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実は身近にいるかも…!「寄生虫」による犬の疾患について

吉本翔

獣医師
吉本翔

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実は身近にいるかも…!「寄生虫」による犬の疾患について

普段の生活の中で“寄生虫”という言葉を耳にする機会はあまりありませんが、寄生虫と聞くと、なんだか気持ち悪いイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

国内では寄生虫が原因となる人間の病気が話題になることは少ないように思われますが、海外では寄生虫が原因の病気はしばしば問題になっているそう……!

それは犬も同じで、寄生虫が原因となる病気、寄生虫疾患に気をつけなければいけません。そこで今回は、寄生虫に関する基礎的な内容と具体的な犬の寄生虫疾患について、獣医師の吉本先生に解説いただきました!

■そもそも「寄生虫」ってなに?

実は身近にいるかも…!「寄生虫」による犬の疾患について
出典:https://www.shutterstock.com/

寄生虫とは、他の動物の体内または体外に棲みつき、栄養を奪って生存する(=寄生)生物のことをいいます。寄生された動物(人、犬、猫など)のことを宿主といいますが、寄生虫は、宿主の体内に寄生する内部寄生虫と、体外に寄生する外部寄生虫とに分かれます。

さらに、内部寄生虫は単細胞(一つの細胞)からなる原虫と、多細胞からなる蠕虫(ぜんちゅう)に分類されます。外部寄生虫は、ノミやダニなどを指し、飼い主さんも耳にする機会が多いことでしょう。

■寄生虫疾患の例

実は身近にいるかも…!「寄生虫」による犬の疾患について
出典:https://www.shutterstock.com/

実は寄生虫は環境中の至る所にいます。しかし、すべての寄生虫が宿主に病原性を示すわけではなく、犬の病気として問題となる寄生虫は限られています。ここでは、代表的な寄生虫疾患をいくつかピックアップして説明します。

・バベシア症

バベシア症は、原虫の一種であるバベシア属原虫による疾患です。バベシアは血液中にある赤血球(酸素を運ぶ役割を持つ細胞)に寄生し、犬に貧血を引き起こす寄生虫です。バベシア属の原虫はマダニによって媒介され、マダニが犬を吸血する際に犬に感染します。

現在、バベシア症は西日本での発生が多いとされていますが、近年散発的に東日本においても発生が確認されている病気です。今後、人や犬などの移動に伴って東日本にまで分布域が拡大する恐れもあります。

・フィラリア症(犬糸状虫症)

犬の飼い主さんであれば、ほとんどの方は聞いたことがあるはずのフィラリア症。フィラリア症は、フィラリアという寄生虫による寄生虫疾患です。蚊の吸血時に感染したフィラリアが体内で成長し、最終的に心臓や肺動脈に寄生、心臓や肺の機能を障害して命を落とす恐れもある恐ろしい疾患です。

詳しくは過去の記事“あなたの愛犬は大丈夫?今すぐ実践したい「蚊・ノミ・ダニ」ワクチン以外の対策”で紹介していますので、詳しく知りたい方はぜひご一読ください。

・犬回虫症

犬回虫症は、蠕虫(ぜんちゅう)の一種である回虫による寄生虫疾患です。感染していても臨床徴候がまったく見られないこともしばしばあります。幼犬にたくさんの回虫が寄生した場合には、食欲不振、嘔吐や下痢、腹痛、体重減少などの臨床徴候を起こすことがあります。通常成犬にとっては、命を脅かすほどの恐ろしい病気ではありませんが、下痢が続くと愛犬も飼い主さんも辛いですよね。

犬回虫症はうんちの中に寄生虫の卵が確認できれば、容易に診断することができます。駆虫薬によって治療を行います。

・外部寄生虫による疾患(ノミ・ダニ)

外部寄生虫疾患として最も有名なのは、ノミとダニでしょう。ノミが犬に寄生すると、ノミアレルギー性疾患を引き起こすことがあり、犬は皮膚に強いかゆみを感じます。また、まれではありますが、大量のノミが子犬に寄生した場合には貧血を起こすケースもあります。

ダニといってもその種類は様々で、ヒゼンダニ、ニキビダニ、マダニなどがいます。ヒゼンダニやニキビダニは、犬に強いかゆみをもたらす外部寄生虫として有名です。また、マダニは前述のバベシア症を媒介する外部寄生虫で、問題視されている寄生虫のひとつです。

ノミやダニについても過去の記事“あなたの愛犬は大丈夫?今すぐ実践したい「蚊・ノミ・ダニ」ワクチン以外の対策”で詳しく紹介しています。

今回は、寄生虫に関する基本的な内容から、犬の代表的な寄生虫疾患をいくつかご紹介しました。国内では人が寄生虫疾患になることは滅多に聞くことはありませんが、犬では比較的見ることが多いように感じます。

寄生虫疾患の中には、流行している地域がある場合も多々あるので、みなさんが住んでいる地域で、発生が多い寄生虫疾患を把握しておくとよいと思います。

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【参考】

※ 日本獣医内科学アカデミー編(2014)『獣医内科学 第2版 小動物編』文永堂出版.

【画像】

※ xkunclova, HELL-FOTO, Ezzolo / Shutterstock

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