最近ペットショップでよく見かける、いわゆる「ミックス犬」。純血種の良いとこどりをした可愛らしい特徴が人気となっているようですが、実はミックス犬を迎えることで思わぬトラブルが起こっていることも事実です。
そこで今回は、ミックス犬の特徴と注意点についてお伝えします。
■「ミックス犬」と「雑種」は違う?意味を間違えるととんでもないことに!
最近のペットショップやホームセンターで見かけるいわゆる「ミックス犬」。たとえば、片親がトイプードルでもう片親がチワワの「チワプー」というように、異なる純血種同士を交配させて生まれた犬がほとんどです。
その一方で、種類が違う純血種どうしを掛け合わせたのだから、もはや純血種ではなく「雑種」と呼ぶケースも見受けられます。
しかし、本来「雑種」というのは自然界の厳しい環境の中で生き残った者同士が交配し、それが子孫代々繰り返されているものとして定義されてきました。つまり、より自然環境に適応して長生きできるものが「雑種」として存在しています。
一方、近年日本で多く見られるミックス犬は、自然に交配したのではなく、人間の手によって人為的に交配されたものです。決して、自然環境に適応して生き残ったものではありません(人間も自然の一部だと考えることもできますが……)。
これらの結果、ひとつの考え方としてですが、自然の中で生き残ってきた雑種は直感的にも病気に強い感覚ですが、人間の手で作られたミックス犬には、病的な問題が多く潜んでいるケースも散見されているようです。
この違いを混同してしまい、実際にミックス犬と暮らす方がトラブルとなっていることもあるため、ミックス犬と本来の雑種の意味の違いをしっかりとご理解いただくことが重要だと感じています。
■注意したいミックス犬の隠れた病気
実際のトラブルの一例ですが、ペットショップでミックス犬を購入する際、店員さんから「雑種は病気に強いから飼いやすいですよ」説明を受けた方がいらっしゃいます。
その犬はパグとチワワのミックスだったのですが、一緒に暮らしているうちに、パグに多い呼吸器の病気や、チワワによく見られる関節の病気などが見つかり、飼い主の方は「雑種は丈夫って聞いていたのに……」と非常に落胆されていました。
このように、ミックス犬はそれぞれの純血種の両親から、容姿だけでなく、病気も受け継ぐことがあるため注意が必要です。もちろんミックス犬のすべてが必ず病気を発症しているわけではありません。健康で元気に過ごしているケースもたくさんあります。
もし、少しでも病気のリスクが少ないミックス犬を迎えたい場合は、それぞれの両親の血統を調べることが重要です。しかし、基本的にミックス犬は、血統書を作ることができませんので、現実的には両親の血統を調べ、病気の有無を確認することは困難です。ミックス犬と暮らす場合は、定期的な健康診断などで、病気の早期発見に努めましょう。
ただし、そもそも純血種を含め全ての「犬種」は、自然界の中で生まれたのではなく、人間の手で作り出されたものです。そのため、ミックス犬に限らず純血種にも犬種特有の病気というのが存在しています。そういった意味では、ミックス犬も健康を考慮した繁殖を続けていけば、遠い将来は犬種として確立されるのかもしれません。
■ミックス犬の魅力と最新の傾向
ではこのように、さまざまな問題を抱えているミックス犬が、日本で流行している理由はなんでしょうか? これは筆者の意見としては、間違いなく「かわいい」からだと思います。
純血種同士を掛け合わせ、それぞれの良いところを受け継ぐことで、純血種にはないかわいい特徴を持った犬が生まれることがあります。もちろん、人間と暮らす上で犬の大きな魅力の一つは「癒し」ですので、そういった容姿による癒し効果も確かにあり、一概にかわいさを求めて交配することがダメだとは言えません。
ただ、そのために犬の健康が犠牲になってしまう結果を引き起こすとすれば、個人的にはやはり大きな問題と考えざるを得ません。
また、そのようなミックス犬がいる一方で、盲導犬や介助犬として改良を試みられているミックス犬もいます。これら使役犬のほとんどは「レトリバー種」ですが、使役犬としての問題の一つに「抜け毛」があります。それを抜け毛の少ないプードルと交配することで、毛が抜けづらい使役犬を生み出そうとしているケースもあります。
ミックス犬は、人間による交配の歴史が浅く、残念ながら遺伝的な特徴に起因する病気など、さまざまな問題が発生しています。その特徴は魅力的ですが、まだまだ注意する点が多いことをしっかりと理解した上で暮らすことが重要です。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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