わんちゃんが同じ場所をくるくると回っている光景は、誰でも一度や二度は見たことがあるのではないでしょうか?
一口に「くるくる回る」と言っても、高速スピードで回る場合もあれば、非常にゆっくりと回る場合もあります。また、大きい円を描いて歩くように回る場合もあれば、自分の尻尾を追いかけるように回る場合もあり、本当にさまざまです。
では、なぜわんちゃんはくるくる回るのでしょうか? 考えられる理由をいくつか挙げて考えてみましょう!
■ウンチをする前に回る
ウンチをする前にくるくると、その場を回るわんちゃんは多いですよね。このくるくる回る行動は、排泄をする時の体の向きが南北になるようにするためであるとか、周囲に外敵がいないかどうかを確認するためであるとか、さまざまな説があるようです。
■遊びの一環として回る
子犬によく見られる行動として、自分の尻尾を追いかけてくるくる回ることがよくあります。捕まえようとしてもなかなか捕まらない! それがおもしろくて回っているのでしょう。自分の尻尾ですら遊び道具にしてしまう、何にでも興味を示す子犬らしい行動といえますね。
■飼い主さんの関心を引くために回る
くるくる回ることで大好きな飼い主さんの気を引くことができると、わんちゃんは「こうすれば関心を向けてくれる」ということを学習します。
例えば、くるくる回ると他の作業をしていた飼い主さんが顔を向けてくれたり、話しかけてくれたり、心配してすぐに抱っこしてくれたりすると、この飼い主さんの行動がわんちゃんにとってのご褒美となり、そのご褒美が欲しくて、ますます飼い主さんの前で回るようになるのです。
こういった関心を求めるための行動は、くるくる回ることだけではありません。吠えたらおやつをくれた、トイレ以外の場所で排泄をしたら飼い主さんが慌てて飛んできてくれた……など、何をご褒美として、どのような行動をとるのかはわんちゃんによってさまざまです。
■ストレスや不安が原因で回る
例えば、刺激がほとんどない退屈な状態が続いたり、逆に刺激が強すぎたり、もしくは環境が変わったりすることによって、わんちゃんはストレスや不安を感じることがあります。
そして、そういったストレスや不安をコントロールしようとして、“転位行動”を起こすことがあります。転位行動は、わんちゃんの場合、体を舐める、体を掻くなどがありますが、目的なく、くるくる回るといった行動も、よく見られる転位行動のひとつです。人で言うと、“爪かみ”や“貧乏ゆすり”が近い例えかもしれません。
ストレスや不安を取り除いてあげることで、この転位行動はなくなります。しかし、尻尾を噛んで出血してしまうなど、日常生活に支障が生じるほどに悪化してしまった場合は、常同障害という診断が下され、治療の対象となります。
■脳神経系の病気が原因で回る
脳神経系に何らかの障害があった場合も、同じ場所をくるくると回り続けたり、自分の尻尾を追いかけて回り続けたりするといった行動が見られることもあります。
診断のためには、いくつかの検査が必要になる場合が多いので、心当たりがあったり心配だったりする場合には、かかりつけの病院に相談してみるか、行動治療専門の獣医師に相談してみるとよいでしょう。この時に、動画を撮影しておくと、診断の手がかりとして非常に役立ちます。
■認知症が原因で回る
主に高齢のわんちゃんに見られる認知症(正確には認知機能不全症候群と言います)の症状のひとつとして、“徘徊のような行動”が見られることがあります。この場合は、大きく円を描くように歩き回るというパターンが多いかもしれません。
認知症の症状はこの他にも、活動性が低下する、慣れた環境で迷うようになる、間違った場所を通ろうとする、行き詰まる、攻撃性が見られるようになる、昼夜逆転して夜鳴きが増える、不安行動が増加するなどがあります。
こういった行動の変化がいくつか見られるようであれば、認知症の可能性も考えられるので、可能であれば動画を撮影して、まずは獣医師に相談されることをおすすめします。
残念ながら認知症を完治させるための根本的な治療はありません。進行を遅らせることや、飼い主さんとわんちゃんのQOL(生活の質)の改善を目的としてコントロールしていくことになります。
一言で「くるくる回る」と言っても、さまざまな理由があります。普段からわんちゃんの行動をよく観察して、少しでもおかしいかな?と感じたら、迷わず獣医師に相談してみてくださいね。
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