わんちゃんが穴に頭を入れていたり、狭いところを覗き込んだり、そこにはまったりしている姿は、SNSにアップされて話題になることも少なくありません。どうしてうちの子は、狭いところに入るのかしら? 穴が好きなのかしら? ……このような行動の心理について、獣医行動診療科認定医の筆者が考える仮説をご紹介します。さらに、この行動を利用することができる「体と心のケアに必要な行動」についてもご紹介しますね!
■なんで穴に頭をつっこんだり、狭いところに入りたがるの?
わんちゃんの行動の理由としては、大きく2つに分けられると筆者は考えます。
(1)犬の本能的な動きだから
・狭くて、暗い場所が落ち着きやすい
犬はオオカミが祖先と考えられている動物です。オオカミは、洞穴のように狭い場所を安全な住まいとして活用していたことから、犬も同様に狭い場所や暗い場所が安心しやすいのではと考えられています。
・物を把握するための確認作業
犬は、嗅覚が非常に発達している動物です。匂いを嗅ぎながら、色々な物を認識しています。そのため、顔を近付けて匂いで確かめるような行動が多く出現します。筆者は以前、ボクサーや狆(ちん)などの鼻がぺちゃんこのわんちゃんを飼っていましたが、匂いを嗅ぐときは、顔が全部地面についていたり、穴に入れながら確認作業をしたりしていました。遊び行動や捕食行動でも、このような行動が確認されることがあります。
・飼い主さんに注目してもらいたい
大好きな飼い主さんに注目してもらいたくて、そのような行動をしている場合もあります。たとえば、穴を覗き込んでいたら、だいすきなママが「あら! どうしたの~? かわいいわね~」などど、過剰に反応してくれたとします。そうすることで、わんちゃんは「この行動をするとママは構ってくれる!」と学習していきます。その結果、穴を覗き込む行動が増えていくということもあるようです。
(2)病気だから
狭いところに入ったり、穴にはまり込んでしまったり、どこでも頭を突っ込んで動けなくなるなど……一見かわいらしい行動のように見えても、病気である場合もありますので注意が必要です。
高齢期で発症することもある認知機能不全や、脳腫瘍、神経疾患、視覚異常などの疾患で、このような行動が発見されることがあります。いつもと違う行動が出現した場合は、まずはかかりつけの獣医師さんにご相談されることをおすすめします。受診のポイントとしては、スマホなどを使い動画を撮影して病院に持参してください。診断の手助けになります。
■穴に頭を突っ込む習性を活かしたしつけ
穴に入ったり、狭いところに顔を突っ込んだり、狭くて暗いところに入ることが得意であったり……こんなわんちゃんの行動習性を利用して、「体と心のケア」に必要になる行動を楽しく教えてみましょう!
今回ご紹介した動きを利用しながら、筆者の病院で「エリザベスカラー」「口輪」「クレート」を教えている動画をご紹介します。
ねこちゃんの動画もありますが、学習理論はわんちゃんと一緒ですので参考にしていただき、楽しく愛犬と練習してみてください。
日ごろから楽しく練習しておくことで、わんちゃん達が心身共に健康に過ごすアイテムになっていくはずです。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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