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人工的?怖いもの?知っておきたい「薬」についての正しい知識~前編~

北森隆士

獣医師
北森隆士

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人工的?怖いもの?知っておきたい「薬」についての正しい知識~前編~

体調が悪いとき、ケガの治療をするとき、動物病院ではしばしば薬を使用します。当たり前のように使っていますが、そもそも「薬」とはどのようなものなのでしょうか?

前職は製薬会社の研究職だった筆者が、薬についての基礎知識を解説いたします。

■薬の起源

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出典:https://www.shutterstock.com/

人々は古来より、病気を治すために「植物」を使用してきました。“くすり”の語源は、草煎り(くさいり)で、草を煎じて飲むこと。漢字の「薬」は、草かんむりに楽ですが、楽は刻むという意味。つまり、“草を刻んで用いる”ことから、薬という漢字ができたのです。

■いわゆる現代の薬の起源

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人工的に合成された世界初の薬は、今でも世界の医療に貢献している解熱鎮痛薬の「アスピリン」です。ヨーロッパでは、ヒポクラテスのころから、ヤナギの葉や樹皮に痛みを取る効果があることが知られていました。

19世紀には、ヤナギの作用の主成分がサリチル酸であることが発見されました。しかし、そのまま飲むと胃腸障害の副作用がひどいので、人工的に構造を少し変え、副作用を低減したものが、アセチルサリチル酸……いわゆるアスピリンです。

合成医薬品の出発点となった薬は、民間療法で用いられた植物由来の物質を抽出し、副作用を軽減するという洗練された形で、私たちの前に登場したわけです。

■薬は全て自然界のものから作られる

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薬は、全て自然界にある物質から作ります。当たり前ですが、無から有はつくれません。有とは、つまり自然にあるものを土台に、アスピリンのように効果をより高め、副作用をより減らす方向で、薬が誕生します。

薬の元となったものから、特に有名なものをご紹介します。

・タミフル(インフルエンザの薬)・・・植物トウシキミの果実・八角由来

・フィラリアの薬・・・抗生物質と同様、カビが産生する物質由来

・心臓の薬・・・獣医が最も多く使用するACE阻害剤は蛇毒由来

・ガンの薬・・・獣医がよく使うビンクリスチンは植物由来、アドリアマイシンはカビ由来

・免疫抑制剤・・・日本で発見されタクロリムスは、筑波山の土壌のカビ由来

・コレステロールの薬・・・青カビから日本人が発見

■実は、漢方薬は日本で生まれたもの

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漢方薬は、中国を起源に日本で独自に発達した薬で、2種類以上の主成分(薬草)を含む植物・鉱物由来の薬です(※1)。中国を起源とする伝統医学は「中医学」と呼ばれ、使用する薬も「中薬」と呼称し、漢方薬とは区別されます。

■民間(療法)薬と漢方薬の違いは?

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前述の項「いわゆる現代の薬の起源」でも触れましたが、民間薬とは古来より使用される、基本的に“単一の”草で構成されているものを指します。したがって、2種類以上の主成分を含む漢方薬とは概念が異なります。

■サプリメントと薬の違いは?

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サプリメントは、食品です。薬ではありません。しかし、なかには薬として認可されているサプリもあります。例えば、魚油のEPAはサプリとして有名です。このEPAは、実は高濃度になると薬に分類されます(※2・3)。

なぜ市販されているサプリが、薬のグレードになるのでしょうか? それは、ある一定量以上のEPAには効果が“明確”に確認されているからです。効果が確認されるということは、論理的に副作用も予想されます。EPAには、ある濃度で体内に入ると出血傾向がでる可能性があります。そのため、医師の処方の薬の範疇になるのです。

 

いかがですか? 

著者が動物病院を開院したときに、飼い主さんから「薬は石油から作る、自然ではないものだから怖い……」という話を聞いたことがあります。研究者と、一般の方々がもつ薬に対してのイメージのギャップに、かなり戸惑いました。犬・猫はもちろん、飼い主さんも時と場合によって頼ることのある薬。正しく理解することで、安心につながるはずです。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 漢方薬(かんぽうやく)とは、どういうものですか。(日本製薬工業協会)

※2 医療用医薬品 : エパデール(KEGG データベース)

※3 EPA(イコサペント酸)について(大正製薬)

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