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【獣医師執筆】なぜ犬はうんちを食べるの!? 「食糞と飲尿」の原因と正しくやめさせる方法

白井春佳

獣医師
白井春佳

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【獣医師執筆】なぜ犬はうんちを食べるの!? 「食糞と飲尿」の原因と正しくやめさせる方法

※2020年7月13日情報更新

うんちを食べたり、おしっこを舐めていたり……わたしたち人間の行動としては、なかなか受け入れることができない行動ですよね。

しかしながら、犬にとってはこれが正常な行動になってしまっていることがあります。うんちを食べてしまったり、おしっこを舐めてしまったりする行動には理由があるのです。

今回は、こうした“食糞と飲尿”をしてしまう理由や注意点を、獣医行動診療科認定医の筆者がご説明します。

 

■うんちを食べる・おしっこを舐める理由

なぜ犬はうんちを食べるの!? 「食糞と飲尿」の原因と正しくやめさせる方法
出典:https://www.shutterstock.com

うんちを食べる、おしっこを舐めるという行動の原因はさまざまです。まずは主な原因について説明します。

・母性行動

母犬は子犬の排泄を促すために、肛門生殖器に刺激を与えます。また、うんちを食べることで、子犬が歩けるようになるまで巣を清潔に保つという理由があります。

・探索行動

周辺の環境についての情報を得るために、様々な感覚を使います。うんちやおしっこからも多くの情報を得ることができます。また、退屈な環境であるとうんちやおしっこを探索欲求のはけ口として使うことがあります。

・嗜好性の問題

うんちやおしっこの、匂い、質感、味などを、おいしいと感じてしまう嗜好性になっていることがあります。

・病気、お腹が空いている

栄養が不十分な状態や、多食や消化不良の状態になる病気(寄生虫、膵外分泌不全、腸管疾患など)を患っているとこのような行動をとることがあります。

・飼い主さんの関心を引くため

うんちを食べたりおしっこをなめたりすることで、飼い主さんの関心を引くことを知ると、飼い主さんにかまってもらうためにこの行動をとることがあります。

・ストレスや不安なとき

不安傾向の高い犬にとって、自分が落ち着く方法として定着していることもあります。

 

■病気や口臭の原因にもなるので要注意!

うんちを食べたりおしっこを舐めたりすることによって、問題となる点は大きく2つです。それぞれを見てみましょう。

・病気

うんちやおしっこは、細菌、ウイルス、寄生虫などの感染症を引き起こすきっかけとなることがあります。感染症のリスクを軽減するためにも、口に入れる行動は避けるように注意しましょう。

・口臭

口に入れてしまうと、どうしても口臭が発生するだけでなく、吐いてしまうこともあります。非常に不快な臭いが愛犬の口から漂ってしまうのは嫌ですよね。

 

■対応策やしつけのポイント

まずこうした行動をしてしまう原因を明らかにすることが解決の近道です。よくあるケースをもとに、対策方法についてご紹介します。

・原因

うんちを食べる、おしっこを舐めるという行動が定着してしまっている、または増えているのであれば、その行動によって犬自身が「何かご褒美がもらえる」と認識している可能性があります。例えば、うんちを食べることで飼い主さんに関心を向けてもらったなどが考えられます。

問題行動をやればやるだけ、その行動は“成功”と認識され、学習されてしまうのです。

・対策

できる限り“正しい成功経験を増やす”ように工夫していくことがとても大切になります。つまり、うんちを食べること、おしっこを舐めること以外の行動パターンを、成功経験として認識する環境を作ることが重要です。

例えば、うんちやおしっこの後に、飼い主さんの所に行くとよいことがある、うんちやおしっこから離れるとよいことがあるなど、別の行動パターンを教えてあげることが有効です。

筆者の病院では、うんちをすると飼い主さんにお知らせにくるという行動パターンに変更した成功例もあります。

なぜ犬はうんちを食べるの!? 「食糞と飲尿」の原因と正しくやめさせる方法
出典:わんにゃ365

また、ストレス状態や欲求が満たされていない場合は、フードを詰めるおもちゃや、フード探しゲームなどを行うことで、欲求を満たすことの手助けとなります。ストレス状態からの解放が問題解決につながることもあります。

・注意点

行動パターンを変化させるために、スプレー首輪、苦い味など“嫌な刺激“を与えることには注意が必要です。人前でうんちやおしっこができなくなったり、より恐怖を感じやすくなったりと、副作用が強くなることがあるからです。これらの方法は第一選択としては選ばない方がよいでしょう。

 

うんちを食べる、おしっこを舐めるという行動は、犬の行動レパートリーとして正常な行動ともいえますが、病気の感染や社会生活で問題となることがあるので注意が必要です。

もしかしたら病気になってしまっている可能性もあるので、まずは動物病院で健康チェックをするのをおすすめします。そして、原因を探って愛犬に合った改善方法を見つけていくことが大切です。

 

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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※  Lorenzooooo, Elisa 69 / Shutterstock

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