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【獣医師執筆】猫に歯磨きって必要?歯磨きを嫌がるときは?猫のため上手な歯磨きの方法を知ろう!

高橋身和

獣医師
高橋身和

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【獣医師執筆】猫に歯磨きって必要?歯磨きを嫌がるときは?猫のため上手な歯磨きの方法を知ろう!

人は毎日歯磨きを行っていますが、猫は必要なのだろうかと思ったことはありませんか? 実は、猫にも歯磨きは重要! 特に、口の中にトラブルが起きると猫は食欲が落ちてしまう子がとても多いのです。

今回は、歯磨きをしないことで起きやすくなる病気、おうちで出来るデンタルケアについてお話しします。

歯磨きしないとどうなっちゃうの?

猫に歯磨きって必要?歯磨きを嫌がるときは?猫のため上手な歯磨きの方法を知ろう!
出典:https://www.shutterstock.com/

食べかすが、歯の表面や歯周ポケット(歯茎と歯の隙間の部分)に入り込み歯垢に変化し、そこに歯周病菌が住み着きます。歯周病菌は分泌物を出して歯石を作り、そこを住み処としてさらに多くの歯周病菌が住み着くようになります。すると、歯茎に赤く腫れるような炎症が起こったり、歯周病菌が作り出す物質が唾液をネバネバさせたり、口臭を引き起こします。これがいわゆる「歯周病」と呼ばれる状態です。

 

■確認しておこう!歯周病の兆候と症状

猫に歯磨きって必要?歯磨きを嫌がるときは?猫のため上手な歯磨きの方法を知ろう!
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初期

炎症によって歯茎が赤くなる歯肉炎、歯の周囲の歯肉が赤くなる歯周炎がゆっくりと進行していきます。この段階では、猫に症状はほとんどないので、気づかない飼い主さんも多いです。

中期

歯の表面に歯石が付着しザラザラしてきて、そこに接している頬の内側に口内炎が発症して痛みが起こることがあります。口を触られると怒ったり、ドライフードを食べることを嫌がってくると、痛みを感じている可能性があります。

また、口を気にして前足で顔を洗うような仕草を頻繁にする子もいます。実際にその仕草を目撃していなくても、前足の内側の毛が常に唾液で濡れていたり、その部分が茶色く変色していたら口元を気にしているサインです。

後期

歯周ポケット内の歯周病菌が、さらに歯の根元まで侵入していきます。そこで感染が広まり、歯の根元に膿が貯まる「根尖膿瘍」という状態に。そしてある日突然、膿が貯まっている歯がある方のほっぺたがぷっくりと腫れ上がります。

また、歯の根元への感染は、歯や歯が埋まっている顎の骨を溶かしてしまい、歯が抜けてしまうことに繋がります。

この段階では口臭がとてもきつく感じられたり、よだれを垂らしていたり、口元を触られるのをすごく嫌がる子がほとんどです。また、顎の骨もかなり弱っているため簡単に骨折してしまうので、口元を触る際には注意が必要です。

 

■歯周病の治療方法「スケーリング」とは

猫に歯磨きって必要?歯磨きを嫌がるときは?猫のため上手な歯磨きの方法を知ろう!
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一度付いてしまった歯石は、歯磨きで落とすことはできません。治療としては、麻酔をかけて歯石を取り除くスケーリングと呼ばれる処置や、悪くなってしまった歯を抜くことが必要となります。歯の歯石除去に全身麻酔というと、オーバーな気がしてしまうかもしれませんが、人で行われているスケーリングと同じ処置です。

猫の場合、スケーリングの重要性を本人が理解することができないので我慢するのが困難であること、スケーリングは不快な音が発生するので恐怖を伴う可能性があること、歯周ポケットの中の歯石を取り除く際に伴う痛み、抜歯が必要な場合の痛み、これらを考えると猫のためにも全身麻酔は最善の処置となってきます。

抜歯の場合、人は部分麻酔のみで行うことがほとんどだと思います。しかし、猫の場合、抜歯でかなりの痛みが予想される際には、部分麻酔と全身麻酔を併用して少しでも全身麻酔薬の量を減らし、体の負担を軽減する処置をとる動物病院もあります。

仮に、無麻酔で処置を行った場合、嫌がる猫を押さえつけて処置をすることが予想されます。その場合、嫌な経験が悪い記憶として残ってしまいます。その後、歯磨きをする事ができなくなってしまう可能性があり、お口の健康を長期維持することが難しくなります。

100%安全な麻酔はこの世には存在しませんが、猫の状態を処置の前に身体検査、血液検査を通じてきちんと評価することでリスクを軽減することはできます。

その子の状態によるリスクとメリットを比べたうえで、どのような治療が最善か主治医と相談しましょう。

  

■歯のトラブルを予防するには子猫のうちから

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生後5~6ヶ月で、乳歯から永久歯に生え代わる時期から歯磨きを始めるのがベストです。その前からもごほうびを使いながら、口元や口の中を触る練習を少しずつ始めるのもおすすめです。

今まで歯磨きをしたことのない猫は、まず歯磨きトレーニングが出来るようになってからスケーリングを実施すると、よりスケーリングの効果が長持ちするので、ぜひチャレンジしてみましょう。

 

■家庭でできる歯磨きの方法

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・ガーゼや綿棒を使って磨こう

猫は口が小さいので、歯ブラシを使うことはかなり難しいです。そのため、指に水で濡らしたガーゼを巻いたり、綿棒などで歯の表面をこすったりすることで、歯垢を取り除くことがおすすめです。乾いたガーゼや綿棒を使用すると、歯茎に当たった際に痛みを生じることがありますので、必ず"水で濡らしてから”使用しましょう。

猫用の歯磨きペーストも必ず使用しなければならない訳ではありませんが、愛猫が気に入る味であれば使ってあげるのがよいでしょう。歯周病菌が作り出す口臭や、お口のネバつきの原因物質を分解する酵素が入っているペーストを動物病院で取り扱っている場合もあります。どのような物がご自分の猫に合うのか、かかりつけの獣医師さんに相談してみるのもひとつです。

・毎日の歯磨きが理想

歯垢は3~4日で歯石に変化し始めますので、本来は毎日歯磨きを行うのがベストと言われています。ただ、毎日は難しいという方は1日目は右側の歯、2日目は前歯と犬歯、3日目は左側の歯など、部分的に行う方法もあります。

歯磨きのタイミングは、食前でも食後でも構いません。飼い主さんの時間の余裕があるときに行ってあげてください。

・どうしても歯磨きさせてくれないときは… 

また、猫ちゃんの場合、どうしても歯磨きを嫌がる子もいるかと思います。歯周病が進行してくると、歯磨きに痛みを伴う可能性が高いです。そんな状況で、嫌がる猫を無理矢理押さえつけて歯磨きを行うと、飼い主さんと猫ちゃんの信頼関係に影響を及ぼす可能性があるので止めましょう。

どうしても難しい場合は、歯磨きペーストを舐めさせるなど、可能な範囲でデンタルケアを行いましょう。

歯磨きを毎日していても歯周病を完全に防ぐことは難しいですが、歯周病の進行を大きく遅らせることはできますのでスケーリングの頻度を減らすことができます。

定期的な歯のチェック、ご自宅での歯磨きを行い、最低限のスケーリングをすることで愛猫の健康を保っていきましょうね。

 

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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