わんちゃんが人をペロペロ舐める行動、愛犬家の皆さんであれば毎日のように経験しているかもしれません。犬が人を舐めるという行動は、興味深い行動の1つですが、「舐める」行動を通じた犬の気持ちについて考えられる理由を解説していきます。
■人の顔を舐める理由4つ
(1)オオカミからのなごり行動
オオカミの子供は、親に食べ物をねだるときに口元を舐めて吐き戻した食べ物をもらいます。この時に行っていた行動のなごりとも言われています。
(2)人の情報を得る手段
口の周りは洋服などを着ていないので、その人の情報をキャッチしやすい部位にもなります。そのため、単純に情報を得ようとしている行動だという説もあります。
(3)警戒していないサイン
危険や警戒する人物の口元を舐めることはしません。ですので、信頼感がある相手であることを示しているという考え方もできます。
(4)学習によるもの
犬が発現した行動に対して、自分にとって「よいこと」が生じると、その行動は増えていきます。犬は、日常的に「何が有効な行動であるのか」を学習しながら生活しています。つまり「舐めたことによってよいことがある」と経験した犬は、また次も「舐める」という行動を繰り返しやすくなります。
たとえば、「お父さんが新聞を読んでいる」→「顔を舐める」→「お父さんが反応してくれて遊んでくれる」→「楽しい」といったイメージです。つまり、このときに犬は「お父さんが新聞を読んでいて、自分が遊んでほしいときは舐めると有効である」と学習するわけです。似たようなご経験、皆様もあるのではないでしょうか?
■ストレスのサインであることも?
アメリカで行われた調査ですが、セラピードッグのストレスを研究した論文があります。唾液コルチゾールと行動分析によって、犬のストレスを評価した研究です。
そこでは、最も強いストレス行動を示した犬が、最も強い友好的な振る舞いを見せたことが判明しました。この友好的な振る舞いの項目には、「舐める」という行動が含まれていました。つまり、ストレスを感じた場合にも人を舐める行動を示す可能性があると考えられます。楽しい、嬉しい場面以外でも舐める行動は出現する可能性があることを示す研究もあるということを頭の片隅に入れながら、愛犬の行動を理解してあげることも大切だと思います。
「人を舐める」という同じ行動でも、わんちゃんの気持ちはさまざま。総合的にその子の行動や背景を考えていただきながら、どんな気持ちなのかをチェックしてみてくださいね。
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【参考】
※ 武内ゆかり(2016)『イヌとネコのふしぎ』P101、偕成社
※ McCullough, A., Jenkins, M. A., Ruehrdanz, A., Gilmer, M. J., Olson, J., Pawar, A. & Grossman, N. J. (2017). Physiological and behavioral effects of animal-assisted interventions on therapy dogs in pediatric oncology settings. Applied Animal Behaviour
【画像】
※ InBetweentheBlinks,MagicalKrew,Unchalee Khun / Shutterstock
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