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【獣医師執筆】犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について

北森隆士

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北森隆士

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【獣医師執筆】犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について

202079日情報更新

人間の場合、呼吸器の病気といえば、風邪(上気道感染症)やインフルエンザのような感染症がまず頭に浮かびます。そして、その症状は咳です。「犬も風邪をひくのですか?」と、しばしば質問されますが、ひきます。

これがそのときの犬の咳です。思ったより口はあきません。では、犬の呼吸器の病気は、人間のように、咳を主体とした感染症に気をつけていればよいのかといえば、もちろん咳も重要ですが、少々状況が異なります。犬の場合は、命に関わる呼吸器系の病気が、日常多いのです。それでは注意すべきケースを解説します。

■1:ケンネルコフ(子犬の慢性化した咳)

犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について
出典:https://www.shutterstock.com/

ペットショップなどで、子犬にまん延する咳が主体の感染症です。体力の低下、肺炎を併発して死亡することもあるので、子犬の咳は直ちに病院へ相談してください。

■2:パンティング(浅くて速い呼吸)

犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について
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犬は1分間に20回程度、鼻呼吸をします。犬は発汗で体温を下げられないので、散歩や走って体温が上がると、ハアハアと口から水分を蒸発させて体温を下げます。これがパンティングです。その際の呼吸数は、最大1分間に300回にもなります(※1)。

そして、パンティングでも体温が下がらない状態が、いわゆる熱中症。夏の暑い日、室内でこれが見られたら直ちに対処が必要です。

■3:開口呼吸・努力呼吸・犬座姿勢・頸を延してする咳

犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について
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安静時に常に口をあけて(開口呼吸)肩で息をする(努力呼吸)場合は、非常に危険な状態です。また、胸が苦しいと常に犬座姿勢(おすわりの姿勢)になります。胸に水が溜まっている可能性があり、ちょっとした姿勢の変化で死亡することがあります。

頸をのばしてする咳も、単純な風邪とは違い肺に近い部分に症状があり、早急の対処が必要です。

■4:心臓病に関係する咳

犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について
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意外と知られていませんが、心臓が悪いと肺に水が溜まって咳が出ます。非常に危険な咳です。運動後や、興奮時に咳が出るようになった場合は、直ちに病院へ行きましょう。

■5:ストライダー(ガーガー、ゼーゼー、ブヒブヒなどの音を発する症状)

犬も風邪をひく!? 注意したい「呼吸器の疾患」について
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気管の変形や、短頭種気道症候群で見られます(後述)。

■6:短頭種気道症候群

鼻の短い犬種のガーガー、ブヒブヒは、可愛く見えるかもしれません。しかし、これらの音は、呼吸がうまくできていない(空気が通っていない)音です。呼吸困難で、苦しんで死亡するおそれがあります。

(1)鼻の穴の大きさの確認

特にバグ、フレンチブルドッグ、ブルドッグの場合は、鼻の形状を確認してください。こちらの写真のように、下にいくほど鼻の孔が狭まって苦しむので、早急な手術が望まれます (※2)。

(2)常にガーガー、ブヒブヒは直ちに対処

安静時も、常にガーガー、ブヒブヒがある場合は、3~4歳までに手術をしましょう。一般の病院で可能な手術から、気管支内視鏡のような高度な設備のある病院での手術が適応の場合もあります。

(3)実際の手術前後の動画

この子は当院転院時、とても可哀想な状況でした。短頭種だからと諦められていたそうで、苦しくて食事もとれない状態でした。ここまで悪化すると、専門医での手術が適応になります。

紹介先での11時間にも及ぶ手術で、こんなに落ち着きを取り戻しました。飼い主さんが、ぜひ啓蒙に使って欲しいということで掲載します。

最後に、風邪やインフルエンザが人間と犬の間でうつるかどうかのお話をします。人間のインフルエンザは犬にはうつりません。フェレットにはうつります。人間の抗インフルエンザ薬はフェレットで研究されます(※3)。

風邪も犬にはうつりません。しかし、人間が風邪をひくような環境(乾燥や寒さ)では、当然犬もひきやすくなります。なお、「イヌインフルエンザがあるのか?」という質問もよくされます。実は、イヌインフルエンザは存在します。しかし、ほとんどが軽症で、人にはうつりません(※4・5)。

国内での発生の報告も、2017年の論文では無いと記載がありますので(※6)、現時点では無視してよいと思います。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 佐々木文彦(2008)『続・ぼくとチョビの体の違い』学窓社.

※2 Liu NC et al. (2017). Conformation risk factors of brachycephalic obstructive airway syndrome in pugs, French bullgogs, bullgogs. Plos One 12(8):e0181928.

※3 Mendel DB, et.al. (1998). Oral administration of a prodrug of the influenza virus neuraminidase inhibitor GS 4071 protects mice and ferrets against influenza onfection. Antimicrob Agents Chemother. 42(3) 640-646.

※4 犬及び猫のインフルエンザ - 公益社団法人 日本獣医師会

※5 Canine Influenza - American Veterinary Medical Association

※6 堀本泰介(2017)『犬インフルエンザ』日獣会誌, 70, 165-169.

【画像】

※ Yuttana Jaowattana, demanescale, hurricanehank, Mary Swift, Lunja, Igor Normann / Shutterstock

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