※2020年12月7日情報更新
不安や恐怖を感じている犬のボディーランゲージは、多岐に渡ります。その中には、比較的読み取りやすい行動パターンも多くあります。不安や恐怖のレベルが強くなりすぎた場合は、多くの疾患が発症することがあるので、飼い主さんは注意が必要です。
不安や恐怖の読み取り方と関与する代表的な行動学的疾患について、獣医行動診療科認定医の筆者がご紹介していきます。
■怖がっている犬の行動
恐怖や不安を感じている犬の行動については、さまざまな書物でも紹介されています。当院行動診療科の動物看護師日記でもご紹介していますが、見過ごしてしまうような行動が、実は不安や恐怖の表現であることがあります。
・ゆっくり動く
・鼻をペロッと舐める
・飼い主さんから離れていく
・あくびをする
ご自分のわんちゃんの行動に当てはめて考えてみてください。小さな行動に気づいてあげられるようになると、恐怖や不安を増強させずに対応できるようになるかと思います。
■恐怖や不安が関連した行動学的疾患
「獣医行動診療科」という診療科をご存じでしょうか? 内科、外科、皮膚科などと同じように、獣医療の1つの専門科として認知されています。獣医師国家試験にも出題される分野なのです。恐怖や不安が関連した疾患について、代表的な疾患をご紹介します。
(1)分離不安
飼い主不在時にのみ認められる問題行動になります。行動学的(破壊行動、吠え、不適切な排泄など)、生理学的症状(下痢、嘔吐、震えなど)も発症します。
(2)全般性不安障害
明確なきっかけがないのに、常にリラックスできずに生活している状態です。小さなことにも過剰に反応してしまいます。
(3)恐怖症(人、場所、物、音など)
恐怖を感じる刺激があると、逃避や不安行動、震えなどの行動が発現します。恐怖を感じる刺激を特定して診断を行い、治療を計画します。重症のわんちゃんの場合、出血するほど破壊行動をしたり、パニックになり逃走したりするなどの症状を発現しているケースもあります。
(4)恐怖性・防御性攻撃行動
恐怖を感じたときに恐れや不安の行動学的・生理学的徴候を伴って生じる攻撃行動です。行動パターン、生理学的徴候などを分析して診断します。当院行動診療科で診断する攻撃行動の中で、一番多い診断名となります。
つまり、恐怖から逃れられずに攻撃行動を示してしまう子が多いことが分かります。恐怖や不安を感じている行動を読み取れれば、避けられる攻撃行動は実はとても多いのです。
恐怖や不安状態が続くことで、身体的疾患につながることもあります。また、これらの状態が続くことで、犬のQOL(Quality of Life)が大きく低下することが予想されます。適切な治療が必要なこともありますので、上記のような症状がある場合は、専門獣医師に相談されることをおすすめします。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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※ Blanscape,StudioCAXAP,Anton Papulov / Shutterstock
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