてことはないでしょうか? 犬も年齢に応じて性格は変化していくと考えられています。ここでは、5つの要素に分けて、年齢ごとの性格のちがいや性格に影響を及ぼす因子についての要点を述べていきます。
(1)活動性(興奮性)
・若い犬は、活動性(興奮性)が高い。
・しつけ教室に通った犬、および飼い主さんによるしつけを受けた犬は、活動性(興奮性)が高い。
(2)訓練への反応性
・中高齢(6~8歳)の犬、および飼い主さんによるしつけを受けた犬は、若齢の犬よりも訓練への反応性が高い。
(3)人への攻撃性
・中高齢(6~8歳)の犬は、人に対する攻撃性が高い。
・メス犬、純血種、および去勢された犬は、人に対する攻撃性が低い。
(4)動物への攻撃性
・高齢(8歳以上)の犬、純血種および去勢された犬は、動物への攻撃性が低い。
(5)恐怖心
・恐怖心には、年齢間の違いはみられない。
■興奮しがちな犬は不健康?
犬の性格と健康状態の関係性はあまり強くないようです。
ちなみに、昔は活動性(興奮性)が高かった犬が、大人しくなってきた場合には、何かしらの疾患が隠れている可能性も考えられます。活動性の変化は病気を発見する手がかりになりますので、普段から愛犬の様子を気にしてみてくださいね。
■「犬は飼い主に似る」は証明された!?
チョピク氏らの研究から明らかになったことは、外向性の高い飼い主さんは、飼い犬の活動性(興奮性)が高いと評価し、ネガティブな感情性を持つ飼い主さんは、飼い犬の恐怖心が高いと評価したそうです。また、誠実な飼い主さんは、飼い犬の人や動物への攻撃性が低いと評価していたそうです。
本研究は、あくまでも飼い主さんによる判断ですので、先入観が入っていた可能性があります。しかし過去の研究からも、飼い主さんによる犬の性格の評価と飼い主さん以外の人による犬の性格の評価は、類似している傾向にあるとする研究が多く存在するようです。以上をふまえると、飼い主さんとその飼い犬の性格には関連性が強いことが示唆されます。
また、犬と飼い主さんの性格に関連性がある理由について、チョピク氏らは、「飼い主さんは自分に合った性格を持つ犬を飼い犬として受け入れる傾向にあること」や「飼育していく中で飼い主さんの性格が、飼い犬に影響を与えてくる」とも述べていました。
まだまだ犬の性格について分からないことも多いですが、今後も犬の性格に関する研究が盛んに行われていくと良いですね!
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
【関連記事】
※ 「ノミ」の被害はたくさんある!? 愛犬を守るために知識を深めよう
※ 硬さ・におい・色・回数…「犬のうんちで見る」簡単健康チェック法
※ くしゃみや鼻水が増えたら要注意!犬の「花粉症」や似た症状について解説
※ 手術は本当に必要?獣医師が教える去勢のメリットとデメリット
【参考】
※ William J. Chopik, & Jonathan R. Weaver(2019). Old dog, new tricks Age differences in dog personality traits, associations with human personality traits, and links to important outcomes.
【画像】
※ Monika Chodak,Sinseeho,corners74,Thanapum Onto,Yuliya Evstratenko / Shutterstock
戻る
みんなのコメント