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【獣医師執筆】布団の選び方どうしてる?行動診療科獣医師が経験した犬猫の布団事情

白井春佳

獣医師
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【獣医師執筆】布団の選び方どうしてる?行動診療科獣医師が経験した犬猫の布団事情

皆さんはどのようにして愛犬、愛猫ちゃんのお布団を選んでいますか? 筆者は、行動診療科という人でいえば精神科や心療内科の診察を行っています。実は、お布団1つで行動が変化することもあるのです!

今回は、簡単そうで奥が深い、お布団事情と行動学の症例について筆者の考えをご紹介します。

■ハウストレーニングで布団が大活躍した猫の症例

布団の選び方、どうしてる?行動診療科獣医師が経験した犬猫のお布団事情
出典:https://www.shutterstock.com/

・ハウストレーニングで活躍する布団の選び方

移動用のハウス(クレート、キャリーバッグなど)の練習をされている方も多いかと思います。クレート内で安心して過ごせるために、お布団選びも大切です。筆者が重視するお布団選びのポイントを3つお伝えしますね。

(1)安心できる匂いがついている

わんちゃん・ねこちゃんは嗅覚が優れた動物になります。いつも使っている安心できる匂いや、大好きな飼い主さんの匂いがする素材を好む子もいます。

(2)普段から好んで使う素材

日ごろから愛犬・愛猫が好む素材を観察してみましょう。フワフワ? ちょっと厚め? ご自分のわんちゃん・ねこちゃんが滞在する時間が長い素材を探してみてくださいね。

(3)外気温に合わせる

季節や外気温、置く場所によって敷物を検討してください。ハウスの種類によっては、熱がこもりやすかったり、寒かったりすると思います。温度に合わせた調整も必要でしょう。

・症例紹介

怖がりねこちゃんのモモちゃん(仮名)。お客さんが来ると、怖くなり攻撃してしまいます。そこで、安心して待機できるハウスの練習を開始しました。オヤツがあれば入れるようになったものの、なかなか中で落ち着いて眠ることができません。家での生活をよく聞いてみると、とっても大好きなカマクラ型のベッドがあり、よくそこで寝ているとのこと。早速そのベッドをハウスに入れてみたら、スヤスヤとリラックスしてよく眠れたとのご報告が飼い主さんからありました。同じ場所でも、大好きな寝床がご褒美と相乗効果を発揮した瞬間でした。この事例からは、安心できる素材、匂いを選択することは、ハウストレーニングにも有益であることが伺えます。

 

■高齢犬の夜鳴きが改善した布団の症例

布団の選び方、どうしてる?行動診療科獣医師が経験した犬猫のお布団事情
出典:https://www.shutterstock.com/

・高齢犬の布団の選び方

高齢期に入ると、お布団選びも重要になります。寝る時間が長くなりますので、安定した睡眠を送るためにも、病気の予防をするためにも、とても大切です。筆者が重視する高齢期のお布団選びのポイントを3つお伝えします。

(1)体の圧力を分散できる素材

眠る時間が長くなりますし、寝返りが難しくなることも増えるでしょう。体の圧力が一点に集中するような素材だと、褥瘡(床ずれのこと)などの原因や関節に負担をかけることもあります。調査を重ねて、体の圧力を上手に分散できる素材のマットが販売されています。研究データがしっかりしている物だと安心かと思います。

(2)洗いやすい素材

排泄の失敗、下痢や嘔吐など、汚れてしまう回数が増えてしまうかもしれません。洗いやすい素材だと、すぐに洗えて衛生的です。衛生的に使える物を選択することもポイントでしょう。

(3)体温調整がしやすいもの

暑さ、寒さに関して、体温調整がしやすい素材がよいでしょう。通気性等、調査結果などが報告されていますので、こちらもしっかりチェックしてから購入されることをおすすめします。

・症例紹介

高齢犬のポンタくん(仮名)は、お外の犬舎で暮らしています。若いときは鳴かなかったのですが、年をとってから夜中に吠えるようになりました。病気や認知機能不全症候群ではないと獣医師さんの診断もあり、飼い主さんも困ってしまいました。そんなポンタくんですが、あることを変化させただけで、夜鳴きがおさまったのです!

それは「暖かい寝床を提供した」だけ。高齢期になると、体温調整が難しくなり、寒暖の差が強いストレスになることがあります。つまり、ポンタくんは「寒くて吠えていた」という理由があったと想像されます。高齢動物の原因については、このように単純な理由だけというのは珍しいかもしれませんが、ストレス環境の要因の1つとして考えてあげることは大切ですね。また、高齢動物の場合は寝る時間が増えますので、圧力の分散がしっかりできる素材を選択することも重要です。

 

■番外編:布団を敷くと異嗜(異食)をしてしまう犬の症例

布団の選び方、どうしてる?行動診療科獣医師が経験した犬猫のお布団事情
出典:https://www.shutterstock.com/

元気いっぱい大型犬の花子ちゃん(仮名)は、なんでもかんでも口にして、食べてしまいます。布製品もボロボロにして食べてしまうので、寝床はいつも床の上です。そのため関節にはタコが何個もできており、深い睡眠もできていない様子です。異嗜をする原因はたくさん考えられますが、花子ちゃんはどうやら「退屈」「口を使って遊びたい」という欲求が強いのに、それが満たされていないことが原因として想定されました。

適切に口を使って遊ぶ方法、運動の方法、生活環境の改善などを行った結果、大きめのお布団であれば破壊したり食べたりしないで使えるようになりました。その結果、睡眠の質も向上して心身共により健やかに過ごせるようになりました。

 

布団と行動学、繋がりがないようで、実は結構深く関係していることがよくあります。その子に合った、快適で素敵なお布団を選択してあげることが、心身共に健全に過ごせる方法の1つになります。快適かどうかは、その子の眠り方、リラックスしている行動を観察することで飼い主さんにも分かると思います。「気に入っていますか~?」と愛犬、愛猫の行動を観察し、本人たちの気持ちを読み取ってみてくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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