笑顔で楽しそうにしている人と一緒にいると、何だか自分も楽しい気分になる。辛そうにしている人と一緒にいると、自分も辛い気持ちになる。皆さんは、このような経験はありませんか？ 実はこの現象、心理学的に「情動伝染」と呼ばれるもので、人の情動は他の人に移ると考えられています。
それでは、人と犬の間ではどうでしょうか。人と犬の関係は数万年前から始まったと言われており、強い絆で結ばれています。麻布大学の研究グループは、人の情動が犬に移るのかどうかという謎に立ち向かいました。
■「情動伝染」ってなに？
情動伝染とは、ある個体の情動が別の個体に伝染すること、と定義されています。笑っている人がいると幸せな気持ちにもなりますし、泣いている人がいれば悲しい気持ちになりますよね。これが情動伝染といわれる現象で、誰しもが経験したことがあると思います。
同じ動物間（人と人、鶏と鶏など）での情動伝染については、明らかにすべく取り組まれてきました。たとえば、双子や親子など親密な間柄では情動伝染がより起こりやすい、同じ環境で過ごしている時間が長いと情動伝染がより強くなるといわれています。また、一般的に喜びといったポジティブな情動よりも、イライラや悲しみなどのネガティブな情動の方が移りやすいといわれています。身近にイライラしている人がいると、自分も少しイライラした気分になったりしますよね。
■人の感情は犬に伝わるの？
犬が人と一緒に過ごすようになったのは、3～4万年前と言われているそう。犬は人とよくコミュニケーションが取れると感じることが多いですよね。異なる動物間で、人と犬ほどまでに深い絆で結ばれているペアはないと言っても過言ではないでしょう。
それでは、人の情動は犬にも移るのでしょうか。この謎を解明するために麻布大学の研究グループは、14頭の犬とその飼い主さんを対象に研究を行いました。具体的な研究内容としては、飼い主さんにストレスをかけた状態（プレゼン発表や暗算をさせる）と、ストレスをかけない状態のそれぞれの状態を愛犬に観察させ、愛犬の心拍数の変化や行動の解析を行うといったものです。
この研究から、犬は飼い主さんがストレス環境に置かれていると、飼い主さんをじっと見つめる時間が増加することが明らかになりました。さらに、心拍数の変動の解析結果から、ストレス環境に置かれている飼い主さんと愛犬の間では情動伝染が起こっている可能性を示唆する結果も得られました。また、雄犬よりも雌犬の方が、情動伝染が起こりやすいような統計的な所見も確認されました。
人と犬で情動伝染が起こっていることを示唆する所見が一部見られた、この発見は驚くべきことです。麻布大学の研究グループは、今回の研究で対象となった飼い主さんと犬が少ないことや、ストレスが十分にかかっていない人もいたことを危惧しており、さらなる研究の必要性を述べておりました。
今回は、人と犬という異なる動物間で、情動がうつるのかどうかについてお話しました。人と犬の関係性は本当に密接なもので、動物の種を超えた堅い絆で結ばれております。麻布大学の研究は、人と犬の間でも情動伝染が起こっている可能性を示唆しており、種を超えて情動伝染が本当に起こっているのだとしたら、それは大変驚くべきことです。今後の麻布大学の研究結果が待ち遠しいですね。
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【参考】
※ Emotional Contagion From Humans to Dogs Is Facilitated by Duration of Ownership
【画像】
※ Gunnerchu,funkyteddy,kobkik / Shutterstock
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