犬にも水分が不足すると起こる”脱水症”が存在します。見た目にはなかなか見えづらいことや、言葉を話すことができないだけに、隠れ脱水も多いそう……。
そして、夏の暑い時期はもちろんですが、冬の時期にも脱水に陥りやすいため注意が必要です。そこで今回は、冬の脱水症のわかりづらい症状や予防法について、獣医師の佐藤貴紀先生に解説していただきました!
■そもそも脱水症とは
体の体液は約6割を占めるとされている血液、リンパ液などから構成されています。犬の場合、ほぼ呼吸からですが体外に出て行く水分量と塩分量、食事や飲水から体内に補給される水分量と塩分量は、ほぼ同じくらいのバランスを保つことで正常と言えます。
しかし、脱水症の場合は何かしらの原因で、体内に必要な水分量と塩分量が十分でなくなることで陥ることがあります。
■脱水症の見分け方
下記のようにいくつかの方法を用いて、筆者は診断しています。
・皮膚の弾力性
背中や腰などたるみのある部分の皮膚を掴み、上に持ち上げます。正常であれば1.5秒など、短時間で戻ります。筆者は、2秒以上かかる場合は脱水と診断しています。
しかし、皮膚が硬い、太っているなどによって正確な判断ができないことがあります。
・くぼんだ目
目が普通は少し出ていることが多いのですが、眼球が通常より陥没し、空間ができている場合などは脱水と判断しています。
・粘膜の乾燥
口腔内の粘膜が乾燥しているかどうかを判断します。
・体重の変化
水分が減ると明らかに体重が減少します。
・血液検査
電解質や血球など様々な項目で脱水を起こしていないか判断します。
■脱水症の原因とは?
脱水症の原因としは、下位のような事例が考えられます。
・水分量の減少(食事量も)
犬の場合、冬になると飲水量が減少する傾向にあると言われています。また、高齢などの場合は特に水分の吸収率も悪く、さらには筋肉量の減少などからも、水分を保持しにくいと言われており、体内の水分量が減ってしまう原因となります。
そして、脱水の代表的な疾患といえば”熱中症”です。熱中症は排出される水分量が多く、体内の水分が足りてない状態に陥ります。
・持病によるもの
特に腎臓病があると、体内の水分量や塩分量がコントロールできなくなるため脱水症状となるリスクが高くなります。高齢で陥りやすい疾患であり、死亡原因の上位に位置します。
また、糖尿病は尿の排泄が多くなり、体内の水分量が不足することもあります。
・高齢の場合
内臓の働きの低下に加え、隠れている病気なども多いことから、脱水に陥りやすくなります。
・服用している薬剤の影響
利尿剤が代表的ではありますが、これは尿の排泄を促し、あえて体から水分を抜くものです。他にも、薬剤によっては尿量が増えたりすることがあります。
■具体的な症状について
脱水が起きた場合、症状の出方には個体差があります。一概に軽度から重度までの症状が順序通り出るとは限りません。ここに掲載する内容は、あくまでも一般的な症状としてご覧ください。
・軽度
皮膚や肉球が乾燥している場合、口の中が乾燥しネバネバしている状態になることがあります。血流が悪くなり、他の組織にも悪影響を与え始めます。少しぼーっとする症状が現れるとも言われています。
血液検査などで診断することができます。
・中等度
体重の減少、トイレの回数の減少、吐き気などを催します。元気が無くなり、無気力状態になっていきます。
・重度
反応がなくなり、意識がもうろうとしてきます。ひどい場合は、意識消失、痙攣などの症状まで移行し、命の危険性を伴います。
■やっておきたい予防とは?
・原因を探る
持病により、原因が病気にあればまずは治療することが先決です。脱水が2次的に起きているのであれば、持病をなんとか維持することでコントロールできるでしょう。
・水分と食事をしっかりとる
高齢の場合には内臓機能の低下も考えらえます。シニア犬に必要な栄養などが不可欠かもしれません。若いころと同じ食事を与えるのではなく、今のステージに必要なフードを与えましょう。
また、自分で水を飲みたがらなければ、水に味をつけて与えるなど工夫が必要です。その子に合った水分量を知っておく必要もあります。
・部屋の温度や加湿をしっかり行う
部屋が乾燥していることで、水分量が損なわれます。温度は24~26度、湿度は50~60%を維持するようにしましょう。体感温度には個体差があり、暑がるようであれば工夫してあげてください。
脱水は上述した通り、なかなかわかりにくい状態の一つです。日々の生活で、食事や飲水量の減少などが見られた場合は注意しましょう。早期発見のためにも、動物病院を上手に活用しましょうね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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