1980年代、犬の寿命は約6.2歳でした(※)。その死亡原因としては、循環器系の障がい以外にもフィラリア症、寄生虫疾患などの感染症が関与していることも多くありました。
では、現代ではどうでしょうか。2017年ごろには、犬の寿命は14.2歳(※)と、約2.2倍までに伸びています。そして、その死亡原因を見てみると、心臓病、神経障害、内分泌疾患、ガンといった、長寿になったからこそ起こる疾患で亡くなっていることが分かります。
今回は、シニアとなった犬の特徴を解説します。飼い主さんが気をつけてあげられることは何か、考えてみましょう。
■加齢に伴う体の変化
加齢に伴い一般的に見られる犬の変化として、下記の変化が挙げられます。
・皮膚・被毛:皮膚の弾力性の消失、角質化、乾燥、毛の光沢の消失、薄化、白髪
・消化器系:歯周病、唾液分泌の低下、消化吸収能の低下、結腸運動の低下、肝機能、膵臓の機能低下
・腎臓:尿濃縮能の低下
・内分泌系:膵臓機能、副腎機能の低下、甲状腺機能の変化
・感覚器系:口渇感の低下、味覚、嗅覚、視力、聴覚の低下
・筋骨格系:骨量、筋肉量・軟骨量の低下
・神経系:刺激反応性・認識力の低下、順応性の低下
・心臓血管系:心拍出量の低下、高血圧、弁の肥厚、末梢血管抵抗の増大
・代謝・その他:体温調節能の低下、免疫能の低下、嗜眠、肥満
■シニア犬は特に「肥満」に注意!
・肥満によって引き起こされる体への悪影響
高齢に伴い代謝が落ちることによって、体重増加が起こりやすくなり肥満になります。また、肥満により一般的には下記のような体への影響が起こると言われています。
・代謝の変化・・・高脂血症、インスリン抵抗、グルコース不耐性、肝リピドーシス、麻酔合併症
・内分泌障害・・・副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病、インスリノーマ、下垂体機能低下症、視床下部障害
・機能の変化・・・関節ストレス・骨格筋の疼痛、呼吸困難、高血圧、難産、運動不耐性、熱不耐性、免疫能の低下
・その他の疾患・・・関節・整形外科の退行性変化、心臓血管系障害、転移性細胞癌、尿石症
・肥満対策として飼い主さんができること
・適切なエネルギー量(食事量)を与える・・・動物病院で適切なカロリー数を計算してもらいましょう。
・加齢に伴う病気に合わせた食事を与える・・・定期的な健康診断を受けましょう。
・高たんぱく質、高食物繊維、低脂肪食を与える・・・適切な食事を与えましょう。ただし、犬の状態によって必要な栄養素は異なりますので、動物病院と相談した上で決めてください。
・血糖値の上昇を抑える・・・食事は低炭水化物を意識してあげましょう。
・脂肪を燃焼させる・・・状況によっては、脂肪燃焼に有効なL-カルニチンを含んだサプリメントを与えるのも効果的でしょう。
■若いうちにワクチンや予防接種をしよう
筆者が考える特に注意したい病気を、下記でご紹介します。
・ウイルス疾患や細菌感染・・・愛犬の体を守る抗体を作るために、多種混合ワクチンは必ず打たせましょう。また、狂犬病ワクチンを打たせることは、国が定めた飼い主さんの義務です。
・フィラリア予防薬・・・蚊による寄生虫疾患。注射や飲み薬で予防します。
・マダニ予防・・・赤血球を破壊し死に至るバベシア症や、重症熱性血小板減少症(SFTS)はマダニが媒介する病気です。マダニが咬着しているのを確認したら、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。
シニア期は、大体犬種の寿命の半分と言われているため、大体7~8歳くらいに相当します。見た目が小さいと若く見えたりしますので、シニア期に入ったことに気づき辛いこともありますが、注意を払い、定期的な健康診断、そして食事、環境を見直してあげてくださいね。
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【参考】
※ 一般社団法人ペットフード協会「平成30年 全国犬猫 飼育実態調査」
【画像】
※ Holly Michele,Numstocker,studio37th / Shutterstock
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