※2023年5月12日情報更新
最近は気温がぐっと下がり、朝晩の冷え込みが厳しくなりました。この時期に多く見られるようになる症状として、おねしょや尿もれなどといった尿トラブルが挙げられます。
今回はおねしょの原因や関わりのある病気、ご家庭でできる対策などについて、獣医師である筆者が解説していきます!
■どうして尿もれするの?
・子犬の場合
おしっこを膀胱のなかに溜めているとき、通常は尿道が筋肉(尿道括約筋)によって締め付けられているので閉じた状態になっていて、おしっこが外に出ないようになっています。しかし、子犬の場合は身体の機能が成犬ほど発達していないため、筋肉がきちんと締まっていない状態です。
そのため興奮するとすぐに筋肉が緩みやすく、尿道が開いておもらししてしまうことがよくあります。多いのは、飼い主さんが帰宅したときに大喜びして漏らしてしまう、いわゆる「嬉ション(うれしょん)」とも呼ばれるタイプ。このタイプを止めさせたい場合は、できるだけ興奮させないように対応していくことが大切です。
・シニア犬の場合
私たち人でも年齢が上がると、身体の機能が落ちてくることでおもらししやすくなると言われていますが、シニア犬でも同じです。
仕組みは子犬の場合と同じで、尿道を締めている筋肉が衰えて力が無くなってくるため、締付けが弱くなり尿道が開いておもらししやすくなります。ただし、シニア犬の場合は、その他のメカニズムも関わっています。
通常は尿を出すかどうかというのは脳が決めていて、脳からの指令で身体が動いているのですが、高齢になると脳の機能が落ちることがあります。そうなると、脳への指令がうまくいかず、尿が出るのに時間がかかったり、おしっこをした後にも尿道がなかなかすぐに閉まらずにポタポタと垂れたり、寝ているときに気づかないところでおもらししてしまうことがあるようです。
ぜひ注意してみてあげてくださいね。
■尿もれをしてしまうとき考えられる病気は?
・前立腺肥大(オス犬)
前立腺肥大は去勢していないシニア犬に見られがちで、とくにドーベルマン、ジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリーバーに多いとの報告があります(※1)。
前立腺が大きくなることで、おしっこを膀胱にあまり溜められない状態になり、おもらしをしやすくなります。しかし、この場合には他の症状(おしっこや便を出すときに力む・便秘・おしっこがポタポタ垂れる・体重減少など)も見られるようになりますので、これらの症状がでてきた場合は動物病院でチェックしてもらうようにしましょう(※1)。
・尿道括約筋機能不全・USMI(メス犬)
避妊手術をした中型~大型のメス犬に多く見られるのがこのタイプです。イギリスでは、一般の動物病院に連れてこられるメス犬に見られる尿失禁は病気全体の3.14%を占め、とくにアイリッシュ・セッター、ドーベルマン、ラフ・コリー、ダルメシアンに多く見られると報告されています。また、9~12歳で症状が見られやすいという結果も出ています(※2)。
特に、大型犬が1歳未満の早い時期に避妊手術を受けるとホルモンのバランスが変わり、尿道括約筋と呼ばれる尿道を支えている筋肉が落ちることで、尿道が開いておしっこが漏れやすくなると考えられています(※3)。そのため、この病気の場合の治療にはエストロゲンなどのホルモン剤がよく提案されます。
・膀胱炎
特にシニア犬で尿道や膀胱の感染が起こると、炎症を起こしているために、ちょっとした刺激でおもらしをしやすくなります。この場合、ポタポタ垂れるだけでなく、おしっこの回数が増えたりおしっこの色が白っぽくなったり、濃縮されてドロっとしたり臭いがきつくなることがありますので、よく注意して見てあげてくださいね。
■家でできる尿もれ対策
犬も高齢になってくると、脳の機能が衰えたり筋肉が落ちたりすることにより、おもらししやすくなります。脳トレを意識してみたり、お散歩にいったときにさまざまな香りを嗅がせて良い刺激を与えたりするなど、ちょっとした工夫もおもらし対策になるのではないでしょうか。
そして意外に気づかれにくいのが、おもらしが繰り返されておしっこが周りの毛についたままになっていると、お尻まわりの皮膚がただれやすいという点です。皮膚が赤くなり、痛くなったり痒みが出たりすることで余計に悪化することがよくあります。おしっこした後、濡れたままだと雑菌が増えやすくなりますので、軽く洗浄して低温のドライヤーで乾かすことをおすすめします。長毛種の場合は、まわりの毛をカットしてあげた方が清潔に保ちやすくなります。
また、衛生管理にハーブやアロマセラピーが役立つこともあります。
おもらし対策としておむつはとても手軽で便利ですが、おしっこした後はすぐに取り替えないと蒸れやすく皮膚がかぶれてしまうことがありますので、1日のなかでチェックする時間を決めてメモしておくと管理しやすくなりますよ。
性別や、年齢によっておもらしの原因は変わります。飼い主さんが普段から気をつけていても、病気になってしまうことはありますので、気がついたときはできるだけ早めにかかりつけの獣医さんに相談してくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※1 Das MR, Patra RC, Das RK, et al. Hemato-biochemical alterations and urinalysis in dogs suffering from benign prostatic hyperplasia. Vet World 2017; 10(3): 331-335.
【画像】
※ Zayats Svetlana,Olimpik,Ilze Filipova,Mary Lynn Strand / Shutterstock
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