先回、診察室で相談の多い、目が赤くなるケース"充血だけじゃない!犬の「目が赤い」ときに考えられる病気を症例写真と共に解説”について解説しました。今回は、その次によく見られる、目が白くなる疾患についてお話します。
※ 記事には患部の写真を含むため
目次
■正常時の目はどうなっている?
一般的に、目が白くなる箇所は、角膜(Cornea)、水晶体(Lens)、前眼房(Anterior Chamber)の3箇所です。図は人の目の図ですが、犬猫と仕組みは変わりません。
写真は猫の目ですが、外の透明な膜が角膜、黒い部分が瞳孔(Pupil)で中に水晶体があります。黄色い部分が虹彩(Iris)です。角膜と、瞳孔・虹彩部の隙間が、前眼房です。
■まずはこの病気を疑って!よく見られる症例4つ
目が白くなる箇所である角膜・水晶体・前眼房のなかで、最も多く見られるのが角膜です。角膜は、障害を受けると白く濁りますが、その原因はさまざまです。
(1)乾燥性角膜炎
最もよく起こりうるのは、乾燥性角結膜炎などの炎症です。いわゆるドライアイで、悪化すると角膜が薄く白くなります。
(2)慢性の刺激・はん痕
特に短頭種のように、目が出ている犬の角膜中央部には、他の犬種に比べて刺激を受けやすいと考えられます。しばしば慢性の刺激や乾燥で、角膜の変性が起こることではん痕化して白くなります。
(3)外傷
目が受けた障害の程度が強いと、一気に角膜が白くなります。中央部のくぼみは外傷によるものです。
慢性的に目周辺の毛による刺激を受けることで、角膜が白くなります。写真の緑色の液体は、傷を染める特殊な色素になります。
(4)角膜穿孔
尖ったもので目が突かれたことにより、角膜の一部が白く濁ってしまっています。
■犬によく発症「両目」が白い場合
両目が白くなる場合は、角膜に由来することが多いです。角膜由来の病気を下記にて説明していきます。
・角膜ジストロフィー
両目に見られる限局性の疾患です。犬種特異的に、なかでも若い犬でよく見られます。無症候のことが多いので気付きにくいです。
・角膜内皮ジストロフィー
両目全体に見られる疾患で、犬種特異的に、なかでも中高齢期以降の犬でよく見られます。現在のところ、明確な治療法はありません。外傷など、刺激を与えることで悪化させないように注意しましょう。
・角膜変性症
高齢期の犬の内科的な疾患(甲状腺機能低下症、高脂血症、クッシング症候群、高カルシウム血症など)に併発して見られる、角膜の障害です。こちらの症例写真は、甲状腺機能低下症を伴う犬の角膜の潰瘍です。
■「目の中央」が白い場合
水晶体は目の中央に位置し、ピントを合わせるレンズの役割をしています。目の中央が白くなると、水晶体の疾患である可能性が高いです。
・白内障
白内障は水晶体(黒目の部分)が白く濁る疾患です。進行すると視覚を失います。当院では、手術が可能な状態であれば専門医による手術をすることをおすすめしています。放置すると、ぶどう膜炎を起こしたり、緑内障の原因となったりします。手術をしない場合には、抗炎症薬などの投薬治療がなされることとなります。
(1)犬の成熟白内障
白濁が、水晶体全体を覆っています。極めて進行した白内障で、視力回復を望むのは難しい場合がほとんどであると考えられます。
(2)猫の白内障(糖尿病罹患)
糖尿病を羅患している猫の症例です。白内障が進行し、水晶体がほとんど濁っています。ここまでになると光しか感じない失明状態で、視力回復は望めない可能性が高いです。
(3)猫の未熟白内障
白内障が進行し始め、水晶体に白濁がかかり視界を遮ってきた状況です。視界がかすみ始めていると考えられます。
・核硬化症
水晶体(黒目)が、全体的に均一に青白くなり、水晶体の成分の密度が上がる現象です。白内障とは違い、視覚は保たれるので治療対象ではありません。6歳以上の多くの犬で見られ(※)、両眼性で、加齢とともに進行します。犬猫ともに見られ、白内障が併発することもあります。
■「目のあちこち」に白い沈殿物が溜まっている場合
角膜の後ろ側にある前眼房が白くなると、目のあちこちが白く見えることがあります。原因としては、下記の2つが考えられます。
・原因1:炎症産物
ぶどう膜炎で見られます。ぶどう膜炎は、感染症、免疫病、白内障など様々なケースで起こります。ぶどう膜炎は失明の原因にもなるので、早期発見が重要です。炎症産物が前眼房の下に沈殿していることもあります。
写真の症例では、黒目の下側にある三日月のような形の白い塊が沈殿物です。緑色の液体は、傷を染める特殊な色素になります。
・原因2:脂肪成分
糖尿病や高脂血症で見られます。稀に血中の脂肪成分が角膜と瞳孔・虹彩部の隙間にある前眼房に混入し、全体的に白く濁ったり、血液も混ざったりすることがあります。
■目が飛び出たようになる特異な疾患「円錐角膜」
角膜が、円錐状に突出する疾患です。専門医による診断・治療が必要なので、主治医に直ちに紹介してもらいましょう。
■番外編:白いものが出現した場合
これまでは、全て白くなってはいけない個所が白くなった疾患をご紹介しました。番外編は、普段は隠れている白いものが出現する疾患です。
・瞬膜の突出
犬猫は、体調が悪いときに、目頭に位置し普段は隠れている瞬膜(第三眼けん)が突出する場合があります。
・結膜の浮腫・癒着
感染症で、結膜浮腫(腫れた状態)が見られることがあります。黄色~乳白色の目やにがたくさん出ることもあります。子猫の場合、感染症の炎症が長引くと上下の結膜が癒着することがあります。
目の異常は、日々接している飼い主さんが気がつかないと、病状が進行してしまう可能性があります。早期発見による、早期治療を心がけてくださいね。
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【参考】
※ Jan Bellows et al., Common physical and functional changes associated wuth aging in dogs. JAVMA, 246, 67-75(2015)
【画像】
※ Chendongshan / Shutterstock
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