これから保護猫や保護犬を、迎えようと考えている人もいると思います。里親になるには、「恵まれないわんちゃんやねこちゃんを助けたい」という気持ちだけでなく、整った生活環境や飼育費用、保護されていたわんちゃんやねこちゃんに対しての理解も大切です。
今回は、保護猫と暮らせるシェアハウス、保護犬団体、保護犬の里親さんに、実際に里親になった経験を踏まえた、さまざまなお話を伺いました。
■1:1匹でも多くの猫のために…保護猫と暮らせるシェアハウス
愛知県名古屋市にある、猫と暮らせるシェアハウス『シャミニヨン』では、保護猫の受け入れを積極的に行なっています。『シャミニヨン』の担当者・三宅さんに、保護猫をシェアハウスで受け入れようと思ったきっかけなどについて伺いました。
「保護猫は里親が見つからなければ、殺処分になる可能性が高いです。そのようなねこちゃんを少しでも減らしたいと思ったのが、保護猫受け入れのきっかけです。
『シャミニヨン大須』では毎月1回、保護猫団体さんに会場を無料で提供して、譲渡会を行っています。現在までに、譲渡会をきっかけに14匹、シャミニヨン大須にホームステイしていた子が9匹、里親さんの元に引き取られていきました。
里親になる方には保護猫団体から説明をしっかりと行ない、そのうえで里親として責任を持って面倒を見ることをお願いしています」
では、シェアハウスでねこちゃんと暮らすにはどのような利点があるのでしょうか。
「ペット可の集合住宅では、ペット飼育の頭数に制限があります。でも、『シャミニヨン』なら、複数の保護猫を助けることができます。
それに、ねこちゃんとの生活で不安なことがあれば、シェアハウスの入居者同士で相談も可能です。また、帰省中や仕事で遅くなるときは愛猫の面倒を他の入居者に頼むこともできるので、独身者でもねこちゃんが飼育できます。何かあればカバーし合えるのが、ねこちゃんが飼えるシェアハウスの良さだと思います」
シェアハウスで保護猫と暮らした経験が入居者の将来に繋がるのではないかと、三宅さんは期待を寄せます。
「保護猫を助けるために、ねこちゃんと暮らせるシェアハウスがベストだとは考えていませんが、ベターであるとは思っています。
シェアハウスで保護猫の面倒を見た経験があれば、入居者が将来結婚して家庭を持ったときに、里親として保護猫を迎える人が出てくるかもしれません。シャミニヨンでの暮らしが、結果的に1匹でも多くの猫たちを助けるのに繋げることができるのではないかと考えています。
『シャミニヨン』では、名古屋市昭和区に新たなシェアハウスをオープンしました。そこでも、保護猫たちを助ける活動を展開していく予定です。今後の活動にも注目してください」
■2:「猟犬」の里親を募集している保護犬シェルター
主に"鳥猟犬”を保護し里親を探す活動をしている『GUNDOG RESCUE CACI』の代表・金子理絵さんに、猟犬を里親として家族に迎える上での注意点などを伺いました。
「鳥猟犬は愛玩犬と比べて、アクティブなのが特徴です。そのためしつけや運動、コミュニケーションなどが足りず、問題行動が現れることもあります。また、使役犬として閉鎖的な環境で育てられているわんちゃんも多く、家族全員に懐くまでには長い時間を必要とする場合もあります。
鳥猟犬は野山に放たれた経験があり、油断をすれば逃げられることもあります。そのためには、呼び戻しと社会性を学ぶためのトレーニングはとても重要です。それらを理解したうえで保護団体とよく相談し、家族に迎えてほしいと思います」
では、猟犬の里親に向いているのは、どんな人なのでしょうか?
「鳥猟犬とひとくちで言っても、性格はそれぞれ違います。里親さん自身のライフスタイルと、選んだわんちゃんがマッチしているかが大事です。私たちは保護しているわんちゃんたちの性格や性質を熟知しているので、里親候補の方が希望しているのとは別の子をおすすめすることもあります。
猟犬が本来持っている猟欲を、別の何に向けてあげるか。それが家庭犬として生活する上でのポイントではないでしょうか。鳥猟犬は、人との共同作業が好きな犬種でもあります。フィールド競技やドッグダンス、アジリティなどを一緒に楽しみたいという方に、向いています。一緒に学ぶことにより、最高のパートナーになれるのではないでしょうか。
鳥猟犬に限ったことではありませんが、里親になるのであれば、住環境やわんちゃんに費やせる時間、経済力を考えた上で迎えるわんちゃんを選ぶようにしてください」
『GUNDOG RESCUE CACI』では、定期的に譲渡会を開催。鳥猟犬の里親になりたいと考えている人や、興味を持っている人に保護犬を見てもらう機会を設けているそうです。
「譲渡会に来ているわんちゃんについて聞かれたことに答えるのはもちろんですが、鳥猟犬に関しての質問や、どんなわんちゃんを飼うのが適しているのかといった相談にも乗っています。またその他に、スタッフに声をかけてもらえれば、わんちゃんに触ることもできます。
譲渡会は、保護犬たちの情報を、里親候補のみなさんにお伝えするための大切な機会です。わからないことや聞いてみたいことがあれば、お気軽にお声がけください」
■3:過去よりも未来を大切に…保護犬を3頭迎えた里親さん
飼い主さんの名前・・・Namikiさん
愛犬の名前・・・レディ(イングリッシュ・セッター/4歳/♀)、ひなた(ボーダー・コリー/9歳/♀)
Namikiさんはこれまで4頭のわんちゃんと暮らした経験があり、そのうちの3頭が保護犬だそうです。保護犬の迎え方や里親として心掛けていることなどを伺いました。
「我が家で初めて飼った"ノア”(バーニーズ・マウンテン・ドッグ)はペットショップから迎えたのですが、ノアを飼い始めてから保護犬の存在を知り、2頭目の"ポーラ”からは保護犬の里親になっています。
保護犬を迎えるときは、応援したい団体を探して、そこから迎える里親さんもいると思います。私たち夫婦は、"一緒に暮らしたい”と思える犬を一番に考えていますが、これまでお世話になった団体や個人はとても良い方たちでした。
2頭目の“ポーラ”は個人で犬や猫の保護活動をされている方から、4頭目の“ひなた”は動物愛護団体から迎えました。
3頭目の"レディ(Ready)”は、私がボランティアに参加している動物愛護団体の代表からの紹介で迎えた子です。現在はレディと一緒に、アウトドアを楽しんでいます。迎える犬と何をしたいか、里親になる前に、その点はぜひ考えて欲しいと思います」
現在は、レディちゃんとひなたちゃんの2頭と共に暮らしているNamikiさんですが、里親としてわんちゃんを育てる上で気を付けている点はあるのでしょうか。
「里親としてというよりも飼い主として思っているのは、その犬の特性を理解することです。
我が家の犬は、レディが狩猟犬、ひなたは牧羊犬で、どちらも人と共に働くことを目的とした犬種です。仕事の目的に沿うようにブリーディングされてきたため、愛玩犬として飼育する場合、犬種の特性が問題行動に見えてしまう可能性があります。
特に狩猟犬は、自主性の高い行動が特徴です。狩猟犬の里親になるのであれば、犬の自主性を尊重して観察し、コミュニケーションを深めて楽しみながらのトレーニングが大切です。そうすれば、犬とのパートナーシップを作りあげることができます。ただし、狩猟犬の特性を学んでいないと、トレーニングは難しいでしょう。狩猟犬の里親として、これからも謙虚に学び続けたいと思います」
これから保護犬や保護猫の里親になろうと考えている方に、Namikiさんからアドバイスをいただきました。
「保護犬や保護猫を迎えるにあたり、その犬や猫の過去を知ることが必要になるかもしれません。でも、いちばん大切なのは過去ではなく、今あなたの目の前にいる犬や猫自身であり、未来ではないでしょうか。
保護されている犬や猫にとって、あなたと出会って家族になることが何より幸せなのです。考えすぎないで、目の前の犬や猫と真っすぐに向き合って欲しいと思います」
<取材協力>
猫と暮らせるシェアハウス シャミニヨン
GUNDOG RESCUE CACI
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