わんにゃコラム

【獣医師執筆】犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密

吉本翔

獣医師
吉本翔

いいね 2

【獣医師執筆】犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密

愛犬の被毛の色がどのようにして決まっているかご存知ですか? 近所で見かけるわんちゃんを思い浮かべてみてください。茶色、白色、黒色、シルバー、ゴールド……などさまざまな色がありますが、どのようにして色が決まっているかを知らない方も多いはず。

今回は、「犬の被毛の色」というテーマでお話します。犬の被毛の色はどれだけバリエーションがあるのか、それらの色はどのように決まっているのか、またアメリカ・カリフォルニア大学によって新たに発見された被毛の色を決める遺伝子についてもご紹介します。

■犬の毛色の種類はどれくらい?

犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/

皆さんは、犬の被毛のパターンはどれくらいあると思いますか? 犬の被毛の色と模様の種類は実に多く、皆さんの想像を超えるほどかもしれません。

色については、ブラウン(Brown)、レッド(Red)、ゴールド(Gold)、イエロー(Yellow)、クリーム(Cream)、ブラック(Black)、ブルー(Blue)、グレー(Gray)、ホワイト(White)の9色が主な色として挙げられますが、細かく分ければさらに多くの色があります。一つの犬種でも沢山の被毛の色をもつ犬種もおり、たとえばここ数年人気No.1犬種のトイプードルでは、レッド、ブラック、シルバー、ホワイト、クリーム、ブラウンなど、実に多様な被毛の色を持っています。皆さんの愛犬の被毛の色は、何色でしょうか?

 

■バリエーションに富んだ犬の模様!

被毛の色だけでも種類はたくさんありますが、模様のバリエーションも組み合わせると、犬の被毛は実に多種多様! 被毛の模様には、タン(Tan)、バイカラー(Bicolor)、トリカラー(Tricolor)、マール(Marle)、タキシード(Tuxedo)、ハーレクイン(Harlequin)、スポット(Spotted)、ティック(Ticked)、ブリンドル(Brindle)、サドル(Saddle)、セーブル(Sable)などなど……!

犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/

いくつかピックアップして説明すると、タンはミニチュア・ダックスフンドに代表される模様です。赤茶色っぽい毛色が、眉毛やマズル周辺、胸元、足先などに現れ、それに加えてもう一色濃い色(黒やブルーなど)と組み合わさっています。たとえば、上の写真は、ブラック&タンのミニチュア・ダックスフンドになります。

犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/
犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/

トリカラーは、ビーグルやバーニーズ・マウンテン・ドッグなどに代表される模様です。はっきりと分けられた3色の毛からなるものをトリカラーと言います。

犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/

スポットは、ダルメシアンに代表される模様です。明るい色の被毛の上に、濃い色の毛が斑点状にあるものを言います。

 

■犬の毛色を決める遺伝子について

犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/

被毛の色や模様を規定するのは、遺伝子がキーとなっています。ただし、意外なことに、犬の基本的な色素はたった2種類しかありません。

その2種類は、ユーメラニン(黒~茶色)とフェオメラニン(赤色~黄色)です。たくさんの被毛のパターンがあるのにも関わらず、たった2種類の色素しかないのは驚きですよね。それでは、たった2種類の色素から、なぜこんなにも沢山の模様があるのでしょうか。そこで重要となるのが、毛色遺伝子です。毛色遺伝子は毛の色に関係する遺伝子のことで、ユーメラニンとフェオメラニンの発現パターンに影響し、さまざまな模様を形成します。これまでに知られている毛色遺伝子には、A、E、K、B、D、M、H、S遺伝子などが挙げられます。

たとえば、A遺伝子は、アグーチ遺伝子と呼ばれ、ユーメラニンとフェオメラニンの発現をコントロールする遺伝子で、毛の色が黒っぽくなるか茶色っぽくなるかが決まります。S遺伝子は、スポット遺伝子といわれ、被毛に白い部分をつくる遺伝子です。沢山の毛色遺伝子が複雑に作用し合うことで、さまざまな種類の色と模様が生まれているのです。

■犬の毛色に関わる新たな遺伝子が発見!

犬の毛色は全部で◯色…!バリエーション豊かな犬の毛色と柄を決める遺伝子の秘密
出典:https://www.shutterstock.com/

これまで、犬の被毛の色や模様に関わる多くの遺伝子が、同定されていました。しかし、既知の遺伝子だけでは説明がつかない被毛のバリエーションもありました。たとえば、上記の写真に挙げるノヴァ・スコシア・ダックトーリング・レトリーバーという犬種の被毛には、明るい赤色から暗めの赤色までバリエーションがありましたが、既存の遺伝子ではその理由の説明がつかなかったようです。

アメリカ・カリフォルニア大学デービス校の研究者らは、36頭のノヴァ・スコシア・ダックトーリング・レトリーバーの血液サンプルと唾液サンプルを用いて、遺伝子検査を行ったところ、KITLG遺伝子という遺伝子が、この犬種の被毛の色に関係していることを明らかにしました。このKITLG遺伝子は、フェオメラニン色素によって現れる色の濃さを決めており、他の犬種でも同様に持つようです。

皆さんは、犬の被毛についてどのくらい知っていましたか? 色や模様の種類の多さに驚いたかもしれません。これほどまでにバリエーションがあるのは、ユーメラニンとフェオメラニンという2種類の色素とたくさんの毛色遺伝子が関係しているからです。ただし、まだ被毛に関して全てが明らかになっているわけではありません。カリフォルニア大学の研究グループが発見したKITLG遺伝子のように、今後も新たな発見が見つかることが楽しみですね!

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

わんにゃ相談

【関連記事】

※ 抜け毛がごっそり取れる!犬猫の換毛期に使いたいブラッシンググッズ4選

※ 愛犬の「似合う」を探そう!トリミングサロンの選び方と人気カットスタイル6つ

※ 抜け毛がないのは本当?「トイプードル」と暮らす前に知っておきたいこと

※ セーターやマフラーにもなる!犬の抜け毛を「再利用」する方法

獣医師特集

【参考】

※ Andy Fell(2020)"Newly discovered genetic element adjusts coat color in dogs”ScienceDaily

※ Kalie Weich(2020)"Pigment Intensity in Dogs is Associated with a Copy
Number Variant Upstream of KITLG”Genes

※ Coat Colors and Patterns: Dog coat varieties of colors and patterns

※ Dog Genetics 2.0: Colours | Laboratoire de génétique vétérinaire

【画像】

※ Puhach Andrei,a katz,otsphoto,Alexey Androsov,Eve Photography, Iren Key,Billion Photos,Steve Mann / Shutterstock

FOLLOW ME

twitter   facebook

この記事に付けられているタグ

いいね 2