当院では、獣医行動診療科という“犬猫の精神科”のような診察を行なっています。獣医師の国家資格を取得するテスト項目にも、動物行動学がカリキュラムとして取り入れられるようになり、“行動診療科”は獣医療のひとつとして認知されています。
統一された診断名もしっかりありますので、ペット保険会社様の適応疾患にも、獣医療のひとつとして取り入れられるようになっています。
行動診療科の専門病院である当院での一番多い犬種は……実は“柴犬”になります。どのような行動学的疾患が多いのか、獣医行動診療科認定医の筆者が解説いたします。
■1番多い行動学的疾患は?
柴犬で一番多い疾患は“攻撃行動”です(当院調べ)。東京大学の武内ゆかり先生の著書である「はじめてでも失敗しない愛犬の選び方」にも、柴犬のデータがあります。そこからも、各種攻撃行動に関しては非常にスコアが高いことが分かります。
すべての柴犬において攻撃行動が高いとは言い切れませんが、発症する確率が非常に高い問題行動であると言えます。
■2番目に多い行動学的疾患は?
クルクル尻尾をおいかけて回っている柴犬を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか? この症状が悪化すると、自分の尻尾を噛みちぎるなどの重症化した症状を示すことがあります。
この疾患を“常同障害”と言います。当院では、柴犬の追尾行動を示す常同障害の治療件数も多く経験しています。柴犬はこの疾患に罹患しやすいという報告も聞いたことがあります。
■行動学的疾患の予防方法は?
攻撃行動、常同障害(追尾行動)は、非常に発症しやすい疾患であることが上記説明からも分かっていただけたと思います。どのような疾患も、“予防”がとても重要になります。予防医療のポイントを3点お伝えいたします。
(1)迎え入れる前
遺伝的な影響や親兄弟、育った環境などにより、行動に強く影響します。子犬をご家族に迎え入れるのであれば、このような飼育環境や子犬の背景をしっかり確認しておく必要があるでしょう。
(2)子犬時代
攻撃行動の多くは、恐怖を感じたり、嫌なことだったり、物を守ろうとしたりというネガティブな感情により攻撃行動に発展します。以前の記事“実は攻撃的な犬種!? 柴犬の飼い主さんなら知っておきたい性質としつけ方”でも述べた通り、柴犬は新しい刺激や状況に対しての許容度が低い犬種であることも報告されています。
子犬時代は、あらゆることに対して“ポジティブ”に受け入れられる準備をしっかり行なうことが“こころのワクチン”として必須項目になります。
(3)問題行動が生じていたら獣医師に相談する
攻撃行動や常同障害などの症状がある場合、各種疾患や脳疾患、ホルモン異常などメディカルな問題が関与していることも多いのではないでしょうか。例えば、嘔吐などの症状が続いていれば病院に行くと思います。それと同じことです。
すでに症状が確認されるのであれば、まずは診察や検査が必要です。
どんな病気でも“予防”と“早期発見”が重要です。柴犬の行動学的疾患の傾向を知り、心身共に健全に生活できることを願っています。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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