愛犬の“涙やけ”が気になったことはありませんか? いつも涙を流している姿を見ていると不安になってきますよね……。そこで今回は、涙やけの原因や対策について、獣医師の佐藤貴紀先生に解説いただきました!
■専門用語は「流涙症」
目の周囲の毛の色が茶色や赤茶色、焦げ茶色に変色することを“涙やけ”と言いますが、医学用語ではありません。変色することは涙の成分や細菌などが毛と反応し起こるのですが、そもそも、涙が目から外に出てしまうこと自体が異常であり、病名としては“流涙症”と言います。
この流涙症がなければ、毛が茶色く変わることはないため、“涙やけを治す=流涙症を治す”ということになります。
■流涙症の原因について
特定の要因のみが流涙症の原因となるわけではないのですが、筆者の経験上、よく見られる原因として次の様な状況が考えられます。
・眼球への刺激(逆さまつげ、眼瞼が内側へ入りこむ眼瞼内反、異物など)によって、涙の作られる量が増加して溢れてしまう
・涙が通常抜ける流出路(涙点や鼻涙管)が、何らかの原因で閉塞されて溢れてしまう
・目の下に解剖学的な異常があり、涙が正常ルートを通れず溢れてしまう
■犬種的な原因は?
犬種的にも、例えば下記の様な犬種において流涙症が起こりやすいとも言われています。
・アメリカンコッカースパニエル、ベドリントンテリア、ゴールデンレトリバーで下涙点の閉鎖が報告されている
・アメリカンコッカースパニエルで下涙点の位置異常が報告されている
・トイ犬種では、眼瞼と眼球が密着した構造になっており、涙を溜められない構造になっている
・トイ犬種など長毛の場合、毛が目に入り涙が外へ漏れ出るケースもある
・第三眼瞼の腺に炎症が起こることで、涙の産生量が増加する
■具体的な症状について
目から涙が付着、溢れることにより、毛が茶色くなり涙やけを起こすことがあります。湿性皮膚炎が二次的に起こることも考えられるので、十分注意してください。その他、かゆみが伴い、前手で書くことや地面にこすることで、眼球を傷つける場合もあると思います。
■どうやって対策する?
(1)診断
流涙を診断するには、原因として構造的、遺伝的、刺激など様々な角度から考える必要があります。一般的に行われる検査は、“シルマー涙液試験”です。涙の産生量を計測する検査で、涙が多いことを確認します。また、角膜にフルオレセイン染色を行い、角膜に傷がないかどうかを調べます。
(2)治療
・薬物療法
抗生剤により、炎症などを取り除きます。涙やけに限っては、綺麗に皮膚を保つ、フードを変更するなどの対処を行う必要もあるのではないでしょうか。
・外科療法
原因を様々取り除くために必要です。涙点を拡張させたり、逆さまつげを抜いたり、鼻涙管の洗浄を行ったりします。
涙やけの根本的な原因である流涙症をよく理解し、必要以上の涙を流さないようにサポートしてあげましょう。遺伝的な場合は飼い主さんのケアが必須になってくることが多いので、普段のお手入れも忘れないようにしてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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