ノミの被害は犬にも及んでいます。放っておくとさらに被害が増えるかもしれません……。そこで今回は、ノミの生体や被害について、獣医師の佐藤貴紀先生に解説いただきました!
■ノミの生体
体長は2~4mm。色は赤茶色です。好適温度は18~27℃、好適湿度は75~85%と言われています。成虫、卵、幼虫、さなぎ、そして成虫と、複雑な成長過程を繰り返し、しかもそれぞれの段階が殺虫剤に対して異なった抵抗性を示します。
動物に寄生したノミの成虫は、ほとんど動物の体から離れず、吸血と一日当たり20~50個という産卵を繰り返し、1~2ヶ月くらい生存して産卵することが可能と言われています。吸血なしでも1~3週間は生存可能です。
■ノミの寄生・繁殖について
(1)犬や猫に寄生したノミはそこで血を吸い、交接をして卵を産みます。
(2)卵はそのあとすぐに動物のまわりに落下し、数日程度で孵化し、幼虫になります。
(3)幼虫はノミ成虫の糞などを食べ、脱皮を繰り返し、繭を作ってさなぎになります。
(4)さなぎは繭の中で成虫の形になり、二酸化炭素や熱、近くを通過する動物の物理的な圧力や振動によって孵化し、成虫となり再び動物に寄生します。
■ノミが引き起こす影響は?
動物がノミに刺されると、激しいかゆみによる精神的ストレスを受けますが、それ以外にも重大な被害がたくさんあります。
(1)貧血
一匹一匹のノミが吸う血の量は少なくても、大量のノミの寄生を受けると、特に子犬や子猫では貧血を引き起こす危険性があります。
(2)細菌の二次感染
ノミに刺された箇所を犬や猫が掻きむしってできた傷に細菌が入り、化膿してしまうことがあります。
(3)瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ)
体長50cm以上になることもあるサナダムシ。サナダムシに寄生されたノミの成虫を犬や猫がグルーミングなどで食べてしまうことにより小腸に寄生し、下痢や嘔吐の原因になります。瓜の実に似た片節が、糞便や肛門の周辺に付着します。
(4)ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの被害の中ではこれが最も重要なものです。ノミによる吸血が繰り返されると、犬や猫がアレルギー状態となり、皮膚炎をおこすことがあります。一度アレルギーを引き起こすと、たとえノミの寄生が少数でも皮膚炎に悩まされ、激しいかゆみや湿しん、脱毛などがおこります。
また、最近ではアトピー性皮膚炎の動物がノミに刺されると、その症状が悪化すると言われています。
(5)人間への被害
ノミの被害は動物だけではなく、人間がノミに刺されると激しいかゆみがおこり、 ひどい場合はアレルギーになって水ぶくれのような状態になってしまいます。 同じようにサナダムシは、感染したノミが偶然に人の口に入ってしまうことで人にもうつります。
その他、人に被害をもたらすケースとして“猫ひっかき病”があります。この病気では、ノミが猫から猫へ媒介します。猫に症状は出ませんが、これに感染した猫にひっかかれたり咬まれたりすると、リンパ節が腫れて発熱や頭痛を起こしてしまいます。
■駆除&予防方法
薬剤やノミ取りシャンプーで犬の体を清潔に保ちましょう。市販で購入できるノミ取り首輪なども売っていますが、薬の成分が入っていません。筆者は、効果はほとんどないのではと考えています。
また、4月~11月が一般的な予防時期ですが、ノミは気温が13度以上あれば繁殖できます。気温を考えながら予防することが必要です。
ノミは予防することで未然に防ぐことができます。正しい知識を持ち、正しい予防に努めましょうね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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※ Milka_Z, svtdesign, Elayne Massaini, didesign021, MPH Photos / Shutterstock
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