※2020年8月10日情報更新
わんちゃんが大好きな人たちのなかには、愛犬たちが日々どんなことを感じて、どんな気持ちでいるのか知りたいと思っている方は多いかと思います。
筆者もそのひとり。なかでも、わんちゃんが持つ感覚のなかで、私たち人間がどうしても共有できないことは“嗅覚”を使って知ることのできる世界。散歩中に残されたたくさんのニオイをクンクンして楽しむ姿を見て、“1日だけわんちゃんになれたら!”と思ったことさえあります。
今回はわんちゃんの嗅覚を通じて感じるニオイの好き、嫌いについてお話したいと思います。
■犬の嗅覚が優れているのはなぜ?
わんちゃんは優れた嗅覚を使って、私たち人間の仕事を助けてくれています。麻薬探知犬、救助犬、警察犬、がん探知犬など、例をあげたらきりがないほどたくさんの場で活躍しています。わんちゃんの嗅覚が優れているのは、こんな理由だと考えられています。
・鼻腔にあるニオイをキャッチする嗅細胞の表面積が、人と比較すると広いため。
・わんちゃんの濡れた鼻で、ニオイの物質を有効的にキャッチすることができるため。
・私たち人間にはない、ヤコブソン器官というフェロモンを感知することができる器官があるため。
・クンクン何度も嗅ぐことで、連続してたくさんのニオイの元を嗅ぐことができるため。
■犬はどんなニオイが好き?
個体差もありますが、一般的にわんちゃんが好きとされるニオイがあります。そのニオイを嗅いで安心したり、興奮したり、喜んだり。では、どんなニオイに魅力を感じるのでしょうか? 筆者の経験をもとにご説明します。
(1)家族のニオイ
ご家族のニオイはわんちゃんにとって安心をもたらすのではないでしょうか。ご家族のニオイが特によくついているシャツや靴下などは、わんちゃんにとって安心するニオイです。慣れない引っ越し先や長いお留守番をするときは、ぜひご家族のニオイのするアイテムを置いてあげてください。
(2)食べ物のニオイ
雑食であるわんちゃんにとって、人の食べ物はたいへん魅力的なものです。
(3)雌犬のニオイ
わんちゃんの排泄物のニオイには、たくさんの情報が詰まっています。そのため尿や糞をなめたり、食べたりしてしまう子もいます。特に発情している女の子の尿中にはフェロモンが含まれており、このニオイで男の子が発情してしまうこともあります。男の子のわんちゃんにとっては好きなニオイです。
(4)有機物のニオイ
小動物や、ミミズのニオイもわんちゃんの本能を駆り立て、興奮させるニオイのようです。わんちゃんは有機物のニオイが大好きだからです。
(5)香草のニオイ
わんちゃんはハーブなどの植物のニオイも好みます。自分の体調に合わせてハーブを食べるといわれるほどです。ハーブの穏やかな香りは、緊張したわんちゃんを癒す効果があるようです。
■犬はどんなニオイが苦手?
わんちゃんにも苦手なニオイがあります。個体差もありますが、たばこ、香水、柔軟剤などの化学合成物質のニオイや、アルコールのニオイは、多くのわんちゃんが共通して苦手なようです。以前、お酒を飲んで帰ってくるお父さんを襲うわんちゃんのケースを診たことがあります。嗅覚の優れたわんちゃんにとっては、決して好ましいニオイではないのかもしれません。また、お酢のような酸味のあるニオイを苦手とする傾向があるため、無駄吠えなどの問題行動の修正にお酢のニオイを使うこともあります。
わんちゃんにとってはさまざまなニオイから情報を得ることはとてもわくわくすることですし、脳にも良い刺激になります。ですので、散歩中はニオイ嗅ぎをする時間をぜひ与えてあげてくださいね。人が好むニオイが苦手なこともありますし、私たちが苦手なニオイをわんちゃんが好むこともあります。わんちゃんとの暮らしには不思議なことがまだまだたくさんあるようですね。
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【参考】
※ 林良博監修(2000)『イラストでみる犬学』pp.46-47,講談社
【画像】
※ anetapics,eClick,unbrokenworld,Taras Verkhovynets / Shutterstock
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