わんちゃんだって、放っておいてほしいときがあります。筆者は、行動診療科で問題行動のあるわんちゃんたちを診察していますが、「放っておいてほしい」のサインを読み取れなかったために、攻撃行動や自傷行動に発展するケースを多く経験しています。
今回は、症例を通しての体験談を獣医行動診療科認定医の筆者が紹介したいと思います。
■症例1:号令を何度も言うと追尾行動が始まる犬
ジャック・ラッセル・テリアのポンちゃん(仮名)は、ちょっとしたストレスや葛藤状態になると、唸りながらグルグル回転してしまうわんちゃんです。普段から、1日に何十回もその行動が出現していました。
さまざまな状況でグルグル回転してしまうのですが、その中の1つに「オスワリ」「オスワリ」「オスワリ」と何度も号令を出すと、追尾行動が始まってしまいます。号令を何度も言いはじめると、ポンちゃんの体は固くなり、耳は寝た状態で、視線は号令を出す人から反らしていました。
「これ以上はイライラしちゃうよ。嫌だよ」としっかりサインを送ってくれていたのです。
この行動を飼い主さんに理解してもらい、何度も号令を言わないようにすることで、号令を何度も言うことで生じる追尾行動が無くなりました。
■症例2:リードを付け替えるときに噛み付く犬
柴犬のタロウくん(仮名)は、いつもと違う順番や状況を苦手とするわんちゃんです。少しでも違う順番や状況になると、パニックになり、攻撃行動を示してしまう傾向があります。
ある日、いつものお散歩時間でないときにリードをつけようとしました。タロウくんは、顔を背け、後ろに後ずさりしましたが、それでも飼い主さんは再度リードを装着しようと手を近付けてきました。「嫌だよう」のサインは出ていたのですが、それでも作業を辞めなかったことで限界を迎えてしまいました。そして、飼い主さんの手を噛んでしまいました。
その後、リード装着時のルールを作り、リード装着までの順番を明確にしていきました。その結果、決まった順番であればリード装着をポジティブに受け入れてくれるようになりました。
どちらの症例も、「もう嫌だよ」「限界だよ」「放っておいて」とボディーランゲージで示してくれています。サインを早めに読み取ることで、問題行動に発展させないことができます。どんなサインがあるのかは、以前の記事「犬の「不機嫌サイン」って?を見逃さないための5つのポイントを紹介」を参考にしてみてください。
サインを読み取ってもらえることは「この人は分かってくれる」という、わんちゃんの「安心」にも繋がります。気持ちを読み取りながら、愛犬との信頼関係を深めてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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