わんにゃとの暮らし

【獣医師執筆】どうして歩いてくれないの?犬が散歩で歩かないときに考えられる理由3つ

菊池亜都子

獣医師
菊池亜都子

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【獣医師執筆】どうして歩いてくれないの?犬が散歩で歩かないときに考えられる理由3つ

ほとんどのわんちゃんは、散歩が大好き。飼い主さんが散歩に行く準備を始めただけで、大興奮して喜びを表現するわんちゃんも多いことでしょう。ところが、散歩の途中で突然立ち止まって歩かなくなったり、散歩に行こうとしても最初から全然歩いてくれない……といった経験をされたことはないですか?

実は、わんちゃんが歩きたがらないのには、さまざまな理由があります。その理由が分かれば、もしかしたら散歩を楽しんでくれるようになるかもしれません。 

散歩は、運動欲求を満たすだけでなく、ストレスの軽減や社会性を養うためにも、わんちゃんにとって重要な役割を果たしています。歩いてくれないから散歩に行かなくていい、と簡単に考えてしまわずに、歩かない理由をきちんと考えて、無理なく楽しい散歩ができるようになりましょう。 

■理由1:病気やケガ、老化などで歩くのがつらいから

どうして歩いてくれないの?犬が散歩で歩かないときに考えられる理由3つ
出典:https://www.shutterstock.com/

それまでは散歩が大好きで元気よく歩いていたのに、最近になって急に歩かなくなった場合は、病気やケガなどによって、歩きたくても歩けない可能性が高いかもしれません。たとえば、ちょっと歩いただけでも息切れをする、足をかばうような歩き方をするなど、今までと明らかに違う様子が見られたら、すぐにかかりつけの獣医師さんに相談してください。

病気やケガではなかったとしても、年齢を重ねることで自然と体力は落ちてきます。ちょっとした暑さや寒さも、高齢のわんちゃんには負担になります。そうすると、散歩自体が苦痛になって、歩かなくなってしまう場合もあります。

また、疲れたから……といった理由のこともあります。これを単なるわがままで済ませるのではなく、たとえば、暑さや寒さにとても弱い犬種であったり、太りすぎなどで体力があまりなかったりするわんちゃんの場合は、飼い主さんが良かれと思った散歩の内容が、その子には負担をかけていることもあるかもしれないのです。

もう一度、散歩コースや時間帯、距離などがその子に合っているかどうかを見直してみましょう。

 

■理由2:恐怖を感じているから

どうして歩いてくれないの?犬が散歩で歩かないときに考えられる理由3つ
出典:https://www.shutterstock.com/

一般的に、わんちゃんは過去に恐怖を感じた経験をすると、そのときの場所やそこまでのルートだけでなく、周囲の環境などを記憶して、以降はそこに近づくのを避けようとします。なかでも、もともと臆病で警戒心の強い性格のわんちゃんや、子犬の時期に外の世界を十分に知る機会が与えられなかったわんちゃんによく見られます。恐怖を感じると、わんちゃんは耳が後ろに倒れ、尻尾も下がり気味になっているので、わんちゃんの様子をよく観察してみてください。

恐怖を感じる対象は、わんちゃんによって異なりますが、よくあるのは、工事の音やトラックの音などの突然の大きな音、バイクや自転車が近づいてくる音、走って近づいてくる子供の集団、吠えかかってくる犬などです。

わんちゃんが何に対して恐怖を感じているのか分かるのであれば、その対象に出会うようなルートや時間帯は、あらかじめ避けてあげましょう。慣れさせようと、リードをグイグイ引っ張ると、ますます恐怖感が植え付けられてしまい逆効果です。どうしても歩いてそのルートを通らなければならないときは、抱き上げるか、おやつで誘導するなどして、ささっと通り過ぎてしまいましょう。 

恐怖を感じる対象に慣らしていくには、焦らず少しずつです。散歩中に名前を呼んで話しかけたり、大好きなおやつを与えたりして、「散歩は楽しいこと」という印象を与えるようにしましょう。

 

■理由3:歩かなければ要求が叶うから

どうして歩いてくれないの?犬が散歩で歩かないときに考えられる理由3つ
出典:https://www.shutterstock.com/

歩かないからといって飼い主さんが抱っこしてあげたり、すぐにおやつで誘導したりを繰り返していると、わんちゃんは「歩かなければ抱っこしてもらえる(おやつがもらえる)」と学習してしまう可能性もあります。 

最初は恐怖を感じて歩けなかったのかもしれませんが、そのときの飼い主さんの対応に味をしめたことで歩かなくなってしまうのです。いわゆる「わがまま」ですね。 

こんなときは、恐怖を感じているかいないかは、前の項目で説明したわんちゃんの様子をよく観察してみましょう。恐怖によって歩かなくなっているのでなければ、抱っこもおやつも止めましょう。もちろん、リードを無理やり引っ張るのもおすすめしません。叱ったりするのも禁物です。

対処法としては、リードを強く引っ張るのではなく、合図を送るようにリードを軽く引いてみます。そして、少しでも動き出す素振りを見せたら、すぐに褒め言葉をかけてあげましょう。歩き始めたら、おやつを与えてもかまいません。それでも動かないからとついつい要求に応えてしまうと、結局同じことの繰り返しになるので、ここは、「歩くといいことがある」と学習させましょう。

 

いかがでしたか?

散歩の楽しさは、飼い主さんと一緒に歩く楽しさ、匂いを嗅いだりする楽しさなど、たくさんあります。でも、少しでも飼い主さんの前を歩こうとすると怒って引っ張られる、たまには違う方向に行ってみたいのに行かせてくれない、自由に匂いを嗅がせてくれないなど、こんな状況を常に作ってしまっている場合は、飼い主さんの対応を変えることも必要かもしれませんね。

 

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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