犬のチャームポイントのひとつとして、きらきらした"おめめ”が挙げられるのではないでしょうか。愛犬の可愛い眼差しに、思わずキュンとしちゃう人も多いはず。そんな愛犬の目をいつまでも大切にしたいというのは、飼い主さんの共通の願いですよね。
犬も人と同じように、白内障や緑内障などさまざまな眼疾患がしばしば問題となります。今回、ご紹介したいのは「角膜内皮ジストロフィー」という病気です。この名前を聞いたことがある飼い主さんは少ないと思いますが、愛犬の眼を白く混濁させてしまう辛い病気の一つです。
■角膜の構造と役割
犬の目の構造は、基本的に人の目の構造と同じです。角膜とは、眼球の一番前側にある膜のことで、常に透明に保たれています。角膜は、光を取り入れる窓の役割をし、さらに水晶体(カメラでいうレンズの役割)とともにピントを合わせる役割も持ちます。この角膜は、5層構造となっており、表層から角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮から構成されます。
■「角膜内皮ジストロフィー」って?
角膜内皮ジストロフィーとは、角膜の5層構造のうち、最も内層にある「角膜内皮」の病気です。角膜内皮の細胞の異常が起因となり、突発性かつ進行性の角膜浮腫が生じます。この病気には遺伝的な素因が指摘されており、ボストンテリア、チワワ、ダックスフンドが好発犬種であると報告されています。また、病気が発生する時期は中高齢以上であることが多いとされ、雄犬よりも雌犬で発生しやすいと言われています。
■角膜内皮ジストロフィーの症状
角膜ジストロフィーの犬における初期の症状は、角膜の浮腫(むくみ)です。角膜の浮腫は、ゆっくりと進行し、数ヶ月~数年かけて角膜全体へと広がります。
角膜ジストロフィーの犬の目は、やや青みを帯びた白色に混濁していることが特徴です。病気の初期段階では、左右非対称に混濁が見られることがありますが、進行していくと最終的には両目全体に混濁が広がります。
■角膜内皮ジストロフィーの治療法
角膜内皮ジストロフィーは根本的な治療が難しいため、一般的には緩和的な治療が施されます。本疾患に罹患した犬の多くは、角膜の混濁により視界が制限されている状態に留まっていますが、角膜潰瘍ができ病気が進行した場合には、抗生剤や抗浸透圧(5%塩化ナトリウム)の薬剤により局所的な治療を行います。持続的に水疱が形成されている場合や角膜潰瘍が治らない場合には、加熱角膜形成術と呼ばれる治療をすることもあります。
角膜内皮ジストロフィーを根本的に治療するためには、角膜内皮細胞の移植をしなければなりません。しかし、現状の獣医療ではドナーの問題や移植の難易度の点から、非常に難しい状況であると言えます。
今回は、角膜の構造についての簡単な説明から始まり、角膜内皮ジストロフィーについて解説しました。この病気は、犬の他の眼疾患と比べて発生が少ない病気ですので、必ずしも飼い主さんが知っておくべき病気ではないかもしれません。
ただし、愛犬の眼が混濁しているなと感じる場合には、この病気だけでなくその他の眼疾患の可能性もあります。愛犬の目に異常がある場合には、一度獣医師さんに診てもらってくださいね。
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【参考】
※ Kirk N. Gelatt, Brian C. Gilger, Thomas J. Kern(2013)Veterinary Ophthalmology: Two Volume Set, 5th Edition,:Wiley-Blackwell
【画像】
※ Irishasel,Masarik,Roomanald,SmileonBow,SOMKKU / Shutterstock
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