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【獣医師執筆】接種時期はどうしたら?猫のワクチンに関する正しい知識

高橋身和

獣医師
高橋身和

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【獣医師執筆】接種時期はどうしたら?猫のワクチンに関する正しい知識

ワクチンを打つことは、ねこちゃんの健康を守るためにとても重要です。しかし、世の中にはいろいろな情報があり、実際どのようなワクチンをどの間隔で打つべきか、迷われる方も多いと思います。たとえば、ねこちゃんのワクチンを打つときに、その子の健康状態・生活環境によっても打つべきワクチンが変わってきます。

■必ず打たなければいけないワクチンは?

接種時期はどうしたら?猫のワクチンに関する正しい知識
出典:https://www.shutterstock.com/

必ず打たなければいけないワクチンはコアワクチンと呼ばれ、どんな生活環境でも全ての猫に打つべきとされているワクチンです。このワクチンが対象とする病原体は世界中に存在し、かかると命に関わる感染症の原因になり得ます。

これに対して、ノンコアワクチンは感染のリスクのある動物にだけ打つことがすすめられています。なので、生活環境や体調等に応じて接種するかどうかを判断する必要があります。

猫のコアワクチン

・猫汎白血球減少症ウイルス

・猫ヘルペスウイルス1

・猫カリシウイルス

※猫ヘルペスウイルス1型・猫カリシウイルスワクチンについては、感染を完全防御する事ができない可能性がありますが、ワクチン接種をしていることで感染した場合、軽症で済む可能性が高いので接種が推奨されています。

猫のノンコアワクチン

・猫白血病ウイルス

・クラミジア

・猫エイズウイルス など

屋外に出る猫、すなわち他の猫と外で接触する可能性がある子には接種が推奨されています。特に、ケンカをする猫には猫エイズウイルスのワクチン接種がすすめられます。

※猫エイズ・白血病ウイルスワクチンに関しては、必ず接種前に感染していないか調べる血液検査が推奨されています。感染が認められる場合、接種は推奨されません。

■ワクチンを打つべきタイミングは?

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ワクチン接種時期は子猫か成猫かで異なります。その理由は、母猫から貰う免疫力の持続期間にあります。この免疫力が子猫にあるうちはワクチンを接種しても十分な効果はありませんが、永久に続くものではないので、なくなると病気に感染してしまいます。

また、母猫からもらった免疫力の持続期間は個体差が大きく、兄弟猫の間でも大きなばらつきがある事があります。この免疫力は、生後8~12週齢までにワクチンが作用できるレベルまで下がると言われていますが、12週齢を過ぎてもワクチンに反応できない子や、20週齢を過ぎても反応できない子もいるという報告もあります。

この時期については、一般的な診察で確実な予想をすることはできません。そのため、子猫のワクチン接種は母猫から貰った免疫力がいつ無くなっても病気を予防できるように複数回ワクチンを接種し、免疫力がなくなって病気にかかりやすい時期を絶対に作らないということが重要だと、筆者は考えます。 

■子猫のワクチン接種間隔

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コアワクチンの場合

世界小動物獣医師会のワクチン接種ガイドラインでは、生後6~8週齢で1回目のワクチンを接種し、16週齢またはそれ以降までに2~4週間隔で接種することが推奨されています。特に、16週齢以降の接種が重要です。

それ以降の再接種に関しては、免疫力を強化する意味もありますが、それまでのワクチン接種に十分に反応せず、免疫力がつかなかった子に対して確実に免疫力をつけさせるという意味があります。特に、猫は母猫由来の免疫力が落ちるまでかなり時間のかかる子もいるので、免疫力のなくなる時期を作らないために、世界小動物獣医師会は、確実な感染症予防を目的として半年~1年の間でなるべく早い時期に再接種することを推奨しています。

ノンコアワクチンの場合

・猫白血病ウイルス・・・8週齢で開始し、3~4週間後に追加接種。1年後に再接種推奨。

・クラミジア・・・9週齢で開始し、2~4週間後に追加接種。以後1年ごとの接種を推奨。

・猫エイズウイルス・・・6~8週齢で開始し、2~3週毎に3回接種。1年後に再接種推奨

 

■成猫のワクチン接種間隔

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猫期のワクチンプログラムが完了している場合(半年~1年の再接種まで)

コアワクチン

・猫汎白血球減少症ウイルス・・・3年以上ごとの接種を推奨。

・猫ヘルペスウイルス1

・猫カリシウイルス

※猫ヘルペスウイルス1型・猫カリシウイルスワクチンについては、生活環境の違いによって接種間隔が異なります。たとえば、完全室内飼い・ペットホテルの利用がない場合は、3年以上ごとの接種を推奨。屋外に行くもしくは屋外に行く猫と同居している・ペットホテルを定期的に利用している場合、1年ごとの追加接種が推奨。特に、接種後3ヶ月以内が最も免疫力が強化されているので、かかりつけの獣医師さんと相談し、ペットホテルの利用時期に併せての接種が推奨されます。

ノンコアワクチン

・猫白血病ウイルス・・・2~3年以上の間隔で追加接種を推奨。

・クラミジア・・・屋外で飼っている場合など、感染のリスクがある限り1年ごとの追加接種を推奨。

・猫エイズウイルス・・・1年ごとの追加接種を推奨。

成猫になってから初めてワクチンを打つ、また今までのワクチン接種歴が不明な場合

コアワクチン

・猫汎白血球減少症ウイルス・・・ワクチンの種類によっては1回の接種で以降3年以上ごとの接種も可能。種類によって異なるのでかかりつけの獣医師さんに相談しましょう。

・猫ヘルペスウイルス1型・・・2~4週間の間隔での2回接種を推奨。

・猫カリシウイルス・・・2~4週間の間隔での2回接種を推奨。

ノンコアワクチン

・猫白血病ウイルス・・・3~4週間隔で2回接種を推奨。

・クラミジア・・・2~4週間隔で2回接種を推奨。

・猫エイズウイルス・・・2~3週間隔で3回接種を推奨。

 

■猫のワクチン接種で気を付けることは?

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猫の場合、注射を打ったところに悪性腫瘍が発生するケースが稀にあることが知られています。

もちろんその発生率、およびワクチンの感染症防御率のリスクとメリットを比べたうえで、現在推奨されるワクチンの種類は決められています。

万一発生したとき摘出することを考慮し、肩甲骨間への接種は推奨されていないようです。現在は、胸部側面・腹部側面・足のなるべく体から離れた場所等が推奨されています。猫の性格によっては接種が難しい場所もありますので、この部位に限らず少なくとも肩甲骨間の接種を避け、毎年毎回違う場所に接種することがリスクを下げる為に重要です。 

また猫エイズ・白血病に感染してしまっている子には接種が推奨されない場合もありますので、そのような場合は主治医と相談しましょう。

  

どのワクチンをどのタイミングで打つかはその猫の体調、生活環境によっても大きく左右されますので、主治医とよく相談し、感染症から身を守るために接種するワクチンを上手に活用して愛猫を病気のリスクから守ってあげましょう。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※ 犬と猫のワクチネーションガイドライン - 世界小動物獣医師協会 

【画像】

※ KDdesignphoto,Inna Astakhova,ANURAK PONGPATIMET,Massimo Cattaneo,Lubava,Prostock-studio / Shutterstock

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