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【獣医師執筆】充血、目やに、涙やけ…目の病気じゃない可能性も!? 目の合併症の恐れがある病気とその仕組み

西原克明

獣医師
西原克明

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【獣医師執筆】充血、目やに、涙やけ…目の病気じゃない可能性も!? 目の合併症の恐れがある病気とその仕組み

目の病気と言えば、人や犬に関わらず、白内障や緑内障、結膜炎などさまざまなものがあります。その中でも人の白内障は、糖尿病など目以外の病気が原因で発症することが知られています。

では、犬も同じように、目以外の病気が原因で目の病気が引きこされることはあるのでしょうか? 今回は、目の合併症の恐れのある病気について解説します。

■病気の症状は「結果」、「原因」は別にあることも

充血、目やに、涙やけ…目の病気じゃない可能性も!? 目の合併症の恐れがある病気とその仕組み
出典:https://www.shutterstock.com/

一般論として、動物病院で行われる治療はほとんどが「対症療法」と呼ばれ、犬から痛みや苦しみを取り除くことを主目的とした治療を行っています。たとえば、犬が吐いているときには吐き気止め、かゆがっている時にはかゆみ止め、というような治療です。もちろん、これは原因を直接治療しているわけではありません。

しかし、飼い主さんの中には、対症療法を経験すると「吐き気止めで治るんだから、胃が原因だね」あるいは「皮膚を痒がっているんだから、皮膚に原因がある」と考える方がいらっしゃいます。そうすると、目に関しても、目やにが出ていたり、目が充血していたりすると、「目に原因がある」と考える方が多いのですが、病気の症状というのは「結果」であって、「原因」ではありません。

先ほどの「吐き気」の場合では、胃腸だけでなく、肝臓や腎臓に病気があっても吐くことはあります。このように、病気の原因が、その症状を示している臓器ではないことも多々あるのです。

■犬の目の病気と全身の関係について

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目の場合も例外ではありません。まず目の症状とは、角膜炎や白内障あるいは緑内障といった眼球自体に症状が見られる病気に加えて、眼瞼の結膜炎など目の周囲に症状が見られるものも含まれます。

これらの症状は、外傷や奇形など、目自体に原因があることがほとんどですが、中には全身的な病気、あるいは他の臓器が原因で、目に症状が現れる場合もあるため注意が必要です。特に、老齢性の白内障などゆっくりと進行する病気では、原因が一つではなく複数のこともありますし、眼瞼下垂(まぶたが下がってしまう症状)などが見られる病気では、全身的な病気の一つの症状として目に症状が見られます。

したがって、目に症状が見られる場合でも、原因を調べるためには、目の検査だけでなく全身的な検査が必要になることがあります。

■気をつけたい目の合併症を引き起こす主な病気について

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・糖尿病

糖尿病は、インスリンの分泌が正常になされないなどの理由から、エネルギーの元となるグルコースが高い状態で血液や尿に出ている状態です。糖尿病が進行すると、糖代謝の異常が目にも影響を与え、白内障を続発することがあります。

・アレルギー

アレルギーによって、目の周りの皮膚が炎症を起こしたり、あるいは涙が多くなって涙やけを引き起こしたりすることがあります。

・感染症

目の細菌感染以外にも、ジステンパーウイルスや伝染性肝炎ウイルスなど全身的に症状を引き起こす感染症でも、結膜炎や網膜炎などの症状が見られるようになります。

・ホルネル症候群

神経の病気ですが、瞬膜(第三眼瞼)の突出や眼瞼下垂(目が垂れ下がっているように見える)、眼球陥凹(眼球が落ちくぼみ、小さくなったように見える)といった目の症状が見られます。

・自己免疫疾患

原因不明の、自身の免疫細胞が自分の組織に反応してしまう病気です。いわゆるドライアイと呼ばれる乾性角膜炎では、自己免疫性疾患が関係していることもあると考えられています。

・三叉神経障害

脳神経の一つである三叉神経が障害を受けると、ドライアイや角膜炎などを発症することがあります。

・甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの分泌低下によって、さまざまな症状が見られますが、角結膜炎を引き起こしたり、上記で解説したホルネル症候群のリスク要因になったりすることがあります。

・腫瘍(ガン)

悪性腫瘍の中には、目に転移したり、ぶどう膜炎など炎症を引き起こしたりと、さまざまな症状を合併するものもあります。

・脂質代謝異常

中性脂肪やコレステロールなど脂質成分の代謝異常によって、ぶどう膜炎などの炎症が引き起こされる場合があります。

・高血圧

犬の場合、高血圧によって硝子体出血や網膜剥離など眼球内の症状が見られることがあります。

・栄養の異常

ビタミンA欠乏による視神経炎など、栄養の異常によってもさまざまな目の症状が見られるようになります。

■目のケアは常に行いましょう

充血、目やに、涙やけ…目の病気じゃない可能性も!? 目の合併症の恐れがある病気とその仕組み
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このように目の病気は、目に症状が出ている場合でも、目以外のさまざまな原因が関係しています。もちろん、人と同じように犬にとっても、目は非常に重要な感覚器です。目を守るためにも、日ごろから愛犬の健康チェックを行い、なるべく早く異常を見つけてあげることが重要です。

また、最近では目のケアに役立つサプリメントもありますが、これもメカニズムとしては目だけでなく、全身のケアにも役立つと考えられますので、そういったものを取り入れることもおすすめします。

犬の目の症状は、目やにやかゆみなど、比較的多く見られますが、その原因はさまざまで、場合によっては全身の病気をチェックする必要があります。したがって、目の症状とはいえ、必要に応じて全身の検査や治療を考えるようにすること、また目の病気予防のためには、日ごろから全身の健康チェックをしてあげるようにしましょう。 

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※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※ 余戸拓也(2014)『カラーアトラス よくみる眼科疾患58』インターズー

【画像】

※ Redrock Photography,Pixel-Shot,Kzenon,MAD_Production,kamontad999 / Shutterstock

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