※2020年9月15日情報更新
最近、メディアで子供の虐待が報道されることが増えています。その親たちからよく聞くのが「しつけをしたのであって、虐待ではない」という弁明。親と子どもの間で、しつけと虐待の線引きが難しいことが伺えます。
では、飼い主さんと動物の間はどうでしょうか? 案外、しつけと思って行っている行為が実は虐待ということも……。心当たりはありませんか?
今回は、しつけと虐待の線引きについて筆者の見解を踏まえ解説いたします。
■人の場合のしつけと虐待の違い
しつけと虐待にはどのような違いがあるのでしょうか。人の場合の違いを4点、筆者の見解を踏まえ解説します。
(1)行動の起こし方
しつけはルールに沿って行動を起こしますが、虐待は個人的な感情によって行動を起こします。
(2)時間のかけ方
しつけでは、子どもが悪いことをした場合、何が悪いことかを理解させどういう行動をとった方が良いかを教えます。しかし、子どもはそれがなぜ悪いことなのかすぐには理解できません。「なぜ悪いのか。その行動をしたら、誰にどんな影響があるのか」を“学ぶ”ため時間がかかります。
ところが、虐待は「今言っても分からないなら、身体に分からせる」など、子どものレベルを考えない理不尽な行動です。虐待をする親は、子どもが学ぶ過程はどうでもよく、今すぐに自分の思い通りにならなければ腹を立ててしまいます。
(3)行動に対する一貫性
仮にしつけの際に大きな声を出したり、おしりを叩いたりしたとしても、その行動にはルールに沿った一貫性があります。そのため、良し悪しは別として、不用意に行為がエスカレートすることはありません。
ところが、虐待は感情による行為のため、自分の感情が高ぶれば行為がエスカレートする場合があります。
(4)行動に対する理由
しつけは、子どもの将来のため、どのような行動をとってもらいたいかを考えて繰り返し行います。そのため、子どもを叱る明確な理由があり、子どもが理解できるように何度も説明して、導こうとします。
虐待は、子どもの将来のためなどは関係なく、今の言動が気に入らないために行われる行為です。
そのため、明確な理由があるとすれば親の“感情”です。どれだけ「お前のためだ!」などのそれっぽい理由をつけても、最終的には「気に入らないことをするな! 親の言うことを聞け!」という感情に集約されます。
人の場合、しつけは子どもの将来のためになることが前提で、決して感情的になったり、その場限りになったりするものではないということですね。このことはペットの場合も同じではないでしょうか。
■なぜしつけが必要?
人とペットがともに楽しく健康的に暮らし、社会全体が幸せに共生していくためには、ペットのしつけは欠かせません。
でも、そもそもペットのしつけとは何なのでしょう? 無駄吠えやイタズラをさせないよう教えることがしつけでしょうか? それとも、オスワリやマテ、フセなどを教えることがしつけなのでしょうか?
しつけは単に“ペットをしつける”というだけの意味ではなく、“ペットと飼い主さんがともにマナーを学び、実行する”ことなのです。どんなに物覚えがよく素直なわんちゃんでも、飼い主さんにマナーを守る気がなければどうなるでしょう。飼い主さんの命令は聞くようになるかもしれません。しかし、人間社会で暮らすためのしつけは、うまくいかないのではないでしょうか。
■ペットのしつけで暴力は禁止!
ペット、特にわんちゃん・ねこちゃんは飼い主さんが思っている以上に記憶力もありますし、飼い主さんの感情を読み取ることができます。そのため、人の親が子どもをしつけるように、飼い主さんは十分に時間をかけてペットに理解をしてもらうことが大事です。その時、しつけと言ってペットに暴力は振るわないことが大事です。
しつけとして、特にやってしまいがちなことに「叩く」という行為があります。
・人に吠えたから叩いた
・部屋の中でおしっこをしてしまったから叩いた
・ごはんを残したから叩いた
ペットは、どの行動も悪いことだとは思っていません。しかし、悪いこともしていないのに飼い主さんに叩かれたという記憶が残ります。その結果、ペットは叩かれることが嫌だから、飼い主さんに対して威嚇したり、噛みついたりして攻撃的になってしまうのです。
噛むから叩く、叩かれるから噛む、という悪循環になってしまうので、しつけであろうと暴力に入る行為はするべきではありません。
たとえ話が出来ないとしても、ペットと意思を通じ合わせるのは可能だと筆者は考えます。忍耐強く、じっくり教えてあげれば、きっとペットも応えてくれるもの。決して暴力に走ってはならないのです。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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※ しつけで困っている飼い主さん必見!経験者が語る「しつけのアドバイス」
【参考】
※ ペットの飼い主なら知っておくべき虐待としつけの境界線。 - 好奇心は猫の塊
※ 犬の躾。叩く事は間違っていますか? - Yahoo!知恵袋
※ そもそも、なぜしつけが必要なの? - Pet×Happy
【画像】
※ Melounix,TORWAISTUDIO,Soloviova Liudmyla,Kzenon / Shutterstock
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