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【獣医師執筆】お散歩中は強い日差しを避けてあげよう!犬への「紫外線」の影響について解説

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【獣医師執筆】お散歩中は強い日差しを避けてあげよう!犬への「紫外線」の影響について解説

2021年5月7日情報更新

人は夏が近づくに連れ、日差しや紫外線が気になるようになりますよね。人用の紫外線対策グッズは、様々なものが販売されています。しかし、大切な愛犬は大丈夫なのでしょうか?

そこで今回は、獣医師である濱田真由美先生に、紫外線と健康との関連について分かりやすく解説していただきました!

■5月中旬以降の紫外線は「強い」!?

紫外線を眩しそうにしている犬の写真
出典:https://www.photo-ac.com

季節が変わり、太陽の光が日増しに強くなっているのを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか? それもそのはず。日本の気象庁では、紫外線の量について少ない方から、弱い、中程度、強い、非常に強い、極端に強いの5つに分類されているのですが、春から夏に季節が変わるにつれてその量は右肩上がりに増え、5月中旬以降は“強い”に分類されるようになるのです(※1)。

紫外線による皮膚がんや白内障などといった健康への悪影響について懸念されていますが、紫外線は犬にも人と同じように影響を及ぼすのでしょうか。そこでまずは、紫外線の基本についてお伝えします。

■そもそも紫外線って何?

眩しい紫外線を手で隠す写真
出典:https://www.shutterstock.com/

紫外線というのは、太陽の光のなかに含まれる波長の短い電磁波の一種で、目で見ることはできません。女性であれば、日焼け止めクリームのラベルにあるUV-A(紫外線A波)、UV-B(紫外線B波)などといった表記をご覧になった方がいらっしゃるのではないかと思います。

紫外線A波は肌の奥深くまで届いて活性酸素を作り出し、シワやたるみの原因になると言われています。紫外線B波のほうは紫外線A波ほど奥深くまで届かないのですが、皮膚の表面で炎症を起こすためシミやソバカスの原因になると言われています。そのために紫外線をブロックするための日焼け止めクリームが販売されているのです。

ただし、紫外線は本来必ずしも悪いものとは限らず、病気の元になる菌を殺してくれたり新陳代謝をよくしたり、身体のなかでビタミンDを合成するのを助けてくれたりします。

それでもやはり皮膚がんの要因のひとつとして紫外線を浴びること、というのが人の医学のほうでは取り上げられていますので、紫外線には十分に気をつけたいものですね(※2)。

■紫外線は犬にどんな影響を及ぼすの?

草原でおすわりするゴールデンレトリバー
出典:https://www.shutterstock.com/

犬でも皮膚がんが見られることがあります。その中の要因のひとつとして、紫外線(特に紫外線B波)の影響が考慮されています(※3・4)。特に比較的多く見られる“扁平上皮がん”というタイプの腫瘍は、紫外線が当たる皮膚の場所に発生しやすく、紫外線があたっている場所の方が、炎症もひどくなりやすいことが分かっています(※5・6)。

■注意したいポイント!

カーペットの上でお腹を見せる犬の写真
出典:https://www.shutterstock.com/

(1)犬の皮膚にできる扁平上皮がんは、室内で過ごしている犬よりも外で過ごしている犬にできやすい。

(2)メラニンなどの色素を持たない(色白な)犬や犬種の方が、色素を持つ犬よりも皮膚がんになりやすい。

(3)アルビノ(生まれつきメラニン色素を殆ど持たない個体)などは非常に敏感な皮膚を持っているため、紫外線にさらされると早い段階で皮膚がんになりやすい。

(4)犬では、鼻の上・肢の指先・お腹・乳腺などに皮膚がんができやすい。

まず私たち人間と犬とで異なる点があるとしたら、犬は私たちよりもはるかに多く被毛に覆われていることです。そのような被毛は紫外線から皮膚を守る働きもしています。

また、人が紫外線を浴びたときに日焼けして肌が黒くなるのは、皮膚で紫外線から守るメラニン色素を増やすためです。これがいわゆるシミの原因にもなると言われていますが、本来は皮膚自体を守るために行われている身体のしくみなのです。肌や毛色が黒い犬はメラニン色素を元々多くもっているので、紫外線には強いということになります。

■紫外線対策はどうしたらいい?

外で帽子とサングラスを身につける犬の写真
出典:https://www.shutterstock.com/

被毛が少なく肌の色や毛色が白めの犬だったり、皮膚病にかかったりしている犬の場合は、特に紫外線によって皮膚がんになったり皮膚病が悪化したりしやすくなります。

そのため、紫外線対策をしていくことをおすすめします。具体的な対策の一部を紹介します。

・紫外線の強い時間帯のお散歩を避ける

・お散歩中は日傘で日陰を作ったり、できるだけ日陰を歩いたりする

・極端な毛刈りは行わないようにする

・外に出るときは服を着せる

・栄養を強化して紫外線の影響によるダメージを防ぐ

意外に盲点なのが“お腹へのケア”です。紫外線はコンクリートに当たると反射してお腹に当たります。お腹に覆われている毛は少ないのでダメージが多くなります。ぜひ注意してくださいね。

■眼への影響もある?

お散歩中は日陰を作ってあげよう!犬への「紫外線」の影響について解説
出典:https://www.shutterstock.com/

その他、人のほうでは目にも紫外線によるがん(眼内黒色腫:メラノーマ)の報告があり、こちらも瞳の色(とくにブルーやグレイの瞳)や皮膚、髪の毛の色の薄い人のほうに多く起きやすいと言われています。

今のところ犬では目に対する影響について明らかな結論は出ていませんが、同様の影響があるのではないかと考えられていて、米国では犬の眼を守るためのメガネの装着をすすめる獣医眼科専門の獣医師もいます。

これから太陽の日差しが強くなってきます。紫外線対策をしっかりして、愛犬との生活を楽しんでくださいね!

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 気象庁| 日最大UVインデックス(観測値)の年間推移グラフ

※2 Meg W, Dawn MH,et al. (2016). Ultraviolet Radiation Exposure and Its Impact on Skin Cancer Risk. Semin Oncol Nurs. 32: 241-254.

※3 Baba AI, Câtoi C. (2007). Epithelial and melanocytic tumors of the skin. Comparative Oncology. The Publishing House of the Romanian Academy.

※4 Jaime FM, et al. (2007). The Etiology of Cancer. Withrow and MacEwen’s Small Animal Clinical Oncology 4e.

※5 Madewell BR, Conroy JD, Hodgkins EM. (1981). Sunlight-skin cancer association in the dog: a report of three cases. J Cutan Pathol. 8: 434-443.

※6 Nikula KJ, Benjamin SA, et al. (1992). Ultraviolet radiation, solar dermatosis, and cutaneous neoplasia in beagle dogs. Radiat Res. 129: 11-18.

【画像】

※ Yuliya Evstratenko, Bychykhin Olexandr, Shopping King Louie, icemanphotos, PixieMe, vvvita, Patryk Kosmider / Shutterstock

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